徐々に時間を減らしながら実施する高強度インターバルトレーニングは高い酸素摂取量での運動時間を確保できる

はじめに

持久系トレーニングの種類の一つに、高強度インターバルトレーニング(High Intensity Interval Training)があります。
高強度インターバルトレーニングの目的や効果は多岐にわたりますが、酸素摂取量が高い状態でのトレーニング時間を長く確保することが、最大酸素摂取量(VO2max)を向上する有効な刺激になると考えられています。

どの程度の酸素摂取量に達すれば、高強度のトレーニング刺激として十分なのかは統一的な見解はないもの、研究の中には90%VO2max以上をレッドゾーンと定義し、レッドゾーンでの運動時間が高いトレーニング方法を探っているものがあります。

今回紹介する論文では、1) ロングインターバル(Long HIIT)、2) ショートインターバル(Short HIIT)、3) ロングからショートへと時間を漸減させるインターバル(HI Decreasing Interval Training: HIDIT)を行った際の生理応答などを比較しています。

論文概要

出典

Vaccari, F., Giovanelli, N., & Lazzer, S. (2020). High-intensity decreasing interval training (HIDIT) increases time above 90% [Formula: see text]O2peak. European journal of applied physiology, 120(11), 2397–2405. https://doi.org/10.1007/s00421-020-04463-w

方法
12名のアマチュアサイクリストを対象
事前テストとして、漸増負荷試験とクリティカルパワー(CP)を決定するためのトライアルを3-4回実施(80-100%ピークパワーの強度)

高強度インターバルトレーニングの強度は、運動期が117%CP、休息期が83%CPで固定
(117%CPは、およそ5分で疲労困憊に至る強度)

3つのプロトコルは下記の通り、全て運動-休息期が3:2で疲労困憊に至るまで実施
・Long HIIT
(3分@急漕-2分@緩漕)の繰り返し

・Short HIIT
(30秒@急漕-20秒@緩漕)の繰り返し

・HIDIT
(3分@急漕-2分@緩漕-2分@急漕-1分20秒@緩漕-1分@急漕-40秒@緩漕-45秒@急漕-30秒@緩漕-30秒@急漕-20秒@緩漕)の繰り返し

生理応答として酸素摂取量、心拍数、血中乳酸濃度などを測定

結果
※数値は平均値
・90%VO2peak(ここでは90%VO2maxと同義)の時間
HIDIT(312秒)がShort HIIT(183秒)、Long HIIT(179秒)よりも長い

・疲労困憊までの時間
群間差なし(HIDIT:798秒、Short HIIT:714秒、Long HIIT:664秒)

・疲労困憊時の生理心理学的指標の応答
%VO2peak、%最高心拍数、血中乳酸濃度、主観的運動強度に群間差なし

解説

この論文は、高強度インターバルトレーニングの運動強度を117%CP(持続的に実施すれば約5分で疲労困憊に至る強度)、運動休息比を3:2に保った上で、運動時間を3分から30秒に徐々に減らしながら行うことで、3分もしくは30秒の運動時間を固定したまま実施した場合に比べると、レッドゾーンでの暴露時間が高くなることを明らかにしています。

先行研究によると、休息比の過ごし方(アクティブorパッシブ)、休息時間の長さなどを変えても、レッドゾーンでの暴露時間には有意差が生じない場合が多いです。
これに対して、この論文では、運動時間を徐々に減らすことで、呼吸循環系に高い負荷を掛けることに成功しました。

ただし、そもそも117%CPというのはロングインターバルの強度としては、やや高すぎです。
一般的なロングインターバルは、陸上競技長距離走で言えば5000m走のペース程度で行われることが多いです。
これに対して、約5分で疲労困憊に至る117%CPという強度は、走力にもよりますが、1500m走のような強度です。
実際、Long HIITの疲労困憊までの時間の平均値をみると、3本目の途中で終了している対象者が多いと考えられます。
したがって、Long HIITが5-6本は実施できる強度で行った場合、また違った結果になる可能生はあります。

まとめ

高強度インターバルトレーニングは、運動休息比を維持したままで、ロングからショートに変化させるやり方も良い