異なる種類の片側性バーベルスクワットの下肢筋活動
はじめに
当サイトでたびたび取り上げているレジスタンストレーニング種目の筋活動について、今回は下肢の片側性エクササイズの代表的な種目であるバーベルスクワットを取り上げます。
片側性バーベルスクワットは、両側性バーベルスクワットに比べると脊柱への負荷を大幅に減らしつつ、下肢の筋肉に高い刺激を与えられます。
また、日常生活やスポーツ活動の多くの動作は片側性のため、トレーニング効果の転移も起きやすいと言われています。
今回はスプリットスクワット、シングルレッグスクワット、リアフットエレベーテッドスクワット(ブルガリアンスクワット)を6-8RMの負荷で実施したときの下肢の筋肉の筋活動を比較した論文を紹介します。
論文概要
出典
Mausehund, L., Skard, A. E., & Krosshaug, T. (2019). Muscle Activation in Unilateral Barbell Exercises: Implications for Strength Training and Rehabilitation. Journal of strength and conditioning research, 33 Suppl 1, S85–S94. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000002617
方法
分析対象者は11名(男性5名、女性6名)のレジスタンストレーニングの経験を有する大学生下記の3種目を対象
・スプリットスクワット(SS):前足と片脚を前後に開いた状態でのスクワット、縦の足幅は上前腸骨棘から内踝の長さの100%、横の足幅は腰幅の75%・シングルレッグスクワット(SLS):脛骨長の高さのボックスを利用、両脚をボックスに置いた状態から後脚が床につくまで下降するスクワット
・リアフットエレベーテッドスクワット(RFESS):足の縦幅・横幅はSSと同様、後脚のつま先をSLSで用いたボックスに載せて実施、後脚の膝が床の上に置かれたバランスパッドに触れるまで下降するスクワット
3種目とも事前に計測された6RMの挙上重量を用いて実施
利き足を前脚にし、前脚の大殿筋、中殿筋、大腿二頭筋、外側広筋の筋活動レベルを表面筋電図によって評価
いずれも最大随意時等尺性収縮時の筋活動レベルをもとに正規化(%MVIC)結果
※数値は平均値
各種目の6RM:SSで70.9kg、SLSで48.2kg、RFESSで57.3kg大殿筋の筋活動:種目差なし
外側広筋の筋活動:種目差なし中殿筋の筋活動:SLS(81.9%MVIC)がRFESS(54.9%MVIC)・SS(46.2%MVIC)より高い
大腿二頭筋の筋活動:RFESS(76.1%MVIC)がSS(62.3%MVIC)より高い
筋活動レベルは全種目共通して外側広筋が最も高く、次いで大殿筋、大腿二頭筋であった
ハムストリングス・大腿四頭筋の活動比(HQ比、この研究では大腿二頭筋と外側広筋の筋活動レベルによって評価)はRFESS(0.83)がSS(0.69)・SLS(0.63)より高い
※ここまでは全反復回数のピーク値の平均データをもとに算出
・1レップと最終レップでの筋活動レベルの変化を比較すると、3種目の平均値でハムストリングスが23.8%MVICの増加、大殿筋が16.3%MVICの増加、外側広筋が9.6%MVICの増加、中殿筋が8.3%MVICの増加
解説
この論文は、三種類の片側性バーベルスクワットを6RMの負荷で実施したときの下肢の筋活動レベルを検証しています。
なお、各エクササイズを適切なフォームで出来なくなるまで実施させたところ、実際の反復回数は6-8回の範囲でした。
その結果、外側広筋と大殿筋の筋活動レベルは種目間での差がありませんでした。
一方、中殿筋と大腿二頭筋には種目差があり、中殿筋の筋活動はSLSで高く、大腿二頭筋はRFESSで高くなりました。
論文の著者らは中殿筋の筋活動がSLSで高かった理由について、中殿筋が片脚支持のときに股関節や骨盤の安定に寄与する筋肉であることを踏まえ、SLSのみ後脚がボックスや床に着いていない片脚支持の局面があったことが原因だと考察しています。
また、RFESSで大腿二頭筋(ハムストリングス)の筋活動が高かった理由については、ハムストリングスが体幹の前傾角度が大きくなると筋活動が高くなる特徴があることを踏まえ、RFESSが他の2種目に比べ体幹の前傾角度が大きくなりやすい種目であることを挙げていました。
ただし、この論文では各種目の実施時の関節角度を計測していません。
この論文ではレップ数の変化の影響も検証しています。
その結果、大腿四頭筋は最初から極めて高い筋活動レベルを記録していたのに対し、ハムストリングスや大殿筋は反復回数が増すにつれて筋活動レベルが増加しました。
論文の著者らはこの理由について、大腿四頭筋は始めから最大レベルの活動をしているため後半になっても活動レベルを高めることが出来ないため、後半では体幹の前傾を伴いながら股関節伸展筋群(ハムストリングスや大殿筋)の貢献度を高めて動作を遂行していた可能性を指摘しています。
まとめ
片側性バーベルスクワットは種目や反復回数によって下肢の筋活動が変化する