1日のエネルギー摂取量を抑える朝食の摂り方は?

はじめに

太るか痩せるかを左右するのは、日々のエネルギー出納です。
摂取カロリーより消費カロリーが多ければ痩せ、消費カロリーより摂取カロリーが多ければ太ります。

今回は負のエネルギー出納(摂取カロリー<消費カロリー)を実現する朝食の摂り方がテーマです。

一般に朝食を摂らない人は健康状態が悪いと認識されていますが、ダイエットの観点で考えると、朝食を抜くと1日を通したエネルギー摂取量を抑えられる可能性があります。
ただし、このアプローチの最大の懸念事項は、朝食欠損によって食欲が亢進し、昼食以降の食事量が増加してしまうことです。

今回紹介する論文では、朝食を1) 通常通り摂る条件、2) 水のみとする条件、3) わずかなカロリーが含まれる粘調性の高い食事を摂る条件とし、その後の食欲やホルモン濃度、昼食摂取量を比較しています。

論文概要

出典

Slater, T., Mode, W., Hough, J., James, R. M., Sale, C., James, L. J., & Clayton, D. J. (2021). Effect of the perception of breakfast consumption on subsequent appetite and energy intake in healthy males. European journal of nutrition, 10.1007/s00394-021-02727-5. Advance online publication. https://doi.org/10.1007/s00394-021-02727-5

方法
14名の健常男性を対象
※朝食のエネルギー含有量や研究の目的、仮説を対象者に知らせずに実施

■条件
・プラセボ食
低エネルギーフレーバースカッシュ・水道水・キサンタンガムで構成された食事
粘調性があるため、スプーンで食べる必要あり
平均625g、平均16kcal

・通常食
パフライスシリアル、白パン、ストロベリージャム、リンゴジュース、セミスキムミルクで構成
平均757g、平均573kcal

・水
平均618ml(g)

■トライアルの実施方法
・前日の食事・身体活動量は各条件で統一

・前日の夕食から11時間以上の間隔あけた上で朝に実験室に来室

・ベースラインの血液、食欲を測定

・朝食を10分以内に摂取・摂飲

・朝食の10分・30分・60分・120分・195分後に食欲、30分・60分・90分・120分・180分後に血液を測定

・朝食の195分後に無理なく満腹感を感じるまで20分以内に昼食(パスタ、トマトソース、エクストラバージンオリーブオイル)を摂取

・昼食の直後、60分後に食欲を測定

※各条件は4日以上空けて実施

■測定項目
血液:総PYY、アシル化グレリン、血糖値

食欲:空腹感、満腹感、食べることへの欲求(Desire to eat: DTE)、将来の食事消費(Prospective food consumption: PFC)、吐き気

結果
※数値は平均値

・昼食のエネルギー摂取量は通常食が981kcal、プラセボ食が1062kcal、水が1093kcal
(通常食と水との間に有意差あり、通常食とプラセボ食との間に有意差なし)

・朝食と昼食の合計のエネルギー摂取量は通常食が1554kacl、プラセボ食が1078kcal、水が1093kcal
(通常食と他2条件との間に有意差あり)

・空腹感、DTE、PFCの曲線下面積は水に比べて通常食、プラセボ食で低値
・満腹感の曲線下面積は水に比べて通常食、プラセボ食で高値

アシル化グレリンは朝食の60分後でプラセボ食、水に比べて通常食で低値

血糖値は通常食で朝食の30分後から120分後にかけて上昇

解説

この論文は、朝食を抜いた場合(水)、低カロリーだが粘調性の高い食事を摂った場合(プラセボ食)、通常通りに摂った場合(通常食)でその後の食欲や食欲関連ホルモンならびに昼食の食事量に差が生じるのかを検証しました。

得られた結果は、食欲は通常食のみならずプラセボ食でも水との間に差がありました。
すなわち低カロリーの食事であっても、空腹感や満腹感といったスコアにポジティブな反応が得られました。
また、昼食のエネルギー摂取量は通常食とプラセボ食で差がありませんでした。

これらは、身体に負のエネルギー出納の環境を作り出すことを目的とすると、低カロリーで粘調性の高い食事を摂ると、その後の食事量増加を抑制できるため、有益な可能性を示唆しています。
(ただし、朝食と昼食を合わせたエネルギー摂取量はプラセボ食と水で有意差なし)

こういった実験結果は、時に大きなインパクトを与えます。
しかし、たった1回の結果であり習慣的に実施した場合、どれだけ効果が続くのかは不明な点を忘れてはいけません。

個人的には、ここまで低カロリーでなくても、約100kcalのサラダチキン、ギリシャヨーグルトといったヘルシーでタンパク質が十分摂れる食事とノンカロリードリンク(水や炭酸水)といった方法でもマイナスのエネルギー出納を作り出す助けになると思います。

タンパク質が食欲調整に効果的なエビデンスはこちら

今回の論文では食欲亢進作用を持つホルモン(アシル化グレリン)は、通常食でのみ朝食後に低値を示し、プラセボ食と水との間に有意差はありませんでした。
この結果は、食欲に関するホルモン応答では、食事量の大小を説明できないことを示唆しています。
ホルモン応答の変化であたかもダイエット効果が決まるみたいな主張を時に見ますが、その見解には疑問符がつきます。

まとめ

低カロリーで粘調性の高い朝食を摂ると負のエネルギー出納を作り出せる可能性