睡眠時間を延ばすことで摂取エネルギーが減り、体重は減る

はじめに

以前、減量中の摂取カロリーが同じでも睡眠時間が短いと体脂肪が落ちにくく、除脂肪(≒筋肉)が落ちやすいことを示した論文を紹介しました。

また、睡眠時間の短縮(短眠)は、肥満リスクになることや、睡眠不足を実感している人は摂取エネルギーや食事量が多いことも明らかになっています。

今回紹介する論文は、過体重者を対象として、睡眠時間を延ばすアドバイスを受けると摂取エネルギーや体重がどう変わるのか検証しています。

論文概要

出典

Tasali, E., Wroblewski, K., Kahn, E., Kilkus, J., & Schoeller, D. A. (2022). Effect of Sleep Extension on Objectively Assessed Energy Intake Among Adults With Overweight in Real-life Settings: A Randomized Clinical Trial. JAMA internal medicine, 182(4), 365–374. https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2021.8098

方法
単施設無作為化並行群間比較試験
対象:年齢が21-40歳、BMIが25-29.9、普段の睡眠時間が6.5時間未満
除外基準:睡眠閉塞性睡眠時無呼吸、睡眠障害、夜間やシフト制の仕事をしている者

81名を2群(睡眠延長群:40名、コントロール群:41名)に割り当て
最終的なデータ分析対象者は両群40名ずつの合計80名(男性:41名、女性39名)

実権期間は4週間
前半2週間はベースライン期間とし、両群ともに普段通りの睡眠をとるように指示を受けた
15日目に睡眠延長群は睡眠時間を8.5時間に延長することを目的とした個別化された睡眠衛生カウンセリングを受けた
コントロール群は後半2週間も普段通りの睡眠を続けた
両群ともに、普段通りの日常生活を続けるように指示を受けた

主な評価指標はエネルギー摂取量の変化とし、総エネルギー消費量(二重エネルギーX線吸光光度法から推定)と自宅で計測された体組成計の変化をもとに算出
睡眠データは加速度計をアクチウォッチで計測

結果
■睡眠時間
コントロール群と比較して睡眠延長群は1.2時間増加

■エネルギー摂取量
コントロール群と比較して睡眠延長群は270.4kcal/日減少
(睡眠延長群は155.5kcal/日減少したのに対し、コントロール群は114.9kcal/日増加)

■体重の変化
コントロール群と比較して睡眠延長群は0.87kg減少
(睡眠延長群は0.48kg減少したのに対し、コントロール群は0.39kg増加)

■相関関係
両群の対象者を対象として、睡眠時間の変化とエネルギー摂取量の変化に有意な負の相関関係(r = -0.41)
計算上、睡眠時間が1時間増えると、エネルギー摂取量が162kcal/日減る

解説

この論文は、過体重者を対象として、普段の生活環境において、睡眠時間を延長することで摂取カロリーの抑制に結び付き、体重減少に寄与したことを示しています。

介入期間が2週間ということもあり、体重減少量はさほど大きなものではありませんが、カロリー制限や身体活動量増加の介入なしに有意な変化が得られた結果は注目に値します。

カロリー制限や身体活動量増加といったエネルギー出納に直接関わる生活習慣に比べると、ダイエッターは睡眠を改善することに関心が薄くなりがちです。
しかし、睡眠不足はインスリン感受性が低下したり、食事に対する脳の反応が変化したりすることも分かっています。
したがって、カロリーを制限したくてもついつい食べてしまう人はまず自分の睡眠時間が十分なのか、確かめてみることも大切です。

なお、様々な研究成果を眺める限り、睡眠時間は長ければ長いほど良いということはなく、一般人の場合には7時間確保が一つの目安となりそうです。

まとめ

睡眠時間が7時間未満のダイエッターはカロリー制限より睡眠時間の延長にまず取り組むべきかもしれない