睡眠の一貫性はアスリートの競技力を反映する
はじめに
以前、持久系アスリートを対象とした論文をもとに、睡眠を増やす重要性を言及しました。
睡眠に関する指標としては、ある1日や一定期間の平均値ではなく、一貫性に関する指標も大切です。
今回紹介する論文では、Sleep Regularity Indexという指標をもとに、様々な競技力、競技種目のアスリートを対象として、睡眠の一貫性を評価しています。
論文概要
出典
Alves Facundo, L., Brant, V. M., Guerreiro, R. C., Andrade, H. A., Louzada, F. M., Silva, A., & Mello, M. T. (2022). Sleep regularity in athletes: Comparing sex, competitive level and sport type. Chronobiology international, 39(10), 1381–1388. https://doi.org/10.1080/07420528.2022.2108716
方法
ブラジルのアスリート172人を対象
アスリートの内訳は下記のとおり
チームスポーツ73人、個人スポーツ99人
オリンピックスポーツ149人、パラリンピックスポーツ23人
競技種目は陸上43人、サッカー55人、体操1人、ハンドボール11人、柔道7人、モトクロス１人、水泳18人、パラ陸上4人、パラウエイトリフティング8人、パラ水泳4人、車椅子ラグビー7人、テコンドー9人、射撃1人、トライアスロン3人
競技力は国際レベル56人、全国レベル95人、地域レベル21人アクチグラフィによって睡眠データを計測
データ収集期間中に怪我をしていた者や5日連続分のデータがない者は除外して分析計測・評価項目は下記のとおり
総睡眠時間
睡眠潜時
睡眠効率
中途覚醒時間
就床時間
起床時間
Sleep Regularity Index（SPI）
→2日以上の24時間サイクルのデータをもとに、同一タイミングで同じ状態（睡眠状態あるいは覚醒状態）になっている確率を算出結果
平均のデータは下記のとおり
総睡眠時間：445分
睡眠潜時：20.8分
睡眠効率：86.2分
中途覚醒時間：33.4分
就床時間：0時21分
起床時間：8時9分
SRI：73SRIと他の睡眠データとの間に相関性なし
男性に比べて女性のSRIが高い（睡眠の一貫性が高い）
国際レベル（80.1）は全国レベル（68.7）、地域レベル（73.8）に比べてSRIが高い
国際レベル（総睡眠時間484分、睡眠効率88.1%）は全国レベル（432分、85.8%）、地域レベル（394分、82.5%）に比べて総睡眠時間が長く、睡眠効率が高い
種目別にみると、サッカーはハンドボール、陸上、水泳に比べてSRIが低い
解説
この論文は、様々なアスリートたちを対象とした結果、睡眠の一貫性を示す指標であるSRIが性別、競技力、種目と関係することを示しました。
先行研究によると、SRIは大学生の学業成績と関連します。
（引用：Phillips, A., Clerx, W. M., O’Brien, C. S., Sano, A., Barger, L. K., Picard, R. W., Lockley, S. W., Klerman, E. B., & Czeisler, C. A. (2017). Irregular sleep/wake patterns are associated with poorer academic performance and delayed circadian and sleep/wake timing. Scientific reports, 7(1), 3216. https://doi.org/10.1038/s41598-017-03171-4）
この論文は横断研究のため、睡眠データと競技力などとの因果関係は分かりません。
競技力の高いアスリートほど競技に専念できる環境を手にしている一方、全国レベル、地域レベルのアスリートは仕事などとの兼ね合いによって、最適な睡眠を手にしにくい状態だった可能性は高いです。
つまり、競技力の低いアスリートは寝たくても寝る時間がない、日々の睡眠リズムを揃えようにも揃えられない環境だった可能性があります。
SRIと他の睡眠データとの間に相関性がなかった結果を踏まえると、アスリートの睡眠状況のモニタリングとして、総睡眠時間だけでなく、睡眠の一貫性に関する指標を加えるのはアリかもしれません。
ただし、この点はアスリートを対象とした今後の研究成果の蓄積が待たれます。
まとめ
競技力の高いアスリートは一貫性のある睡眠をとっている