コンパウンド・コア種目にバリエーションをつけることでスクワットの1RMが効果的に伸ばせる可能性

はじめに

当サイトの人気シリーズ、レジスタンストレーニングの変数に関して、今回はトレーニング種目と負荷のバリエーションに着目した論文を紹介します。

紹介する論文では、強度(RM)と種目(スクワット、レッグプレス、デッドリフト、ランジ)にバリエーションを設けることで、大腿四頭筋の筋肥大ならびにスクワットの最大挙上重量(1RM)への効果が高まるのか検討しています。

論文概要

出典

Fonseca, R. M., Roschel, H., Tricoli, V., de Souza, E. O., Wilson, J. M., Laurentino, G. C., Aihara, A. Y., de Souza Leão, A. R., & Ugrinowitsch, C. (2014). Changes in exercises are more effective than in loading schemes to improve muscle strength. Journal of strength and conditioning research, 28(11), 3085–3092. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000000539

方法
70名の健常男性(過去6ヶ月間のレジスタンストレーニング経験なし)を対象

対象者はランダムに下記の5群に割り当て
強度固定・種目固定(CICE)
強度固定・種目変動(CIVE)
強度変動・種目固定(VICE)
強度変動・種目変動(VIVE)
トレーニングなし(Control)

実験期間中の途中離脱によって最終的な分析対象者は49名

トレーニング内容は下記のとおり
期間:12週間
頻度:2回/週
強度固定:12週間を通して8RMで実施
強度変動:12週間を通して6-10RMの範囲で実施
種目固定:12週間を通してスクワットを実施
種目変動:1-4週はスクワット・レッグプレス、5-8週はスクワット・デットリフト、9-12週はスクワット、デットリフト、ランジ
量(セット数):総セット数は全ての群で統一(1-4週は4セット、5-8週は6セット、9-12週は9セット)

トレーニング期間の前後に下記項目を測定
筋横断面積(筋肥大の指標):MRIを用いて右脚・左脚の大腿四頭筋全体の筋横断面積、外側広筋・内側広筋・中間広筋・大腿直筋の筋頭の筋横断面積(右脚のみ)
最大筋力:スクワットの1RM(最大挙上重量)

結果
筋横断面積:
大腿四頭筋全体の筋横断面積はControlを除いた4群で増加(+9.3-+12.2%)。Controlを除いた4群の増加に群間差なし
CIVE・VIVEは大腿四頭筋を構成する4つの筋全てで増加
CICEは中間広筋と大腿直筋で増加なし
VICEは大腿直筋で増加なし

最大筋力:
スクワットの1RMはControlを除いた4群で増加
トレーニング前の1RMの数値を考慮した上で比較した場合、CIVEはその他のトレーニング群よりも増加が著しかった
CICEはVICEより、VIVEはCICE・VICEよりも増加が大きかった
まとめると、トレーニング効果が高かった順にCIVE、VIVE、CICE、VICEの順であった

解説

この論文は、スクワットのみを実施するよりも、スクワットの関節動作と近い動きを伴うレッグプレス、デットリフト、ランジといったコア(コンパウンド)種目を併せて実施した方が、スクワットの1RMが効果的に向上したことを示しています。
この原因としては、スクワットで使われる筋肉(大腿四頭筋、大殿筋、中殿筋、ハムストリングスなど)が動員され、かつ複数の関節が動員されるコア・コンパウンド種目を行っていたことを踏まえると、神経性因子の適応がより促進された可能性があります。
直接比較していないため推察の域を脱しませんが、種目固定と比べるとセット数は少ないものの12週間を通してスクワットを実施していたことや、コア種目を実施していた点に鍵があると考えられます。
すなわち、スクワットを実施しない期間があったり、短関節・補助種目であるレッグエクステンション、レッグカールなどを用いた場合、違う結果になった可能性があります。

なお、種目変動同士(CIVE・VIVE)を比べた場合、CIVEでやや最大筋力の向上が顕著でした。
したがって、最大挙上重量の向上に対しては8RMで継続実施した方がトレーニング効果が高い可能性があります。

この論文のもう一つの大きな知見は、種目にバリエーションを設けた方が、大腿四頭筋の筋肥大が均等に起こることです。
これは、エクササイズ種目のバイオメカニクス的特徴の差によって動員される筋線維が異なったことが影響していると考えられます。
したがって、ボディーメーキング点な目線で考えると、スクワットのみならず、いくつかの種目を組み合わせた方が効果的だと言えます。

まとめ

スクワットだけ実施するよりも、いくつかのコア種目を組み合わせた方が最大筋力や筋肥大への効果がアップする