インターバルトレーニングは一度に沢山やった方が良いのか?それとも、分けながら実施日を増やした方が良いのか?

はじめに

持久系スポーツのパフォーマンスの多くは、最大酸素摂取量、動きの経済性、酸素摂取水準の生理学指標によって決まります。
持久系アスリートやそのコーチの多くは、中・高強度のインターバルトレーニングを週に何度か実施することで、生理学指標を改善・向上させるイメージを持っています。

今回紹介する論文では、1週間当たりのインターバルトレーニングの総時間は同じものの、一度で沢山行い頻度を減らしたグループと、実施頻度を高めたグループの効果を比較検証しています。

論文概要

出典

Tønnessen, E., Hisdal, J., & Ronnestad, B. R. (2020). Influence of Interval Training Frequency on Time-Trial Performance in Elite Endurance Athletes. International journal of environmental research and public health, 17(9), 3190. https://doi.org/10.3390/ijerph17093190

方法
エリートレベルのクロスカントリーあるいはバイアスロンの選手20名が参加
アスリートはランダムに下記2群に10名ずつ割り当て
・高頻度グループ(HFG)
・低頻度グループ(LFG)

病気やアクシデントによって最終的なデータ分析対象者はHFGが6名、LFGが9名

介入期間は12週
LFG群は週2回、HFG群は週4回のインターバルトレーニングを実施
介入期間の前後にローラースケートの最大下・最大漸増負荷試験、8kmタイムトライアルを実施

■トレーニングの詳細
介入期間は夏季(5-8月)
介入セッション以外のトレーニングとして、低強度トレーニング(最大心拍数の82%未満)と最大週1回の高強度インターバルトレーニング(最大心拍数の87%超)を行うように指示
LFGは、8×8分@中強度-2分@回復期(中強度の合計時間:64分)と6×12分@中強度-3分@回復期(中強度の合計時間:72分)をそれぞれ週1回実施
HFGは4×8分@中強度-2分@回復期(中強度の合計時間:32分)と3×12分@中強度-3分@回復期(中強度の合計時間:36分)をそれぞれ週2回実施
ここでの中強度とは、最大心拍数が82-87%、血中乳酸濃度が2.5-4.0mmol/L
したがって、両群ともに週当たりの中強度のトレーニング時間は136分で統一
LFGは中強度のセッション間に最低でも1日、通常は2日の間隔があった
HFGは2日連続でセッションを実施し、間に1日設けた上で残りのセッションを実施

結果
介入期間中の週当たりのトレーニングの時間、強度の配分に群間差なし

■タイムトライアル
LFG群は統計学的有意に改善(9名中7名が改善)
HFG群は有意な変化なし
群間差の効果量はTrivial

■最大酸素摂取量
両群ともに有意な変化なし

■酸素摂取水準(血中乳酸濃度が4mmol/Lの酸素摂取水準)
LFG群は統計学的有意に改善(80.7%→85.4%)
HFG群は有意な変化なし
群間差の効果量はsmall(0.52)

■動きの経済性(時速10.9kmの酸素摂取量)
LFG群は統計学的有意に改善(41.0ml/kg/min→39.6ml/kg/min)
HFG群は変化なし
群間差の効果量はmoderate(1.14)

解説

非常に面白い着眼点の研究です。
ただし、HFG群の4割が途中離脱していることに大きな研究の限界があります。

この論文は、1週間当たりのトレーニング時間や強度の配分が同等なのにも関わらず、中強度の1回当たりのトレーニング時間を長くすることで、最大下の生理学指標(酸素摂取水準、動きの経済性)の改善が著しいことを示しています。
論文の著者らは、この原因について、1回当たりのトレーニング時間が長いと、毛細管現象(Capillarization)、ミトコンドリアのサイズと数の増加、酸化系酵素活性の増加などの抹消適応をより刺激する可能性を挙げています。
また、他にも、1回のトレーニングでよりグリコーゲンを消費することが、ミトコンドリア生合成の中心となる細胞内シグナル伝達のカスケードの活性化の増加と関連するという先行研究の見解も挙げています。

既に高い身体能力を有するアスリートにおいて、中・高強度のトレーニングではある程度の量を1回に行わないと、刺激として不十分なのかもしれません。

まとめ

エリート持久系アスリートは週当たりのトレーニング変数が一緒でも、1回当たりのトレーニングの中身で効果が変わる可能性がある