運動の種類によって死亡率への影響は異なる

2021年4月14日

はじめに

定期的な運動やスポーツ活動の実践が健康に有益なことは知られていますが、運動やスポーツには様々な種類があります。

今回紹介する論文は、イングランドとスコットランドで行われた大規模コホート研究のデータをもとに、運動・スポーツの種目ごとに全死亡率・心血管疾患死亡率との関係を検証しています。

論文概要

出典
Oja P, Kelly P, Pedisic Z, Titze S, Bauman A, Foster C, Hamer M, Hillsdon M, Stamatakis E. Associations of specific types of sports and exercise with all-cause and cardiovascular-disease mortality: a cohort study of 80 306 British adults. Br J Sports Med. 2017 May;51(10):812-817. doi: 10.1136/bjsports-2016-096822. Epub 2016 Nov 28. PMID: 27895075.

方法
イングランド・スコットランドの全国的調査の研究データを利用
イングランドは1994年から2011年、スコットランドは1995年から2009年のデータを利用

運動・スポーツは、インタビュー前4週間の実施状況を把握

ベースラインの運動・スポーツ活動の状況と全死亡率・心血管疾患死亡率との関係を交絡因子(年齢、性別、病歴、飲酒摂取の頻度、精神状態、BMI、喫煙歴、教育レベルなど)を踏まえた上で検証

結果
【基本的な情報】
・分析対象者は80306人(平均年齢:51.9歳、男性36601人、女性43705人)
・頻繁に行われていた運動・スポーツは水泳、自転車、エアロビクス、ランニング、ラケットスポーツ、フットボール(サッカー・ラグビー)であった
・平均追跡年数は9.2年
・8790人が追跡期間中に死亡
・ベースライン時点で75014人が心血管疾患を有しておらず、そのうち1909人が心血管疾患によって死亡

【全死亡率】
交絡因子調整後のハザード比(95%信頼区間)は下記のとおり
※運動・スポーツを実施していない人を1.0とした場合

サイクリング :0.85(0.76-0.95)
スイミング:0.72(0.65-0.80)
ラケットスポーツ:0.53(0.40-0.69)
エアロビクス:0.73(0.63-0.85)
ここまでいずれも有意
ランニング:0.87(0.68-1.11)
フットボール:0.82(0.61-1.11)

【心血管疾患死亡率】
交絡因子調整後のハザード比(95%信頼区間)は下記のとおり
※運動・スポーツを実施していない人を1.0とした場合

スイミング:059(0.46-0.75)
ラケットスポーツ:0.44(0.24-0.83)
エアロビクス:0.64(0.45-0.92)
ここまでいずれも有意
サイクリング :0.93(0.76-1.16)
ランニング:0.81(0.47-1.39)
フットボール:0.90(0.49-1.54)

解説

種目ごとの運動・スポーツの実施状況と死亡率との関係を検証した研究としては最大規模のデータを分析した論文です。

ハザード比とは、相対的な危険度を比較する手法です。
ハザード比を用いた論文解説記事はこちら


今回の論文の場合、運動・スポーツを実施していない人のハザード比を1とし、それぞれの運動・スポーツを実施していた人のハザード比が1.0より小さい場合、全死亡率あるいは心血管疾患死亡率のリスクが低いという解釈になります。
また、ハザード比はサンプル誤差を考慮して95%信頼区間ともに表し、1.0をまたぐ場合、は有意差なしという解釈になります。
スイミング・ラケットスポーツ・エアロビクス(+全死亡率はサイクリング)は死亡率・心血管疾患死亡率を減らしましたが、ランニング・フットボール(サッカー・ラグビー)は有意差がありませんでした
つまり、この結果だけみると、ランニング、サッカー、ラグビーの実施は死亡率を下げるのに貢献しなかったということです。

特にランニングについては、以前に出された他の大規模調査の結果と異なっており、一般的なイメージとも異なります。
論文の著者らは追跡期間や運動・スポーツの実施状況の把握方法(過去4週間の実施状況をもとに判断)が結果に影響した可能性を指摘していますが、同じ有酸素性運動でもスイミングやエアロビクスには効果が認められていることを踏まえると、運動・スポーツの種類は少なからず死亡率(寿命)に影響すると考えられます。

まとめ

運動・スポーツの種類は全死亡率・心血管疾患死亡率に影響する