ウルトラトレイルランナーの睡眠対策とパフォーマンス
はじめに
レース時間が24時間前後の100マイルレースでは、日常と異なる睡眠-覚醒リズムで過ごすことが強いられます。
スタート時間にもよりますが、レース後半ではサーカディアンリズム的にも眠気が襲って来る上、レース中に生じた疲労が重なり、認知機能を悪化させます。
そういった悪条件でのレースはパフォーマンスを悪化させるだけでなく、安全面にも大きな懸念を与えます。
今回紹介する論文では、100マイルウルトラレースと睡眠との関係を検証しています。
論文概要
出典
Poussel, M., Laroppe, J., Hurdiel, R., Girard, J., Poletti, L., Thil, C., Didelot, A., & Chenuel, B. (2015). Sleep Management Strategy and Performance in an Extreme Mountain Ultra-marathon. Research in sports medicine (Print), 23(3), 330–336. https://doi.org/10.1080/15438627.2015.1040916
方法
対象レースは、The North-Face Ultra-Trail du Mont-Blanc (UTMB) 2013
(UTMB2013:168km、累積獲得標高9600m、レース時間が最長46時間)
完走者1685人のうち、参加同意の得られた303人を対象レースパフォーマンスは完走時間、デルタタイム(レースタイム-目標タイム)で評価
レース前の睡眠管理戦略(昼寝、睡眠時間の増加、断眠)、レース中の睡眠状況を評価
結果
完走時間は平均39時間31分20秒(対象者の順位の範囲:10位-1673位)レース前の睡眠管理戦略で多かったのは、昼寝(41%)、前日の睡眠時間の増加(33%)、断眠に関する特異的なトレーニング(11%)
72%のランナーがレース中に一度も眠らなかった
一度も眠らなかったランナーは寝たランナーよりも完走時間とデルタタイムが短かったレース前日の睡眠時間を増やしたランナーは、断眠に関する特異的なトレーニングをしていたランナーよりも完走時間が短かった
解説
この論文は、100マイルのウルトラトレイルに出場したランナーたちの睡眠状況とレースパフォーマンスとの関係を報告しています。
わかったことは、レース前日の睡眠時間を増やすことがパフォーマンスに有益だということです。
その一方で睡魔に抗うトレーニングはパフォーマンスには有益な効果をもたらしませんでした。
観察研究で、アンケートによる調査な点には注意が必要ですが、睡魔に抗う能力のトレーナビリティはあまり期待しない方がよく、睡魔に抗うトレーニングそのものも不健康で危険であるため、しない方が賢明なのかもしれません。
まとめ
ウルトラトレイルで優れたパフォーマンスを発揮するためには前日の睡眠時間を増やすのが良い