股関節外転・外旋筋機能とランニング障害との関係

2021年4月27日

はじめに

以前、ランニング障害(Running Related Injury: RRI)とメンタル面との関係を調査した論文を紹介しました。

今回は筋力とRRIとの関係を検証した論文を紹介します。

股関節周りの筋肉(股関節周囲筋)は、様々な動きの安定性に関わります。
そのため、スポーツ現場でも研究論文においても、股関節周囲筋の筋力がRRIと関係することは古くから指摘されてきました。

中でも、股関節外転筋や股関節外旋筋は骨盤や股関節の安定に深く関わるため、これらの筋力不足や左右差がRRIを誘発すると言われています

一方で、股関節周囲筋の筋力・左右差とRRIとの関係を検証した論文は、あまり多くないのが実情です。

今回は、大学生クロスカントリーランナー選手を対象として、股関節外転・外旋筋力と過去のRRIの受傷歴との関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Vannatta, C. N., & Kernozek, T. W. (2021). Normative measures of hip strength and relation to previous injury in collegiate cross-country runners. Journal of athletic training, 10.4085/721-20. Advance online publication. https://doi.org/10.4085/721-20

方法
全米大学体育協会(NCAA)3部に所属する大学生クロスカントリーランナー82名(男性38名、女性44名)を対象

徒手筋力計(Hand-held Dynamometer)を用いて、等尺性股関節外転筋力、等尺性股関節外旋筋力(座位)、等尺性股関節外旋筋力(腹臥位)を片脚ずつ測定

測定値は男女別に基準値(95%信頼区間)を設定
基準値未満の場合、筋力不足と判断
左右差が10%以上の場合、左右差ありと判断

筋力不足・左右差と過去のRRIの有無との関係を検証

結果
・絶対値で表された最大筋力は女性より男性で高かった。ただし、身長と体重で正規化した場合、3試行の最大筋力に性差はなかった

・RRIを有していたパーセンテージは男性で56.8%、女性で75.0%であった

・少なくとも1試行で左右差が認められたパーセンテージは男性で75.7%、女性で81.8%であった

・男性を対象とした場合、等尺性股関節外転筋力の左右差がRRIと関係していた

・女性を対象とした場合、片脚あるいは両脚の等尺性股関外転筋力の不足と両脚の腹臥位の等尺性股関節外旋筋力の不足がRRIと関係していた

解説

この論文の主な知見は下記のとおりです。
男女ともに股関節周囲筋群の最大筋力に左右差を抱えているランナーは多い
男性の場合、股関節外転筋(中殿筋など)筋力の左右差が過去のランニング傷害の発生率と関係する
女性の場合、股関節外転筋(中殿筋など)・外旋筋(中殿筋・深層外旋六筋など)の筋力不足が過去のランニング傷害の発生率と関係する

ありそうでなかったエビデンスであり、トレーナー・医療従事者・ストレングス&コンディションコーチなどの専門家がランナーに対して傷害予防の重要性を伝える際の説得材料となる論文です。

この論文によると、男女ともに3分の2以上のランナーが最大筋力の左右差を抱えていました。
左右差=悪という見方は短絡的なところがありますが、少なくとも男性は左右差を解消する筋力トレーニングによってランニング障害の予防に繋がる可能性があります

ただし、この論文には下記に示す限界があります。
・高機能の測定機器を用いておらず、等尺性最大筋力しか評価していない
・研究デザイン上、RRIとの因果関係は分からない(過去のRRIによって筋力が影響を受けた可能性もある)

まとめ

股関節外転・外旋筋の筋力不足や左右差はランニング障害と関係する