心血管代謝系の健康度を高めるために24時間の過ごし方をどう配分すべきか?

2021年6月5日

はじめに

以前、日本人労働者を対象とした論文をもとに、24時間をどう過ごすことで、メンタルヘルス(精神衛生)に好影響をもたらすのかを書きました(リンク)。
その論文では平日の座りがちな活動(Sedentary Behavior)を減らし、その分を睡眠に充てることでメンタルヘルスの悪化が防げる可能性が示されています。

今回は、フィンランドの中年者を対象として24時間の過ごし方と脂質代謝、糖代謝などの心血管代謝系マーカーとの関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Farrahi, V., Kangas, M., Walmsley, R., NiemelÄ, M., Kiviniemi, A., Puukka, K., Collings, P. J., Korpelainen, R., & JÄmsÄ, T. (2021). Compositional Associations of Sleep and Activities within the 24-h Cycle with Cardiometabolic Health Markers in Adults. Medicine and science in sports and exercise, 53(2), 324–332. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002481

方法
フィンランド北部の1966年出生コホート研究に登録された3443人(実験当時46歳)を対象

対象者は股関節装着型加速度計を14日間装着
加速度計と自己申告の睡眠のデータを合わせて24時間の時間構成を下記の項目ごとに分類
・座りがちな行動(Sedentary Behavior:SB)
・低強度の身体活動(Light-intensity physical activity: LPA)
・中―高強度の身体活動(Moderate to vigorous physical activity: MVPA)
・睡眠(Sleep)

体脂肪率、体脂肪量、ウエスト周径囲、インスリン濃度、空腹時血糖値、LDLコレステロール、HDLコレステロールなどを測定

結果
・他の活動時間に比べてMVPAあるいはLPAの時間が多いことは心血管代謝系マーカーに好影響(LPAよりMVPAの方がより好影響)
→MVPAが30分増えるとグルコース負荷2時間後のインスリン濃度が11.8%低くなる。また、LPAが30分増えると同指標が2.7%低くなる

・他の活動時間に比べてSBおよびSleepの時間が多いことは心血管代謝系マーカーに悪影響
→例えば、SBが1時間増えるとグルコース負荷2時間後のインスリン濃度が3.5%高くなる。また、Sleepが1時間増えると同指標が5.7%高くなる

解説

この論文は、座りがちあるいは睡眠の時間を低強度あるいは中―高強度の身体活動に充てることで、中年者の心臓血管系の健康度が改善する可能性を示しています

また、低強度身体活動と中―高強度身体活動の効果を比較すると、低強度の時間を中―高強度に充てることで心血管代謝系マーカーに好影響が認められました。
以上を踏まえると、一般的に言われているとおり、1日の中で身体活動レベルの高い時間を確保することは、心臓血管系からみた健康度に有益だと言えます。

ただし、この論文は横断研究であり、因果関係を明らかにする研究デザインではない点に注意が必要です。
また24時間の過ごし方が健康度に与える影響は、集団の特性に依存します。
したがって、世界的にみても睡眠時間が短い日本人を対象とした場合、同じような結果になるのかは定かではありません。

まとめ

フィンランドの中年者は身体活動レベルを高めると心臓血管系の健康度に好影響