女性筋トレ愛好家のトレーニング効果を高めるための種目は?

2022年1月30日

はじめに

通常、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)は、筋肥大や筋力向上を目的として行われます。

そのトレーニング効果を左右する変数としては、絶対的・相対的な重量、セット数、セット間の休息時間、一回当たりの収縮時間、週当たりの頻度など様々なものがあります。
当サイトではこれまでに、女性筋トレ愛好家を対象として、セット数が及ぼす影響を検証した論文を紹介しました。

今回注目する変数はトレーニング種目です。
筋力トレーニングの種目は、次の二つに大別できます。
・多関節種目(コンパウンド種目、Multi-joint: MJ)
・単関節種目(アイソレーション種目、Single-joint: SJ)

多関節種目は、複数の関節動作を伴い、大筋群が使われるとともに、それを補助するために周囲の小筋群も使われるため、高重量を扱えるというメリットがあります。
単関節種目は、活動する筋肉が少ないために高重量を扱うことはできませんが、狙った筋肉を特化して鍛えることができます。

今回は、女性筋トレ愛好家を対象として、1) MJトレーニング、2) SJトレーニング、3)MJ+SJトレーニングが筋力や筋肥大に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Barbalho, M., Souza, D., Coswig, V.,Steele, J., Fisher, J., Abrahin, O., Paoli, A., & Gentil, P. (2020). TheEffects of Resistance Exercise Selection on Muscle Size and Strength in TrainedWomen. International journal of sports medicine, 10.1055/a-1121-7736. Advanceonline publication. https://doi.org/10.1055/a-1121-7736

方法
過去1年少なくとも週2回の頻度でレジスタンストレーニングを実施している18歳以上の女性30名を対象

対象者は下記の3群にランダムに分類
MJトレーニング群(下半身の日:3セット×バーベルスクワット、3セット×45度レッグプレス、3セット×ダンベルランジ、3セット×バーベルデットリフト、上半身の日:2セット×ベンチプレス、2セット×ミリタリープレス、2セット×インクラインベンチプレス、2セット×ラットプルダウン、2セット×シーテッドケーブルロー、2セット×アップライトロー)
SJトレーニング群(下半身の日:5セット×レッグエクステンション、2セット×レッグカール、3セット×ヒップスラスト、2セット×4ポイントニーリングヒップエクステンション、上半身の日:2セット×チェストフライ、2セット×ラテラルレイズ、2セット×トライセップスプーリー、2セット×リアデルフライ、2セット×バイセプスカール、2セット×コンセントレーションカール)
MJ+SJトレーニング群(下半身の日:3セット×バーベルスクワット、2セット×レッグエクステンション、2セット×レッグカール、3セット×ヒップスラスト、2セット×4ポイントニーリングヒップエクステンション、上半身の日:2セット×ベンチプレス、2セット×チェストフライ、2セット×ラテラルレイズ、2セット×ラットプルダウン、2セット×シーテッドケーブルロー、2セット×バイセプスカール)

トレーニングの詳細
頻度:週2回(上半身と下半身を各1回)
期間:24週間
時間:30-40分/セッション
反復回数と休息時間:4-15回・30秒―4分(非線形ピロダイゼーション)
収縮時間:2秒/2秒(短縮/伸張)
各セットは疲労困憊まで実施

24週間の前後に下記項目を測定
・1RMの重量(最大筋力):バーベルスクワット、レッグエクステンション、ヒップスラスト、レッグカール、ベンチプレス、ラットプルダウン、トライセップスプーリー、バイセップスカール
・筋厚(筋肥大):大腿四頭筋、大殿筋、大胸筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋

結果
・全群で1RMと筋厚が増加
・MJ種目の1RMの増加は、SJトレーニング群よりもMJトレーニング群・MJ+SJトレーニング群が著しかった
・SJ種目の1RMの増加は、多くの種目で同程度であったが、レッグカールのみMJトレーニング群よりもSJトレーニング群で著しかった
・大腿四頭筋・大殿筋・大胸筋の筋厚の増加は、SJトレーニング群よりもMJトレーニング群・MJ+SJトレーニング群で著しかった

解説

この論文はトレーニング期間が24週間と他の論文に比べて長期間であることや、各群のトレーニング時間が統一されていたことに強みがあります。
(ただし、各筋群に対するセット数はトレーニングによって異なる)

得られた結果は、単関節種目を実施するよりも複合関節種目を実施した方が、筋肥大や筋力向上に効果があったことを示しています。

また、レッグカールを除いた単関節種目の1RM(ヒップスラスト、トライセップスプーリー、バイセッ)や上腕二頭筋・上腕三頭筋の筋厚も、SJトレーニング群で特別な効果がなかったことから、SJトレーニングをあえて実施するメリットは少ないと考えられます。
つまり、複合関節種目のトレーニングをすれば、単関節種目の最大筋力や小筋群の筋肥大も得られるということです。

唯一SJトレーニング群で追加的な効果が認められたレッグカールの1RMについて、論文ではハムストリングスが二関節筋でありバーベルスクワットの動作特性上、十分な刺激がかからなかった可能性が指摘されています。

まとめ

女性筋トレ愛好家が筋力向上や筋肥大を目的とした場合、まずは複合関節種目を積極的に取り入れるべき