スプリントインターバルトレーニングで大切な刺激は量ではなく強度

はじめに

スプリントインターバルトレーニング(SIT)は、途中から物理的強度(パワー、スピード)が減少しても良いので、最初から全力で行うことが特徴のトレーニングです。
このタイプのトレーニングは、オールアウト形式とも呼ばれます。
SITは、幅広い層を対象として、有酸素性・無酸素性の運動能力を高める効果が期待できます。

一般的にポピュラーなSITは30秒のオールアウト形式の運動を4分の休息を挟んで4-6本行う方法です。
ただ、この方法は、総運動時間がたった2-3分ではあるものの、トレーニング後には吐き気を催すこともあるほど、心身への負荷の高いトレーニングです。
また、休息時間やウォームアップ、クールダウンの時間を含めると、1回のトレーニングセッションに必要な時間が意外と長くなります。
要するに色々な観点からみて、実施へのハードルが高いトレーニングです。

今回紹介する論文では、30秒-4分、10秒-4分、10秒-2分の3つのSITのトレーニング効果を検証しています。

論文概要

出典

Hazell, T. J., Macpherson, R. E., Gravelle, B. M., & Lemon, P. W. (2010). 10 or 30-s sprint interval training bouts enhance both aerobic and anaerobic performance. European journal of applied physiology, 110(1), 153–160. https://doi.org/10.1007/s00421-010-1474-y

方法
自転車エルゴメーターを利用
48名の健康的な男女をトレーニング期間前のタイムトライアルパフォーマンスや最大酸素摂取量、性別をもとに下記4群に割り当て
・30秒-4分休息群
・10秒-4分休息群
・10秒-2分休息群
・コントロール群(トレーニングなし)

トレーニング期間:2週間
頻度:3回/週(合計6回)
セット数:最初の2回が4セット、中盤の2回が5セット、最後の2回が6セット

トレーニング期間前後の測定項目
・最大酸素摂取量
・5kmタイムトライアル(5kmTT)
・30秒ウインゲートテストの最高パワー、平均パワー

結果
・最大酸素摂取量
30秒-4分休息群:9.3%増加
10秒-4分休息群:9.2%増加
10秒-2分休息群:3.8%増加(有意傾向)
コントロール群:変化なし
※トレーニング群間における有意差なし

・5kmTT
30秒-4分休息群:5.2%改善
10秒-4分休息群:3.5%改善
10秒-2分休息群:3.0%改善
コントロール群:変化なし
※トレーニング群間における有意差なし

・ウインゲートテストのピークパワー
30秒-4分休息群:9.5%増加
10秒-4分休息群:8.5%増加
10秒-2分休息群:4.2%増加(有意傾向)
コントロール群:変化なし
※トレーニング群間における有意差なし

・ウインゲートテストの平均パワー
30秒-4分休息群:12.1%増加
10秒-4分休息群:6.5%増加
10秒-2分休息群:2.9%増加(有意差なし)
コントロール群:変化なし
※トレーニング群間における有意差なし

解説

この論文は、SITの運動時間が30秒ではなく10秒であっても、持久系パフォーマンスの向上や最大酸素摂取量の増加を引き起こすことを明らかにしました。
この結果は、SITのトレーニング効果を決める刺激が運動の量(時間)ではなく、強度(ピークパワー)にあることを示唆しています。

論文の著者らは、コントロール群を除いた3群間の有意差がないことを根拠に、30秒-4分休息、10秒-4分休息および10秒-2分休息のトレーニング効果が同じという見解を示していました。
ただし、トレーニング期間前後の変化率を見ると、10秒-2分休息に比べると、10秒-4分休息の方が良さそうです。
本文では、トレーニングセッション中のピークパワーの結果も記載されています。
その結果を見ると、両群ともに同じぐらいだったため、10秒-2分休息のトレーニング効果がマイルドだった理由は強度の高さによって説明することはできません。
休息時間が短くなると、ATP-PCr系ではなく、解糖系のエネルギー供給の貢献比が増えますが、それがトレーニング効果にどれだけ影響したかは疑問です。

いずれにしても、SITの運動時間が30秒と10秒では身体的・精神的な負担度がかなり異なるため、10秒で十分なトレーニング効果が得られたこの論文の結果はありがたいものです。

まとめ

SITの運動時間は30秒未満でも良い