女性筋トレ愛好家のトレーニング効果を高めるセット数は?

2021年9月29日

はじめに

レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)が筋肥大や筋力向上に及ぼす影響は、強度、反復回数、セット数、休息時間、動作スピード、動作可動域など、様々な変数によって変わります。
これらの変数の最適な組み合わせを探索する研究は昔から行われてきましたが、未だに多くの論文が発表されています。

また、各変数が与える影響は、トレーニーの性別、年齢、レジスタンストレーニングの経験度、競技スポーツの実施状況やその種類、日常生活の活動量やストレス度など、様々な要因によっても変わります。

したがって、たとえ系統的レビューやメタ分析で統一的な見解が発表されたとしても、必ずしも自分やクライアントに当てはまるかを容易に断定することはできず、常にその人にとって最適なものは何か探し続ける必要があります。

今回は女性筋トレ愛好家を対象として週当たりのセット数の違いが筋力や筋肥大に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Barbalho, M., Coswig, V. S., Steele, J., Fisher, J. P., Paoli, A., & Gentil, P. (2019). Evidence for an Upper Threshold for Resistance Training Volume in Trained Women. Medicine and science in sports and exercise, 51(3), 515–522. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000001818

方法
3年以上のレジスタンストレーニング経験を有する40名の女性をランダムに4群に分類
・5セット群:各部位合計5セット(各種目1-2セット、3種目)
・10セット群:各部位合計10セット(各種目2-4セット、3種目)
・15セット群:各部位合計15セット(各種目5セット、3種目)
・20セット群:各部位合計20セット(各種目6-7セット、3種目)

月曜日:胸・肩部(バーベルベンチプレス、インクラインバーベルベンチプレス、ミリタリープレス)
木曜日:背部(ラットプルダウン、ケーブルロー、アップライトロー)
金曜日:脚部(45度レッグプレス、バーベルスクワット、スティッフレッグドデットリフト)
を実施

トレーニング期間は24週間
各セットの反復回数は週ごとに変化させながら4-15回の範囲
各セットは疲労困憊まで実施

トレーニング前後に下記項目を測定
・10RM(10回繰り返すことのできる最大重量):ベンチプレス、ラットプルダウン、45度レッグプレス、スティッフレッグドデットリフトの10RM(10回繰り返すことのできる最大重量)
・筋厚(筋肥大を表す指標):上腕二頭筋、上腕三頭筋、大胸筋、大腿四頭筋、大殿筋

結果
・すべての群で24週間後に10RMの重量と筋厚が大幅に増加した
・グループ間で比較すると、5セット群と10セット群では10RMの重量と筋厚の増加に統計学的な差はなかった
・5セット群・10セット群に比べると、15セット群・20セット群の10RMの重量と筋厚の増加は緩やかであり、その差は統計学的に有意なものが多かった(特に20セット群との差は全てで有意であった)

解説

この論文は、比較的経験豊富な女性筋トレ愛好家の場合、各部位を週に5-10セットを鍛えれば筋肥大や筋力に対する十分な効果が得られたばかりか、より多くのセット数(15-20セット)を実施した場合むしろトレーニング効果が損なわれたことを示しています。

また、3年以上継続してレジスタンストレーニングを実施している人であっても、複合関節種目だけの実施で、上腕二頭筋・上腕三頭筋の筋肥大も認められた結果も注目に値します。

なお、この実験では各部位のトレーニング頻度は週1回でした。
したがって、例えば各部位のトレーニングを週に15セット行う場合でも1回のセッションで5セット、頻度は週3回といったように、複数のセッションに負荷を分散させると異なる結果になる可能性は除外できません。

いずれにせよ、少ないセット数でもやり方によっては十分な効果が期待できることを教えてくれるこの論文は、多忙な人にとって勇気づけられるエビデンスだと思います。

まとめ

女性筋トレ愛好家は週当たりのセットが各部位5セットでも筋力や筋肥大を引き起こせる