よく笑う人は心血管イベントや全死亡率のリスクが軽減する

はじめに

笑いは健康に良い」ことは、昔からよく言及されます。
その原因としてはいくつかの要因が考えられており、たとえば笑うことで身体の防御機能であるNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が活性化することが挙げられます。
また笑いはホルモン分泌や循環器系にも好影響をもたらします。

今回は日本人を対象として、大声で笑う頻度と心血管イベント、全死亡率との関係を検証したコホート研究を紹介します。

論文概要

出典

Sakurada, K., Konta, T., Watanabe, M., Ishizawa, K., Ueno, Y., Yamashita, H., & Kayama, T. (2020). Associations of Frequency of Laughter With Risk of All-Cause Mortality and Cardiovascular Disease Incidence in a General Population: Findings From the Yamagata Study. Journal of epidemiology, 30(4), 188–193. https://doi.org/10.2188/jea.JE20180249

方法
山形県で実施された前向きコホート研究
2009年-2015年にかけて地域の健康診断を受診した40歳以上の20969人を対象
データの欠損によって最終的な分析対象者は17152人(男性7003人、女性10149人)
追跡期間は最大8年(中央値:5.4年)

研究参加時の調査項目は下記のとおり
既往歴、投薬状況、臨床症状、血圧、笑いの頻度、飲酒習慣、喫煙状況、身体活動量、教育レベル、婚姻状況、メンタルストレスレベル、社会への参加状況

笑いの頻度の調査方法は下記のとおり
「笑い」=「大声で笑う」と定義
対象者に対して「どれぐらいの頻度で、大声で笑いますか?」と質問
回答選択肢4つ(ほぼ毎日、1-5回/週、1-3回/週、1回/月未満)
回答は3つのカテゴリーに分類(週1回以上、1か月以上1週間未満、月1回未満)

年齢・性別・高血圧・糖尿病・喫煙・飲酒状況の影響を調整後、笑いの頻度と心血管イベント発症率、全死因死亡率との関係をCox比例ハザードモデルにて検証

結果
・対象者の笑いの頻度の内訳は下記のとおり
週1回以上:14096人(82.2%)
1か月以上1週間未満:2486人(14.5%)
月1回未満:570人(3.3%)

・笑いの頻度が少ない人は、男性、現役喫煙者、糖尿病患者、独身者、身体的活動量が低いという傾向があった

・追跡期間中、257名(1.5%)が死亡、138件(0.8%)の心血管イベントが観察

・交絡因子調整後、全死亡率は笑いの頻度が月1回未満のグループが週1回以上のグループより高かった(ハザード比:1.95、95%信頼区間:1.16-3.09)

・交絡因子調整後、心血管イベントは笑いの頻度が1か月以上1週間未満のグループが週1回以上のグループより高かった(ハザード比:1.62、95%信頼区間:1.07-2.40)

 

解説

ハザード比とは相対的な危険度を比較する統計手法です。
今回紹介した論文の場合、週1回以上笑っている人たちのハザード比を基準(1)とし、他の2群のハザード比が1.0より大きく、加えて95%信頼区間が1.0をまたがない場合、全死亡率や心血管イベントのリスクが高いという解釈になります。

この論文は、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙、飲酒状況といった因子を調整しても、笑いの頻度が全死亡率や心血管イベントの発症率と関係していたことを示しています。

論文の研究デザイン上、因果関係は定かではありませんが、論文の著者らは下記の要因が影響していた可能性を挙げています。
・よく笑う人は健康を促進する行動をとっていること
・笑いは免疫系に好影響を与えること
・笑いは血管内皮機能や動脈スティフネスの改善、食後血糖値やストレスマーカーの増加を抑制すること

なお、この論文には分析対象者の心血管イベントの発生数、笑いの定量方法、対象者の選択バイアス(健康診断を受診している人のみが対象)といった研究の限界があります。
しかし、日本人を対象としたコホート研究であるため、諸外国の論文に比べると我々日本人においても説得力を生みやすい論文であるに違いありません。

とにもかくにも週に1回以上は大笑いできるような人生を過ごしたいものです。

まとめ

大笑いは健康に良い