学業と競技成績の両立には8時間以上の睡眠時間

2021年10月16日

はじめに

学生アスリートは、競技スポーツと学業の両側面で高いパフォーマンスを発揮することが求められます
特に学生アスリートは、プロスポーツに比べてサポート環境が十分でないことも多いため、競技と学業の両立には、自身での体調管理が大事です。

アスリートが日々のトレーニングやトレーニング以外のストレスから適切に回復するには、良質な睡眠が鍵となります。
当サイトでも以前、市民ランナーを対象として、過去6か月のランニング障害と睡眠の質との間に関連があった論文を紹介しました。

また、アスリートではなく一般人を対象とした調査において、適度な睡眠時間の人は、主観的ストレスが低いことも報告されています。

今回は大学生アスリートを対象として、睡眠と主観的体調、傷害、病気との関連を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Hamlin MJ, Deuchrass RW, Olsen PD, Choukri MA, Marshall HC, Lizamore CA, Leong C and Elliot CA (2021) The Effect of Sleep Quality and Quantity on Athlete’s Health and Perceived Training Quality. Front. Sports Act. Living 3:705650. doi: 10.3389/fspor.2021.705650

方法
82名の大学生アスリートを対象(地域代表あるいはナショナルレベル)
対象者は個別トレーニングに加え、栄養、心理学的、医学的なアドバイスを受けられる大学のスポーツ奨学金プログラムに参加していた

対象者はアプリを用いて、トレーニングデータと主観的体調(気分、睡眠の質、睡眠時間、学業ストレス、トレーニングパフォーマンス等)、怪我と病気の状況を日々記録
※最低でも週3回記録するよう要求された

対象シーズンは新型コロナウイルスのパンデミックによる政府の政策の影響を受けた

結果
・82人のアスリートから合計10452日分のデータを収集(1人当たりのデータ数:127日/270日)

・平均の睡眠時間は男女ともに8.2時間
・平均の睡眠の質は男女ともに3.6(1:Poor、2:Below Average、3:Normal、4:Good、5:Very good)

・授業開始前の期間は全員が8時間以上の睡眠時間を報告したが、大学が始まった直後は8時間以上寝ていると報告した人は62%に減少、対象期間全体でみると、81%のデータが8時間以上の睡眠を報告

・回帰分析の結果、睡眠時間が8時間以上では気分、睡眠の質、エネルギーレベル、トレーニングの質、学業ストレスが良好

・睡眠時間が8時間以上、あるいは睡眠の質が高いアスリートは、怪我や病気に苦しむ割合が低かった

解説

いくつかの疫学研究によって死亡率が最も低くなる睡眠時間は、7時間ということが示されています。
このエビデンスをもとに、アスリートではない一般人を対象とした場合、7時間を健康的な睡眠時間の基準とすることがあります。

一方、アスリートにおいては、いくつかのエビデンスをもとに、推奨睡眠時間は8時間とされることが多いです。
(引用:Roberts, S., Teo, W. P., Aisbett, B., & Warmington, S. A. (2019). Extended Sleep Maintains Endurance Performance Better than Normal or Restricted Sleep. Medicine and science in sports and exercise, 51(12), 2516–2523. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002071

この論文でも8時間という睡眠時間を基準とした上で、主観的体調や怪我、病気との関連を検証しています。
その結果、睡眠時間が8時間未満の日に比べると8時間以上では、主観的体調が好ましい傾向があった上、怪我や病気のリスクを減少させたことを報告しています。
したがって、アスリートにおいても、睡眠時間の確保が重要と言えます。

先行研究によって、睡眠障害を持つ学生は、学業成績上のリスクが高まることも指摘されています。
特に学生アスリートの場合、学業成績の不振は競技スポーツへ集中できない状態を招くことは想像に容易いため、睡眠時間の確保は重要です。

睡眠時間の欠如と怪我、病気との関連については様々な可能性が考えられますが、論文の著者らは睡眠不足による反応時間の遅延、認知機能の変化、筋緊張の亢進、免疫力の低下が関係していた可能性を考察していました。

まとめ

大学生アスリートは一晩あたり、8時間以上の睡眠を確保すべき