クラスターセット法は専門競技に取り組む女性アスリートに有効な方法

2021年11月5日

はじめに

専門競技に取り組むアスリートがストレングストレーニングを行う場合、その負荷を増やしすぎると、メインである競技練習に悪影響を及ぼしたり、ストレングストレーニングと競技練習を合わせた合計の負荷が過度になることで、競技パフォーマンスにマイナスの影響を及ぼす恐れがあります。
そのため、アスリートを対象とした場合、ストレングストレーニングの負荷のマネジメントは非常に重要です。

トレーニングテクニックの一つとして、クラスターセットがあります。
クラスターセットは、セット間ではなくセット内に短い休息時間(例:15~40秒)を設ける方法です。
例えば、10RMの負荷でスクワットを10回行うことを通常だとすると、クラスターセットでは10RMの負荷で5回実施した後に数十秒の休息時間を挟んだ後に、後半の5回を実施します。
(セット内の休息を3回以上設ける場合もある)

いくつかの研究を踏まえると、クラスターセットは特にスピードを意識したトレーニングにおいてセット中盤以降の挙上速度の維持に貢献し、それが筋パワーの効果的な向上に寄与するようです。
また、クラスターセットは通常の方法に比べると、血中乳酸濃度などの蓄積が軽微であり、代謝ストレスが軽微であることも分かっています。

今回紹介する論文では、女性バレーボール選手を対象として、ストレングストレーニングの効果がクラスターセットと通常の方法で異なるのかを検証しています。

論文概要

出典

Arazi, H., Khanmohammadi, A., Asadi, A., & Haff, G. G. (2018). The effect of resistance training set configuration on strength, power, and hormonal adaptation in female volleyball players. Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme, 43(2), 154–164. https://doi.org/10.1139/apnm-2017-0327

方法
30名の女性バレーボール選手を対象(平均年齢:18.5歳)
対象者は基本的な筋トレの実施に慣れていたが、実験開始前6か月間に定期的な筋トレを行っていなかった

対象者はランダムに下記の3群に10名ずつ割り当てられた
・伝統的なセット(Traditional set: TRT)
・クラスターセット(Cluster set: CRT)
・コントロール(Control: CON)

月・水・金にバレーボールの専門練習を実施
加えて、TRTとCRTは火・木・土に筋トレを実施

トレーニング実験の詳細は下記のとおり
期間:8週間
種目:
スクワット・ベンチプレス・デッドリフト・ミリタリープレス(1-4週)
ジャンプスクワット・エクスプローシブベンチプレス・デッドリフト・パワークリーン(5-8週)
プログラム:
強度と量に変動のある複数セット(3セット)複数種目の非線形プログラム
CRTはほぼ全てのセットにおいて、セット内に10-30秒の休息時間を設けて実施

トレーニング実験の前後に下記の項目を測定
・形態
身長、体重、周径囲

・最大筋力
バックスクワット、ミリタリープレス、ベンチプレス、デッドリフトの最大挙上重量(1RM)

・垂直跳び

・スプリント・方向転換
20mスプリント
4×9mシャトルラン

・安静時のホルモン濃度
テストステロン
コルチゾール
IGF-1

結果
・全員が全てのトレーニングを怪我なしで実施

形態
・TRT・CRTは上腕と大腿の周径囲が増加

最大筋力
・TRT・CRTは全ての1RMが増加

垂直跳び
・TRT・CRTともにピークパワーが増加、増加の程度はCRTで顕著

スプリント・方向転換
・全群ともに変化なし

安静時のホルモン濃度
・テストステロンはTRT・CRTともに増加、増加の程度はTRTで顕著
・IGF-1はTRT・CRTともに増加、増加の程度はCRTで顕著
・コルチゾールはTRT・CRTともに減少、減少の程度はCRTで顕著、CONは増加
・テストステロン-コルチゾール比(T-C比)はTRT・CRT1ともに増加

解説

この論文は、専門競技(バレーボール)に取り組む女性アスリートを対象として、クラスターセットと通常のストレングストレーニングの効果を比較したところ、クラスターセットは垂直跳びのパフォーマンス向上に効果的な上、通常の方法と同程度に最大筋力を増加させることを報告しました。

クラスターセットはセット内に短い休息時間を設けることで、クレアチンリン酸が部分的に回復し、それがセット後半の動作速度の維持に貢献すると言われています。
パワー=力×速度という式を踏まえると、動作速度を維持した状態でセットを通してトレーニングを行うことで、瞬発力の向上に効果的なことはイメージがつきます。

ストレングストレーニングによって、女性アスリートのホルモン濃度にポジティブな影響をもたらした結果も注目です。
T-C比は数値が低くなればなるほど、コルチゾールの比率が高まっていることを示し、身体をカタボリック(分解)に傾いていることを示唆しています。
一方、T-C比が高いことは身体がアナボリック(同化)な環境になっていることを示し、パフォーマンスの向上に繋がりやすいコンディションであることを示唆しています。
この論文で得られた差がどの程度意味を持つのかは不明瞭ですが、クラスターセットを実施したグループでコルチゾールが顕著に減少した結果を踏まえると、専門競技の練習を行うアスリートにとって、クラスターセットはオーバートレーニングといったネガティブな影響を抑えられる可能性はありそうです。

まとめ

クラスターセットは、専門競技を行うアスリートのストレングストレーニングの手段として有効