全身法と分割法の筋トレ効果の違い

はじめに

レジスタンストレーニング(筋トレ)の効果は、様々な変数(負荷、反復回数、種目、筋収縮時間、セット間の休息時間、セット数、頻度など)による影響を受けます。
当サイトでもこれまでに、筋トレの効果を左右する変数について紹介してきました。

今回は頻度に着目します。
一般に頻度は、週当たりのトレーニング回数と定義されます。
ただし、筋トレの場合、特定の筋群における週当たりのトレーニング回数とする場合もあります

筋トレのプログラムは全身法と分割法に大別できます。
その名の通り全身法は1回のセッションで全身を鍛える方法です。
一方、分割法は身体をいくつかの部位に分け、1回のセッションでは特定の部位に特化し鍛える方法です。

以前、筋トレ経験を有する男性トレーニーを対象として、全身法と分割法(上肢・下肢の二分割)が最大筋力に及ぼす影響を検証した論文を紹介しました。


その論文では、総負荷量が均等であれば、最大筋力は同じぐらい発達するという結果でした。

ボディビルダーやフィジーカーでは、二分割より細かく分割した分割法を採用している者が数多くいます。
今回は、筋トレ経験を有する男性トレーニーを対象として、全身法と4分割された分割法が筋肥大と最大筋力に及ぼす影響を比較検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Bartolomei, S., Nigro, F., Malagoli Lanzoni, I., Masina, F., Di Michele, R., & Hoffman, J. R. (2021). A Comparison Between Total Body and Split Routine Resistance Training Programs in Trained Men. Journal of strength and conditioning research, 35(6), 1520–1526. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003573

方法
レジスタンストレーニング経験3年以上の男性トレーニー21名を対象
対象者はランダムに下記の2群に割り当て
全身法(10名)
分割法(11名)

トレーニング内容の詳細は下記のとおり
期間:10週間
頻度:4回/週
回数:5回(Not training to failure)
セット数:5セット
セット間の休息時間:2分

全身法は週4日(月・火・木・金)全身のトレーニングを実施
分割法は月曜日に胸・上腕三頭筋、火曜日に脚、木曜日に背中・上腕二頭筋、金曜日に肩の4分割法
両群のトレーニング種目は同一

トレーニング期間の前後に下記測定を実施
【筋力に関する指標】
・等速性ベンチプレス最大筋力(25cm/s、75cm/s)
・等尺性ベンチプレス最大筋力
・等尺性ハーフスクワット最大筋力
・パラレルスクワットの最大挙上重量(1RM)
・ベンチプレスの最大挙上重量(1RM)

【筋肥大に関する指標】(超音波画像法)
・外側広筋の筋厚
・外側広筋のぺネーション角度(筋線維の方向と力がかかる方向のなす角度)
・胸筋の筋厚
・僧帽筋の筋厚

結果
【トレーニング状況】
・10週間を通した総トレーニング量に群間差なし

【筋力に関する指標】
・等速性ベンチプレス最大筋力(25cm/s)
→増加の程度に群間差あり(全身法:11.5%、分割法:2.3%)

・等速性ベンチプレス最大筋力(75cm/s)
・等尺性ベンチプレス最大筋力
・等尺性ハーフスクワット最大筋力
・パラレルスクワットの最大挙上重量(1RM)
・ベンチプレスの最大挙上重量(1RM)
→増加の程度に群間差なし

【筋肥大に関する指標】
・外側広筋の筋厚
→増加の程度に群間差あり(全身法:2.9%、分割法:10.0%)

解説

この論文は、男性トレーニーを対象として、種目、セット数、反復回数を統一した上で全身法と分割法(4分割)のトレーニング効果の違いを検証しています。
分割法は各部位のトレーニング頻度は週1回でしたが、各セッションで各部位に多量の負荷をかけていました。
一方、全身法では各部位に対して週4回負荷をかけていましたが、セッション当たりの各部位への負荷は少なくなっています。

その結果、最大筋力は、一つを除き全ての指標で向上率に群間差がありませんでした。
唯一差が認められたのは、遅い速度(25cm/s)での等速性ベンチプレスであり、全身法で顕著に増加していました。
この理由について論文の著者らは、全身法では特定の筋群への神経刺激の頻度が高くなることを挙げています。
また、高い速度(75cm/s)で差がなかった理由については、高スピードでのパワートレーニングや爆発的な動きを伴う種目を実施しなかったことが影響したと考察しています。

筋肥大に関する指標は、外側広筋の筋厚で群間差があり、分割法で顕著な増加が起こりました
したがって、大腿前面の筋肥大を引き起こすには、1回に多量の脚トレを実施すると効果的な可能性があります。
この理由は、分割法では1回のトレーニングにおいて、特定の筋群に集中的に負荷をかけるため、その筋群に対する代謝ストレスが高まったことが影響した可能性があります。

まとめると、最大筋力向上を目的とする場合は全身法、筋肥大を目的とする場合は分割法を選ぶとトレーニング効果を高められると解釈できます。
ただし、分割法を用いたからといって最大筋力が向上しないわけでもなく、全身法を用いたからといって筋肥大が起きないわけでもありません。
そもそも最大筋力については多くの指標で、筋肥大については上半身の指標で群間差が認められていません。

まとめ

全身法は最大筋力向上、分割法は筋肥大の効果を高めるかもしれない