持久系アスリートの食生活と睡眠の質

はじめに

どんな人であっても、食生活と睡眠の質は関係します。
優れた食習慣は優れた睡眠の質の確保に貢献する一方で、不適切な食生活は睡眠を妨げます。

以前、男性球技アスリートを対象として、食生活と睡眠との関連を検証した論文を紹介しました。
その論文によると、アスリートが良質な睡眠を確保するには、1日を通した栄養摂取状況のみならず、18時以降の食事が鍵となりそうです。

今回紹介する論文は、持久系アスリートを対象として、フルーツ、野菜、乳製品、全粒穀物、およびカフェインの摂取量と主観的に評価された睡眠の質との関連を検証しています。

論文概要

出典

Moss, K., Zhang, Y., Kreutzer, A., Graybeal, A. J., Porter, R. R., Braun-Trocchio, R., & Shah, M. (2022). The Relationship Between Dietary Intake and Sleep Quality in Endurance Athletes. Frontiers in sports and active living, 4, 810402. https://doi.org/10.3389/fspor.2022.810402

方法
ソーシャルメディアを通して集められた持久系アスリート234名を対象
(多くは北米から)

下記項目に関する最近1か月の状況をアンケート調査
■人口統計情報
年齢、性別、人種・民族、教育歴、家庭収入、身長、体重、BMI

■スポーツの種類と競技レベル

■睡眠行動
Athlete Sleep Behavior Questionnaireを利用
日中の長時間の昼寝、夕方のトレーニング、夜中にトイレで起こる心配事、電子機器の利用、就寝前の飲酒、寝室の室温、ベッドや枕の快適さ等に関するアンケート
スコアが高いほど睡眠行動が悪いことを示す

■不快感による寝苦しさ
「筋肉の痛み、しびれ、痛み、ひきつけで眠れなかったことがあるのか」

■睡眠の質
Athlete Sleep Screening Questionnaire(ASSQ)を利用
スコアが高いほど睡眠の質が悪いことを示す
全体的な睡眠の質(Global Score)に加え、睡眠困難(SD)、クロノタイプ(C)、睡眠呼吸障害(SDB)のサブスケールあり

■食事摂取量
フルーツ、(生、冷凍、缶詰、乾燥)、野菜(生、調理、缶詰、冷凍、ただし白イモを除く)、乳製品(全脂、2,1,2/1%、無脂肪)、全粒粉(パン、トルティーヤ、オートミール、シリアル、米、パスタ、ポップコーン)、カフェイン飲料(コーヒー、ティー、ソーダ、エナジードリンク)に関する最近1か月の摂取状況を評価
各食品群のサービングサイズは「アメリカ人のための食事ガイドライン」をもとに定義

結果
年齢、性別、人種・民族、BMI、睡眠行動、不快感による寝苦しさの影響を調整した一般線形モデルの結果は下記のとおり

・全体的な睡眠の質とカフェイン飲料の摂取量に有意な関連
→カフェイン飲料の摂取量が多いほど全体的な睡眠の質が悪化する傾向

・睡眠呼吸障害(SDB)とカフェイン飲料の摂取量に有意な関連
→カフェイン飲料の摂取量が多いほど睡眠中の呼吸困難リスクが増加する傾向

・クロノタイプと全粒粉の摂取量とに有意な関連
→全粒粉の摂取量が多いほど朝型のクロノタイプとなる傾向

解説

この論文は、持久系アスリートが睡眠の質を確保するには、カフェイン飲料の飲み過ぎに注意すべきことを示しています。
また、全粒粉の摂取量は睡眠の質を高める可能性があることも示しています。
(他の研究によると、夕方のクロノタイプの人は睡眠の質悪化のリスクを高めるとされています)

論文によると、カフェイン飲料の摂取量が1.5杯(カフェイン:約150mg)以上の持久系アスリートの睡眠の質が悪かったようです。
農林水産省によると、製品によってカフェイン濃度や内容量は異なるものの、エナジードリンク1本当たり、36-150mgのカフェイン飲料が含まれているとあります。
また、同情報によると、コーヒー100ml中のカフェインは60mgとあります。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
その他、煎茶、ほうじ茶、烏龍茶などにもカフェインは含まれていることから、トレーニング前や競技前にカフェイン飲料を活用する持久系アスリートはカフェイン飲料の飲み過ぎに気を配る必要がありそうです。

確かにカフェインは持久系パフォーマンスを高める効果がありますが、頼りすぎることで睡眠の質が妨げられ、リカバリーを損なう可能性もあります。
不十分なリカバリー状態で厳しいトレーニングを行うために、さらにカフェインを頼るといった悪循環に陥っているアスリートも見受けられます。
したがって、メリットとデメリットを理解した上で、カフェインによる恩恵を最大限受けられる適切な使い方をしたいところです。

まとめ

持久系アスリートはカフェインを摂り過ぎると睡眠の質が損なわれる