減量と筋量アップを同時実現する栄養戦略

2022年1月19日

はじめに

ボディビルダーやフィジーカーはコンテストに向けて体を作りあげる際、
・増量期(多少の脂肪がついても筋量アップを狙い体重を増やす期間)
・減量期(多少の筋肉が減少しても脂肪を減らすことによって体重を落とす期間)
の二つの期間に分けてボディメークすることが普通です。
この理由は、
筋肉量を増やすにはエネルギーバランスをプラス(摂取カロリー>消費カロリー)にする必要がある一方で、
体脂肪を減らすにはエネルギーバランスをマイナス(摂取カロリー<消費カロリー)にする必要があり、
筋肉量の増加と体脂肪の減少を同時に実現することが困難だと考えられているからです。
増量期と減量期を明確に分ける方法は、
ボディメークのプロであるボディビルダーらが取り入れていることから有用性があるに違いありませんが、フィットネス愛好家としては、できる限り楽をしながらボディメークしたいところです。
そこで今回は、筋肉量の増加と体脂肪の減少を同時に実現するためのヒントを提供している論文をみていきます。

論文概要

出典

Garthe, I., Raastad, T., Refsnes, P. E., Koivisto, A., & Sundgot-Borgen, J. (2011). Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes. International journal of sport nutrition and exercise metabolism, 21(2), 97–104. https://doi.org/10.1123/ijsnem.21.2.97

方法
24名のアスリートを下記の2つのグループに分けた
・急速な減量群(Fast reduction: FR群):週当たりの体重減少率:1.4%
・緩やかな減量群(Slow reduction:SR群):週当たりの体重減少率:0.7%
目標の体重減少量は、身体組成などを考慮し、専門家との相談をもとに個別に決められたが、全てのアスリートは少なくとも体重の4%を減らすように計画された
※体重70kgのアスリートが5kgの減量をする場合、FR群では5週間、SR群では10週間の減量期間となる
実験はオフシーズンに行われ、両群ともに専門的なトレーニングに加えて、筋力増加と筋肥大を目的としたウエイトトレーニングを週4回の頻度で実施した
食事は、目標とした体重減少率を達成するようにエネルギー摂取量が個別に決められた
結果
減量期間はFR群で5.3週、SR群で8.5週となった
エネルギー摂取量は減量前に比べるとFR群で30%(-791kcal/日)、SR群で19%(-469kcal/日)が減少した
体重減少率は同程度(SR群:5.6%、FR群:5.5%)であった
脂肪量はSR群でより低下した(SR群:31%、FR群:21%)
除脂肪体重(≒筋肉量)はSR群のみ増加した(SR群:2.1%、FR群:-0.2%)

解説

この論文では、緩やかな減量をしたグループで体脂肪減少と筋肉量増加が起きました
一方、急速に減量をした群は、体脂肪こそ減少したものの、除脂肪体重はほとんど変化がありませんでした。
つまり、ゆっくりと徐々に体重を減らした方が望ましい変化が起きたことになります。
過体重や肥満者ではなく、体脂肪率がある程度低い人では体脂肪減少と筋肉量増加を同時に実現することは難しいと言われています。
しかし、この論文はアスリートを対象としていたことから、体脂肪が過度に蓄積された状態から減量を開始していません。
したがって、適度な負のエネルギーバランス(この論文の結果をもとにすると、「約-500kcal/日未満」)と筋肉への十分な刺激(ウエイトトレーニング)を組み合わせることで、体脂肪減少と筋肉量増加を同時に達成できる可能性があります。

まとめ

体脂肪減少と筋肉量増加を同時達成したい場合、毎日のエネルギーバランスをマイナスにしすぎないことが重要