総摂取カロリーが同じであれば糖質と脂質の割合が変わっても筋トレが体組成に与える効果は変わらない

2021年9月24日

はじめに

レジスタンストレーニング(筋トレ)による身体組成の変化は、エネルギーバランス(摂取カロリーと消費カロリーの差)による影響を受けます
すなわち、消費カロリーが摂取カロリーを上回ると除脂肪量(≒筋肉量)・脂肪量ともに減少する可能性が高い一方、摂取カロリーが消費カロリーを上回る場合では除脂肪量・脂肪量が増えることが多いです。

今回はエネルギーバランスが均等、すなわち理論的には体重変動が起きにくい条件で行われた実験を紹介します。
紹介する論文では、男性トレーニーを対象として、糖質と脂質の摂取カロリーの違いが身体組成に及ぼす影響を検証しています。

論文概要

出典

Wrzosek, M., Woźniak, J., & Włodarek, D. (2021). The effect of high-fat versus high-carb diet on body composition in strength-trained males. Food science & nutrition, 9(5), 2541–2548. https://doi.org/10.1002/fsn3.2204

方法
過去6カ月以上にわたり最低でも週3回の筋トレをしている男性トレーニー55名を対象(19-35歳)

実験は下記の3段階
第一段階:対象者の募集、形態・身体組成測定
第二段階:基本的な食事(2週間)、形態測定
第三段階:食事介入(12週間)、形態・身体組成測定

対象者は実験期間中、最低でも週3回の筋トレを実施(1回あたり約70分)
筋トレはパーソナルトレーナーの管理下で実施、負荷は個々の能力によって調整

第二段階の食事は、全対象者が個々のエネルギー需要量(消費量)に見合う同等の食事を摂取(糖質:55%、脂質:23-35%、タンパク質:除脂肪体重1kg当たり2g、ビタミンやミネラルの摂取量は食品消費基準をもとに決定)

※個々のエネルギー需要量は身体組成に基づいた推定安静時代謝量に身体活動量に基づいた係数(アンケートによって決定)を掛けて決定

第三段階の食事介入では、対象者を下記の2群にランダムに分類
低糖質高脂肪食(LCHF):27名
→糖質:最大40%まで、脂質:約40%、タンパク質:除脂肪体重1kg当たり2g

低脂肪高糖質食(LFHC):28名
→糖質:約60%、脂質:約20%、タンパク質:除脂肪体重1kg当たり2g

身体組成は生体電気インピーダンス法(BIA法)で測定
周経囲は標準化された検査プロトコルに基づいて測定

結果
・実験開始時の体重、体脂肪量、除脂肪量には有意差があり、LCHFで高かった。ただし、体脂肪率は有意差なし

【食事介入期間前後の群内の比較】
・LCHF:体重が-1.24kg、ウエスト周径囲が-2.11cm、体脂肪量が-1.2kg、除脂肪量が-0.03kg(体重、ウエスト周径囲、体脂肪量は有意差あり)
・LFHC:体重が+0.19kg、ウエスト周径囲が-0.93cm、体脂肪量が-0.4kg、除脂肪量が+0.64kg(体脂肪量は有意差あり)

【食事介入期間前後の群間の比較】
・体重1kg当たりのエネルギー摂取量(約35kcal/kg)・除脂肪量1kg当たりのタンパク質摂取量(約2g/kg FFM)は有意差なし
・すべての指標で介入前後の変化に有意差なし

解説

この論文は、全測定指標で食事介入前後の群間差がなかったことから、エネルギーバランスが整った条件では糖質と脂質のエネルギー摂取割合は、男性トレーニーの身体組成の変化にあまり影響しないことを示しています。

ただし、トレーニング実験ではあるものの、筋トレの内容が厳密にコントロールされていないため、個々の筋トレ質が結果に影響している可能性があります。
実際、12週間を通して週3回以上の筋トレを実施しているのにも関わらず、除脂肪量は両群ともに増加しておらず、十分な刺激であったのかというと疑問が残ります。

また、アンケートによって身体活動量を見積もりエネルギー必要量を推定しているものの、食事介入期間中の消費エネルギーを客観的に測定しているわけではないため、どこまで正確に推定できていたのはわかりません。

一方、論文によると、第二段階・第三段階をとおして対象者は摂取した飲食物全てを食事日記にメモすることが求められており、規定通りになっていない場合、実験実施者からすぐに連絡が入る体制であったと記述されているため、食事については比較的厳密に行われていると言えます。

55名という比較的大人数を対象として群間差がなかったことを踏まえると、総エネルギー摂取量に差がない場合やエネルギーバランスが均等の場合では、巷で言われているほど身体組成の変化に及ぼす影響は大きくないのかもしれません。

ただし、脂肪は1g当たり9kcalとエネルギー密度が高いため、高脂肪食で高糖質食と同じ摂取カロリーを保つというのは、工夫しない限り難しいのが実際です。

まとめ

糖質と脂質の摂取カロリーが違っても、総カロリーが同じであれば身体組成への効果は変わらない