増量期の余剰カロリーは糖質から摂るのか、それとも糖質とタンパク質から摂るべきか?

2021年8月22日

はじめに

増量期では正のエネルギーバランス(摂取カロリー>消費カロリー)にすることで筋合成の最大化を図り除脂肪体重(≒筋肉量)の増加を図ります。
このとき、余剰カロリーをどうとるべきなのかについては様々な意見があります。

今回は、ウエイトトレーニング初心者を対象として、増量期8週間の余剰カロリーを糖質のみ、あるいは糖質とタンパク質で摂った場合で身体組成・筋力に及ぼす影響が異なるのかを比較検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Rozenek, R., Ward, P., Long, S., & Garhammer, J. (2002). Effects of high-calorie supplements on body composition and muscular strength following resistance training. The Journal of sports medicine and physical fitness, 42(3), 340–347.

方法
25-35歳の健常男性73名を対象
対象者はランダムに下記の3群に分類
・糖質+タンパク質摂取群(26名)
→普段の食事に加えて約2010kcalのエネルギー(タンパク質:20.7%、脂質:9.7%、糖質:69.6%)をサプリメントで摂取
・糖質摂取群(25名)
→普段の食事に加えて約2020kcalのエネルギー(タンパク質:4.7%、脂質:6.2%、糖質:89.1%)をサプリメントで摂取
・コントロール群(21名)

※サプリメントは、半分を朝食から夕食の間、残り半分を就寝前に摂取

トレーニング内容は下記のとおり
期間:8週間
頻度:4回/週
時間:60-90分/回
種目:スクワット・レッグカール・ラットプルダウン・EZカール・アブドミナルクランチ(月・木曜日)、インクラインプレス・アップライトロー・ベンチプレス・トライセップスプッシュダウン・アブドミナルクランチ(火・金曜日)
負荷:4セット×8回(約70%1RM)

介入期間前後に下記項目を測定
・形態
→身長、体重、除脂肪量・脂肪量(水中体重秤量法)、周径囲(結果は割愛)

・最大筋力
→ベンチプレス、ラットプルダウン、レッグプレス

1週目、4周目、8週目にサプリメント以外の食事を調査

結果
・1週目、4週目、8週目の食事からの摂取カロリー、タンパク質・脂質・糖質の摂取量は群間・群内での有意差なし
・サプリメントを含めた総摂取カロリーは、糖質+タンパク質摂取群が4348kcal/日、糖質摂取群が4339kcal/日、コントロール群が2597kcal/日
・サプリメントを含めた糖質摂取量は、糖質摂取群(758g/日)が糖質+タンパク質摂取群(625g/日)、コントロール群(337g/日)に比べ多かった
・サプリメントを含めたタンパク質摂取量は、糖質+タンパク質摂取群(3.0g/kg/日)が糖質摂取群(1.7g/kg/日)、コントロール群(1.4g/kg/日)に比べ多かった

・体重は糖質+タンパク質摂取群(3.1kg)、糖質摂取群(3.1kg)で増加、コントロール群では変化なし
・除脂肪量は糖質+タンパク質摂取群(2.9kg)、糖質摂取群(3.4kg)、コントロール群(1.4kg)で増加、糖質+タンパク質摂取群と糖質摂取群の増加はコントロール群よりも顕著
・体脂肪率、体脂肪量はコントロール群のみ低下

・最大筋力は3群で増加、群間差なし

解説

この論文は、増量期に通常の食事に加え高カロリーサプリメントを摂取した場合、サプリメントのエネルギーが主に糖質で構成されていても、あるいは糖質とタンパク質で構成されていても、身体組成に及ぼす影響は変わらないことを示しています。

タンパク質摂取量は、糖質摂取群で体重1kg当たり1.7g/日、糖質+タンパク質摂取群で3.0g/日でした。
一般に減量期では、体重1kg当たり2g以上のタンパク質摂取量を摂ることで、筋肉量の維持・増加に好影響を与えるとされています。
一方、この論文の結果を踏まえると、エネルギーバランスが正となる増量期においては体重1kg当たり2gを下回っても、筋合成は十分に高められると言えます。

この論文では消費カロリーを推定していないため、コントロール群のエネルギーバランスは断定できません。
しかし、コントロール群の介入期間前後の体重に有意差がなかったことを踏まえると、エネルギーバランスは均等(摂取カロリー≒消費カロリー)に近い状態だったと考えられます。
そして、コントロール群は介入期間前後で体重が変化しなかったものの、除脂肪量は増え、体脂肪量が減っていました。
つまり、身体組成的にはポジティブな変化(体組成の再構築、リコンポジション)が起きていました。

なお、2000kcal/日の余剰カロリーを摂取した場合、たとえレジスタンストレーニングで筋合成のスイッチを入れる刺激が加わったとしても、通常は除脂肪量のみではなく、体脂肪量が増加することが多いです。
この論文で体脂肪量の増加が起きていなかった理由としては、対象者の特徴(レジスタンストレーニングの経験が浅い)が影響していたと考えられます。

まとめ

増量期の余剰カロリーは糖質のみ、あるいは糖質とタンパク質から摂ったとしても、身体組成に及ぼす影響は変わらない