睡眠への意識を高めることで筋トレ効果を高める

2021年12月3日

はじめに

体脂肪を減らしながら筋肉量を増やすことを身体組成の再構築(リコンポジション)と呼ぶことがあります。
当サイトではこれまでに、リコンポジションを促進させるいくつかの取り組みを紹介しました。


今回は筋トレと睡眠の相乗効果に着目します。
過体重・肥満者を対象に、カロリー制限中の睡眠時間に着目した研究によると、たとえ摂取カロリーが同じでも睡眠時間が長いと体脂肪を効果的に減らせることが分かっています。


ただし、この論文ではレジスタンストレーニング(筋トレ)を実施していませんでした。
リコンポジションを引き起こすためには筋トレによって筋肉に十分な刺激を与えることで、筋合成のスイッチを入れることが大切です。

そこで今回は、筋トレに加えて睡眠を最適化させるアドバイスをした場合の身体組成に及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Jåbekk, P., Jensen, R. M., Sandell, M. B., Haugen, E., Katralen, L. M., & Bjorvatn, B. (2020). A randomized controlled pilot trial of sleep health education on body composition changes following 10 weeks’ resistance exercise. The Journal of sports medicine and physical fitness, 60(5), 743–748. https://doi.org/10.23736/S0022-4707.20.10136-1

方法
実験開始前6カ月以上にわたり筋トレを未実施かつ著しい睡眠問題を抱えていない健常男性を対象

対象者はランダムに下記の2群に分類
・運動+睡眠最適化群(ExS)
・運動群(Ex)
実験開始時には各群15名の参加者がいたが、最終的なデータ分析対象者はExSが10名、Exが12名

介入期間は10週間

筋トレの詳細は下記のとおり
頻度:2回/週
種目:レッグプレス、チェストプレス、レッグエクステンション、ケーブルチェストプレス、ラットプルダウン、レッグカール、ケーブルロー
反復回数:10回
セット:2-3セット
セット間の休息時間:90秒

ExSに対しては睡眠に関する下記のアドバイスを提供
・寝室は暗く、静かに、涼しく
・週末を含め1週間をとおして就寝と起床の時刻を揃える
・睡眠時間が8時間となるようにする
・就寝2時間前からは1) ライトを消す、2) PCなどの電子機器を使用しないあるいは可能な限り低い光照度で利用する、3) 運動をしない、4) 食べ物、コーヒー、紅茶、エネルギーを含む飲料を摂らない、5) 落ち着いて前向きな活動をし、喧嘩や対立を引き起こさない
・起床後はなるべく早く多くの光を浴びる
・1日の最後の1杯のコーヒーは就寝時刻の6時間前までに
・目覚まし時計が必要ないほど多くの睡眠をとるように
・ベッドで光を放つ電子機器を利用しない
・リラックスする技術を学び、夜に眠りにつくために、あるいは夜間に目を覚ました場合に利用する

介入期間前後の測定項目は下記のとおり
・身体組成(二重X線吸収法)

・不眠症尺度

・血液プロフィール(HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド、血糖値、HbA1c

結果
※数値は平均値

・除脂肪量は両群ともに増加(Exs:1.6kg、Ex:1.2kg)、群間差なし
・脂肪量は両群ともに減少(Exs:-1.8kg、-0.8kg)、Exsが顕著な減少

・不眠症尺度は介入期間前後で群間差なし

・血液プロフィールはトリグリセリドで群間差あり(Exsで増加、Exで減少、ただしExsの一名の著しい変化による影響)

解説

この論文は、実験開始時点で筋トレを実施していない健常者を対象として、筋トレプログラムに加えて健康的な睡眠習慣に関するアドバイスを提供したことで、体脂肪が顕著に減少したことを示しています。

引用したとおり、睡眠習慣に関するアドバイスは具体的な上、高額な機器が不要のため、誰でも取り組めるアプローチです。

ただし、この論文では介入期間中の睡眠に関する客観的なデータを測定していない上、唯一評価された不眠症尺度は群間差が認められませんでした。
したがって、提供されたアドバイスをどれだけ実践していたのかは不明です。

睡眠と体脂肪の変化との関連については推測の域を脱しませんが、睡眠不足の状態では脂質代謝が低下することや、食欲を亢進させるグレリン濃度が増加するため、そういった要因が関係した可能性が考えられます。

なお、この論文は健常男性を対象としており、日頃から激しいトレーニングを実施しているトレーニーやアスリート、女性、睡眠問題を抱えている人で同様の結果が得られるかは不明です。

まとめ

筋トレでリコンポジションを引き起こすには睡眠への取り組みが鍵となる