筋トレにオールアウトは必要か?

2022年4月12日

はじめに

筋トレの効果は、負荷、反復回数、種目、筋収縮時間、セット間の休息時間、セット数、頻度およびオールアウトの有無といった多くの変数の振る舞いによる影響を受けます。
当サイトでもこれまで、様々な変数について紹介してきました。

今回は強度とオールアウトの有無という2つの変数に着目した論文を扱います。

オールアウト、すなわち一定のリズムで動作を継続できなくなるまで行うトレーニングは、英語ではTraining to Failure、Repetition to Failureと表現します。
本記事では引用論文に従い、Repetition to Failure(RF)とします。

ボディメーキングの界隈では、RFはオールアウトに至るまで行わない方法(Not Leading to Repetition to Faire:NRF)に比べると、筋肥大効果が優れると言われます。
しかし、RFとNRFを比較するとき、多くのケースでは総挙上重量という量の側面が考慮されておらず、RFの総挙上重量が多くなっています。

今回紹介する論文では、総挙上重量が等しい条件において、オールアウトの有無に加え強度の違いが筋肥大や最大筋力に及ぼす影響を検証しています。

論文概要

出典

Lasevicius, T., Schoenfeld, B. J., Silva-Batista, C., Barros, T. S., Aihara, A. Y., Brendon, H., Longo, A. R., Tricoli, V., Peres, B. A., & Teixeira, E. L. (2022). Muscle Failure Promotes Greater Muscle Hypertrophy in Low-Load but Not in High-Load Resistance Training. Journal of strength and conditioning research, 36(2), 346–351. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003454

方法
過去6ヶ月以上にわたり下半身の筋力ベースのスポーツ活動を行っていない健常男性32名を対象
(途中離脱によって最終的なデータ分析対象者は25名)

対象者はトレーニング期間前の測定結果をもとにランダムに高重量あるいは低重量のRFに割り当て
また、トレーニングは片脚ごと実施し、各群の反対側の脚をNRFに割り当て
よって群は下記の4グループ
・HL-RF(高重量、オールアウト、13名)
・HL-NRF(高重量、非オールアウト、13名)
・LL-RF(低重量、オールアウト、12名)
・LL-NRF(低重量、非オールアウト12名)

■トレーニング方法
期間:8週間

頻度:2回/週

種目:片脚レッグエクステンション(マシン)

強度:
HL-RF・HL-NRFは80%1RM(最大挙上重量)
LL-RF・LL-NRFは30%1RM

セット数:
RFは3セットで各セットをオールアウトまで実施
NRFは同重量のRF(HL-NRFと場合、HL-RF)の平均反復回数の60%の反復回数で、RFと総負荷量が均等になるまでセット数を増やし実施

休息時間:2分/セット間

■トレーニング期間前後の測定項目

最大筋力:片脚レッグエクステンション(マシン)

筋断面積:大腿四頭筋(MRI)

結果
※数値は平均値
■トレーニング
・セット数と反復回数
HL-RF→3セット、12.4回
HL-NRF→5.5セット、6.7回
LL-RF→3.0セット、34.4回
LL-NRF→5.4セット→19.6回

・総負荷量
群間差なし

・主観的強度
HL-RF・LL-RFはHL-NRF・LL・NRFより高値

■筋断面積
時間と条件の交互作用あり
→LL-NRFを除いた3群で増加

■最大筋力
時間と条件の交互作用あり
→全群で増加
→HL-RF・HL-NRFはLL-RF・LL-NRFより著しい増加

解説

得られた結果をまとめます。

最大筋力
・オールアウトの有無に関わらず、高強度で効果が高い
・低強度でも向上はする

筋肥大
・オールアウトまで実施すれば、低強度でも高強度と同等の効果が得られる
・低強度ではオールアウトまで追い込まないと効果が期待できない

ボディメーキングに取り組むトレーニーの場合は、最大筋力増加にさほどこだわらないケースが多いことから、低強度でもオールアウトまで実施すれば、優れたトレーニング効果が得られると言えます。
しかし、高強度ではオールアウトまで追い込まなくても同等の効果が得られることを踏まえると、あえてきつい思いをする低強度に取り組む必要もないと言えます。

一方、最大筋力向上を優先することが多いアスリートの場合、基本的には高強度でオールアウトまで実施しない形式(HL-NRF)が推奨されます。
その理由は、日頃の競技練習で身体に高負荷がかかるため、筋トレであえて過度な疲労を与えるメリットがないからです。
実際、オールアウトまで実施する筋トレは翌日の最大筋力を低下させることや、持久系アスリートの場合、筋トレをオールアウトまで実施すると効果が損なわれることが示されています。


まとめ

筋トレにオールアウトが必要かは目的とその強度次第、ただし高強度であればあえてオールアウトしなくて良い