女子大生の食生活と睡眠との関係

はじめに

食生活と睡眠との間には密接な関係があります。

当サイトでも以前、成人女性を対象とした論文を紹介しました。


その論文では、摂取カロリーが多い人や一般に健康に良いと言われる全粒穀物や不飽和脂肪酸の摂取量が少ない人では、睡眠不足を実感している傾向があったことを報告しています。

これまでの研究によって、睡眠不足や睡眠の質が悪いと肥満やⅡ型糖尿病、心血管疾患のリスクが高まることも指摘されていることから、健康のために食生活と睡眠との関係を明らかにすることは大切です。

今回は女子大生を対象として食生活と睡眠状況との関連を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Aslan Çin, N.N., Yardimci, H. Association of total energy intake, diet quality and sleep disorders in university-term female students. Sleep Biol. Rhythms 19, 313–323 (2021). https://doi.org/10.1007/s41105-021-00320-1

方法
トルコで行われた研究
19-24歳の412名の女子大生を対象

調査項目は下記のとおり
・Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI):睡眠の質
・Insomnia Severity Index(ISI):不眠重症度
・3日間の食事記録(平日:2日、休日:1日)
・Healthy Eating Index-2015(HEI-2015):食事の質

年齢、BMI、喫煙状況、アルコール摂取習慣、身体活動の影響を考慮した上で検証

結果
※数値は平均値

・全対象者のうち64.1%が睡眠の質が悪く、28.4%が不眠症と判断
・全対象者のエネルギー摂取量は1600kcal/日
・睡眠の質が悪い人や不眠症と判断された人は、そうでない人に比べてエネルギー摂取量が多かった
・睡眠の質が悪いほどタンパク質摂取量・食物繊維摂取量が少なく、エネルギー摂取量・総脂肪摂取量、飽和脂肪酸摂取量が多い傾向
・不眠症の程度が強いほど不飽和脂肪酸摂取量が少なく、エネルギー摂取量が多い傾向
・睡眠の質が高いほど野菜摂取量や乳製品摂取量が多く、精製穀物摂取量や添加糖類摂取量、飽和脂肪酸摂取量が少ない傾向

解説

この論文は、女子大生を対象として食生活と睡眠との関係を検証しました。
その結果、睡眠の質が悪い人ではエネルギー摂取量、総脂肪摂取量、飽和脂肪酸摂取量が多い傾向にありました。
一般に健康に良いと言われる野菜や乳製品については、摂取量が多いと睡眠の質が高く、健康に悪いと言われる精製穀物や添加糖類については、摂取量が多いと睡眠の質が低い傾向がありました。

添加糖類とは加工食品などに添加される甘味料のことを言い、カロリーが高いばかりで栄養をほとんど含まないため「エンプティカロリー」とも言われています。
添加糖類は清涼飲料水の他、調味料やドレッシングなどにも含まれていることがあります。
多量の添加糖類の摂取は、糖代謝に異常をきたし、肥満やインスリン抵抗性、Ⅱ型糖尿病を引き起こすとされています。

一方、睡眠の質を高める傾向が認められた乳製品については、トリプトファンの影響が考えられます。
トリプトファンは必須アミノ酸の一つで乳製品や大豆製品、青魚などに豊富に含まれ、睡眠の質向上に関わるメラトニンを作るもとになります。

この論文は因果関係を明らかにする研究デザインではないため、結果の解釈には注意を要します。
しかし、様々な研究の結果を踏まえると、質の高い食生活は良質な睡眠を確保することに貢献するに違いないでしょう。

まとめ

女子大生は睡眠の質を高めるために食生活に気を配るべき