ベンチプレスの効果を最大化させる反復回数は?

2021年7月20日

はじめに

レジスタンストレーニングの代表的な種目であるベンチプレスは、主に大胸筋、三角筋前部、上腕三頭筋といった上半身の筋肉を鍛えることができます

ベンチプレスは、胸板や上腕を厚くするために有効な種目であることから、特に男性トレーニーに人気の高い種目です。

今回はベンチプレスのトレーニングを4RM、8RM、12RMで実施した場合、大胸筋の筋肥大とベンチプレスの最大挙上重量に差が生じるのかを検証した論文を紹介します。

なお、RMとはRepetition maximumの略語であり日本語に訳すと「最大反復回数」になります。
つまり、4RMは4回の反復が最大の重量、8RMは8回の反復が最大の重量、12RMは12回の反復が最大の重量ということになります。

今回紹介する論文は、各群のセット数を工夫することで、総負荷量(重量×反復回数×セット数)に差が生じないようにしています。
近年の研究によって、総負荷量が筋肥大に深く関係していることが指摘されていることを踏まえると、総負荷量を統一した上で検証したアプローチは価値があります。

論文概要

出典

Kubo, K., Ikebukuro, T., & Yata, H. (2021). Effects of 4, 8, and 12 Repetition Maximum Resistance Training Protocols on Muscle Volume and Strength. Journal of strength and conditioning research, 35(4), 879–885. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003575

方法
42名の健康的な若年男性(19.5-24.0歳)を身体的特徴・ベンチプレスの最大挙上重量が均等になるようにランダムに下記の4群に分類
なお、対象者は身体的に活動的であったが、少なくとも実験開始前1年間は定期的な運動習慣を有していなかった
・4RM群
・8RM群
・12RM群
・コントロール群(トレーニングなし)

トレーニング内容は下記のとおり
期間:10週間
頻度:2回/週
種目:ベンチプレス
負荷:
最初の3週間は各群ともに慣れや適切なフォーム獲得を目的として徐々に負荷を漸増
4週目以降、4RM群は7セット×90%1RM×4回、8RM群は4セット×80%1RM×8回、12RM群は3セット×70%1RM×12回で実施
もし一回のトレーニングセッションにおいて全セットで所定の反復回数を実施できた場合、次回のセッションでは2.5kg重量を漸増
セット間の休息時間:3分

トレーニング期間の前後に下記項目を測定
大胸筋の筋肉量:3T MRI を用いて右側の大胸筋の筋横断面積を測定
ベンチプレスの最大挙上重量:1RMの挙上重量を測定

結果
※数値は平均値

体重:全群ともに変化なし

トレーニング状況:
4-10週の各セットの反復回数は4RM群で3.4回、8RM群で7.1回、12RM群で10.5回
トレーニング時の重量は4RM群で18.9%増加、8RM群で23.1%増加、12RM群で18.6%増加
4-10週の総負荷量に群間差なし

大胸筋の筋肉量:
4RM群(11.1%)、8RM群(10.1%)、12RM群(11.3%)ともに増加
トレーニング実施群で比較した場合、増加率に有意差なし

ベンチプレスの最大挙上重量:
4RM群(28.4%)、8RM群(29.5%)、12RM群(18.7%)ともに増加
トレーニング実施群で比較した場合、4RM群・8RM群に比べて12RM群の増加率が低かった

筋肉量の変化率と最大挙上重量の変化率との関係:
12RM群はトレーニング前後の大胸筋の筋肉量の変化率とベンチプレスの最大挙上重量の変化率との間に有意な正の相関関係(r = 0.684)
4RM群(r = -0.265)、8RM群(r = -0.045)では有意な相関関係なし

解説

この論文は日本で行われた研究です。
はじめにでも書いたとおり、総負荷量を揃えていることに高い価値があります。
また、周径囲測定や超音波法よりも精度が高いMRIを用いて、筋肉量を測定している点にも高い価値があります。

得られた結果は、4-12RMの範囲であれば筋肥大への効果は変わらない(同じぐらい発達する)ことを示しています。

一方、最大挙上重量については、4RM・8RMに比べて12RMで増加率が少ない結果でした。
したがって、最大筋力を高めたい場合、反復回数よりも重量を意識したトレーニングが効果的と解釈できます。

興味深い結果としては、反復回数を意識したトレーニング(12RM群)にのみ、トレーニング前後の筋肉量の変化率と最大挙上重量の変化率との間に有意な正の相関関係があったことです。
一般的に反復回数を意識したトレーニングによる筋力向上は筋肥大の影響が大きく、重量を意識したトレーニングによる筋力向上は神経系の適応の影響が大きいと言われています。
しかし、この一般論を証明する実験データは、ほとんどないのが実情でした。
一つの実験データの相関関係から因果関係を強く主張するのには限界がありますが、それでもこのデータは、示唆を与える結果に違いありません。

最後に、この実験では毎回のトレーニングセッションで規定の反復回数を全セットで実施できた場合、次回から重量を高めています。
また、トレーニング時の反復回数のデータ(どのトレーニング群も規定の反復回数よりも低い)から示唆されるとおり、ほぼ毎回のセッションで限界まで追い込んでいたと考えられます。
したがって今回の結果は、どの群も毎回のセッションで追い込んでいたという前提条件の上で成立します。
つまり、たとえば12回できる重量を用いて4回しか実施しなかった場合、違う結果になることが予想されます。
ただし、限界まで実施するトレーニング(Training to failure法)はオーバートレーニングのリスクも高くなるため、毎回限界まで実施することが必ずしも良い結果を招くとは限りません。
追い込み度合いとトレーニング効果との関係は、個人の特徴やトレーニング期などを踏まえて常に微調整を図る必要があります。

まとめ

ベンチプレスによる筋肥大効果は4-12RMの範囲であれば変わらないが、最大筋力への効果は高重量で優れる