最新の研究に基づく筋肥大効果を高めるトレーニングボリュームの決め方とは?

2022年4月1日

はじめに

多くのトレーニーは、自らの筋肉を大きくするために日々トレーニングに励んでいます。

トレーニング効果を左右する変数の中でも、トレーニングボリューム(反復回数×セット数)は筋肥大の効果と特に関係するといわれています。
一方で、これまでの多くの研究では、対象者の実験参加前までのトレーニングボリュームを考慮していませんでした。
これは、トレーニングの原理の一つである過負荷の原理(身体機能は一定以上の運動負荷を与えることで向上する)を踏まえると、いささか不思議です。
仮にある実験の週当たりのトレーニングボリュームが100だとした場合、直前のトレーニングボリュームが80の人と150の人では、身体にかかる相対的負荷が大きく異なるため、トレーニング効果も異なると予想されます。

今回紹介する論文では、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)を習慣的に実施しているトレーニーを対象として、実験参加前のトレーニング状況をもとにトレーニングボリュームを個別に決めた場合、規格化されたトレーニングボリュームを実施した場合と比べて、筋肥大効果が高まるのかを検証しています。

論文概要

出典

Scarpelli, M. C., Nóbrega, S. R., Santanielo, N., Alvarez, I. F., Otoboni, G. B., Ugrinowitsch, C., & Libardi, C. A. (2022). Muscle Hypertrophy Response Is Affected by Previous Resistance Training Volume in Trained Individuals. Journal of strength and conditioning research, 36(4), 1153–1157. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003558

方法
Within-subject approach(被検者内アプローチ)
21名の男性トレーニーのうち、16名が全実験を完了
各対象者は、片脚ずつランダムに下記の2群に分類
・非個別化レジスタンストレーニング(Non-individualized: N-IND):先行研究をもとに週当たりのトレーニング量を22セットに固定
・個別化レジスタンストレーニング(Individualized: IND):実験参加前直近2週間のトレーニング量の1.2倍になるように対象者ごとにセット数を決定

トレーニングの詳細は下記のとおり
期間:8週間
頻度:2回/週
種目:45度レッグプレス、レッグエクステンション
重量:8-12RM
休息時間:2分(セット間)、2-3分(種目間)

トレーニング実験の前後に大腿四頭筋(外側広筋)の筋横断面積を測定

結果
・N-INDとINDのトレーニングボリュームに有意差なし
・16名のうち8名は実験参加前のトレーニングボリュームに比べてN-INDのトレーニングボリュームが20%以上多かった

・筋横断面積は両群で増加したが、INDの方が著しい増加が認められた(N-IND: 6.2%、IND: 9.9%)
・個人の筋横断面積の増加率を比べると、10名がINDの方が伸び、4名が同程度、2名がN-INDの方が伸びた

解説

論文で報告されている集団の平均値では見逃しがちですが、身体組成・機能の改善を目的としたトレーニングの効果には大きな個人差があります。

この論文は、規格化(非個別化)されたトレーニングボリュームをこなすよりも、直近のトレーニング状況をもとに、トレーニングボリュームを個別に設定(20%増加)した方が、筋肥大効果が高まることを報告しています。
なお、この20%の増加率というのは、この論文を執筆した研究グループの以前の研究成果に基づいています。

一方、2名の対象者では規格化されたトレーニングボリューム(22セット)を実施した場合に高い筋肥大効果が認められました。
この結果は、「トレーニングボリュームを20%増やす」という個別化では、誰でも必ず筋肥大効果が高まるわけではないことを意味しています。
また、トレーニングボリュームを増やすというアプローチは、長期的には過度な疲労蓄積による弊害なども考えられる上、既にトレーニングボリュームが多いトレーニーでは非現実的なこともあります。
したがって、トレーニングボリュームの個別化だけでは個人の筋肥大効果を高めるアプローチを最適化するのには限界があると言えます。

まとめ

筋肥大効果は、直近のトレーニング量から20%増加させると高まる可能性