【温故知新シリーズ2】高タンパク質食は食欲コントロールに有効、ただし食事の回数を増やしても特段の効果なし

2021年10月15日

はじめに

過体重や肥満は世界の共通課題です。
肥満者や過体重者の体重減少を図るために様々な研究が行われています。
当サイトでもこれまでいくつか論文を紹介してきました。


今回は温故知新シリーズの2回目として、PFCバランスと食事の回数に着目します。
温故知新シリーズについてはこちらの記事もお読みください。

今回紹介する論文は、過体重者・肥満者を対象として1日のタンパク質摂取量の違いと食事の回数が空腹感・満腹感、血糖値・インスリン濃度、食欲に関係するホルモン(グレリン濃度・総PYY濃度)に及ぼす影響を検証しています。
この論文の発刊年は2010年であり、今日に至るまで70の論文に引用されている上、Web上での論文の影響度を示すAlmetric Attention Scoreは196と、ブログやニュース記事などで活用されています。

論文概要

出典

Leidy, H. J., Armstrong, C. L., Tang, M., Mattes, R. D., & Campbell, W. W. (2010). The influence of higher protein intake and greater eating frequency on appetite control in overweight and obese men. Obesity (Silver Spring, Md.), 18(9), 1725–1732. https://doi.org/10.1038/oby.2010.45

方法
21名がインフォームドコンセントにサイン
16名が実験を開始
13名が全実験を完遂(データ分析対象者)

実験参加の選定基準は下記のとおり
・男性
・21歳以上
・BMI25.0-34.9kg/m2
・体脂肪率25%超え
・過去6カ月間の体重変動が4.5kg以下
・非喫煙者
・非糖尿病患者
・血液プロフィールの異常なし
・過去3カ月間の生活リズムが安定している
・過去3カ月間の食事回数が3回/日

対象者は4条件のトライアルをランダムに別日に実施

条件は下記のとおり(数値は平均値)
各トライアルは11時間で構成
総エネルギー摂取量は対象者のエネルギー需要量(安静時代謝量×1.0)をもとに決定

①通常タンパク質食・3食
→1食(1日)の食事内容:エネルギー710kcal(2130kcal)、タンパク質26g(79g)、糖質109g(331g)、脂質21g(63g)

②通常タンパク質食・6食
→1食(1日)の食事内容:エネルギー352kcal(2110kcal)、タンパク質13g(78g)、糖質55g(327g)、脂質10g(62g)

③高タンパク質食・3食
→1食(1日)の食事内容:エネルギー728kcal(2180kcal)、タンパク質46g(139g)、糖質91g(272g)、脂質121(64g)

④高タンパク質食・6食
→1食(1日)の食事内容:エネルギー360kcal(2160kcal)、タンパク質23g(137g)、糖質45g(270g)、脂質11g(63g)

3食の場合、4時間ごとに280mlの水分とともに摂取
6食の場合、2時間ごとに140mlの水分とともに摂取
通常タンパク質食のPFC比は14:26:60
高タンパク質食のPFC比は25:26:49

各トライアル中は空腹感・満腹感(アンケート調査)、血糖値・インスリン濃度・グレリン濃度、総PYY濃度(血液検査)を経時的に実施

結果
・空腹感
→総曲線下面積はタンパク質含有量・食事回数による主効果なし

・満腹感
→総曲線下面積はタンパク質含有量による主効果あり(高タンパク質食で高い)
→総曲線下面積は食事回数による主効果あり(3食で高い)

・血糖値
→総曲線下面積は食事回数による主効果あり(6食で低い)

・インスリン濃度
→総曲線下面積は食事回数による主効果あり(6食で低い)

・グレリン濃度
→総曲線下面積はタンパク質含有量による主効果あり(高タンパク質食で高い)

・総PYY濃度
→総曲線下面積はタンパク質含有量による主効果あり(高タンパク質食で高い)
→総曲線下面積は食事回数による主効果あり(3食で高い)

解説

この論文は、過体重あるいは肥満の男性を対象としてタンパク質含有量および食事回数が食欲や血糖値、ホルモン応答に及ぼす影響を検証した結果、高タンパク質食は満腹感を高めることを明らかにしました。
また、1回の食事量を抑えて回数を増やすパターン(1日6食)よりも、1回に多くの量を摂取するパターン(1日3食)で満腹感が高まりました
これらの満腹感に関する結果は食欲抑制の働きのある総PYY濃度の応答とリンクしていました。

実際、他の研究によってもタンパク質のエネルギー比率が高い食事を摂ると、食後の総PYY濃度が高まることが示されています。
したがって、高タンパク質食は満腹感を高め、食欲のコントロールに効果的だと考えられます。

一方、食事の回数については高頻度の有効性は認められませんでした。
この結果は、「ダイエット中は食事回数を増やした方が良い」という一般的な説を否定しています。
個人の相性にもよりますが、温故知新シリーズ1で紹介した「摂取カロリーが同じであれば、食事の回数は減量効果に影響しない」も踏まえると、食事回数を増やすことよりも、1回の食事量を増やしたアプローチの方が効果的な可能性が高そうです。

ただし、血糖値、インスリン濃度については6回の食事において総曲線下面積が低値を示しました。
高血糖や高インスリン血症は様々な疾患のリスク因子であることを踏まえると、糖尿病やメタボリックシンドロームといった代謝性疾患を有する人は、食事回数を増やした方が良いのかもしれません。

まとめ

ダイエッターは十分なタンパク質が含まれた食事で満腹感を高めることが出来る