高強度筋トレによる筋肥大の効果は、レスト時間の大小ではなく、総挙上重量の影響を受ける
はじめに
以前、「筋トレにオールアウトは必要か?」という記事を投稿しました。
その記事では、総挙上重量が等しい条件において、オールアウトの有無と強度の違いによって、筋肥大や最大筋力に及ぼす影響が異なるのかを検証した論文を解説しました。
その論文で得られた結果や示唆は次の通りです。
最大筋力
・オールアウトの有無に関わらず、高強度で効果が高い
・低強度でも向上はする
筋肥大
・オールアウトまで実施すれば、低強度でも高強度と同等の効果が得られる
・低強度ではオールアウトまで追い込まないと効果が期待できない
今回紹介する論文では、強度を高強度に統一した上で、休息時間と総挙上重量が最大筋力や筋肥大に及ぼす影響を検証しています。
論文概要
出典
Longo, A. R., Silva-Batista, C., Pedroso, K., de Salles Painelli, V., Lasevicius, T., Schoenfeld, B. J., Aihara, A. Y., de Almeida Peres, B., Tricoli, V., & Teixeira, E. L. (2022). Volume Load Rather Than Resting Interval Influences Muscle Hypertrophy During High-Intensity Resistance Training. Journal of strength and conditioning research, 36(6), 1554–1559. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003668
方法
過去6ヶ月以上にわたりレジスタンストレーニングや有酸素トレーニングを行っていない健常若年者34名を対象
(途中離脱によって最終的なデータ分析対象者は28名)対象者はトレーニング期間前の測定結果をもとにランダムに長時間レスト群と短時間レスト群に割り当て
また、トレーニングは片脚ごと実施し、各群の反対脚を総挙上重量が同じで異なるレスト時間の群に割り当て
よって群は下記の4グループ
・LI群(長時間レスト群、14脚)
・SI群(短時間レスト群、14脚)
・VLI-SI群(LIと総挙上重量を統一した短時間レスト群、14脚)
・VSI-LI群(SI群と総挙上重量を統一した長時間レスト群、14脚)■トレーニング方法
期間:10週間頻度:2回/週
種目:片脚レッグプレス
強度:
80%1RMセット数:
LI群、SI群は3セットで各セットをオールアウトまで実施
VLI-SI群とVSI-LI群は、それぞれLI群、SI群と同じ総挙上重量になるまで各セットオールアウトまで実施反復時間:2秒(短縮性収縮:1秒、伸張性収縮:1秒)
休息時間:1分(SI群、VSI-LI群)、3分(LI群、VLI-SI群)
■トレーニング期間前後の測定項目
最大筋力:片脚レッグプレス
筋断面積:大腿四頭筋(MRI)
結果
※数値は平均値
■トレーニング
・セット数と反復回数
LI群→3セット、16.1回
VLI-SI群→4.5セット、11.6回
SI群→3セット、9.8回
VSI-LI群→2.3セット、13.4回・総挙上重量
LI群、VLI-SI群は、SI群、VSI-LI群よりも多い■最大筋力
全群で増加(26.5%~31.2%)
増加量に有意な群間差なし■筋断面積
全群で増加
増加量はLI群(9.8cm2)、VLI-SI群(9.5cm2)がSI群(5.1cm2)、VSI-LI群(4.8cm2)よりも多い
解説
この論文は、高強度(80%1RM)で行う筋トレの筋肥大への効果は、レスト時間ではなく、総挙上重量(kg)の影響を受けることを示しています。
つまり、仮にセット数を統一したプログラムでは、レスト時間が1分だと3分の場合に比べると、総挙上重量が減るので筋肥大効果は減弱しますが、セット数を増やせば、3分の場合と同じ筋肥大効果が得られるようになります。
とは言っても、レスト時間を短くする理由は、時間効率が主であり、セット数が増えればレスト時間が短くても、トレーニング時間が長くなってしまいます。
一方、最大筋力はレスト時間や総挙上重量が違っても、同じぐらい向上していました。
高強度の筋トレによる筋力向上は、思ったよりも追い込まずに、十分な効果が得られそうです。
論文の著者らは、総挙上重量が高いと筋肥大の効果が高まる理由について、1回1回の刺激の強さ(トレーニングによるタンパク質合成や細胞内同化シグナル伝達)が積み重なった結果の可能性があると考察していました。
まとめ
高強度筋トレは、レスト時間が多少短くても、最大筋力は十分に高まる