大学生の睡眠の量と質はBMIに関係する

はじめに

BMI(Body Mass Index)とは、体重と身長から算出可能な肥満や痩せの状態を表す体格指数です。
基準は国によって多少異なるものの、18.5以上25未満を「普通体重」とし、それよりも低い場合には「低体重(痩せ)」、高い場合には「過体重・肥満」に分類します。

多くの先行研究によって、BMIが25以上の人は、心血管疾患などの罹患リスクが高まることが報告されています。

以前、18-25歳の若年層を対象とした場合、BMIが高い人ほど睡眠時間が短い傾向にあったことを報告した論文を紹介しました。
また、特に男性では座りがちな時間(Sedentary time)がBMIと睡眠時間との関係を仲介し、BMIの高い男性は座りがちな時間が多いと睡眠時間が短縮する傾向もみられました。

今回紹介する論文は、大学生を対象として、睡眠時間に加えて睡眠の質を評価した上で、BMIとの関係を調査しています。

論文概要

出典

Krističević, T., Štefan, L., & Sporiš, G. (2018). The Associations between Sleep Duration and Sleep Quality with Body-Mass Index in a Large Sample of Young Adults. International journal of environmental research and public health, 15(4), 758. https://doi.org/10.3390/ijerph15040758

方法
クロアチアの首都ザグレブにある大学(ザグレブ大学)の33学部から無作為に抽出された8学部の学生を対象
調査は2017年に行われ2320人のうち完全なデータが得られた2100人(男性:1041名、女性:1059名、18-24歳)を対象

アンケートの調査項目は下記のとおり
・BMI
身長・体重をもとに算出
基準(25kg/m2)をもとに正常・過体重/肥満の2カテゴリーに分類

・睡眠時間
平日と土日のベッドで過ごした時間をもとに週平均の睡眠時間を算出
6時間未満、6-7時間、7.1-9時間、9.1-10時間、10時間以上の5カテゴリーに分類
先行研究をもとに7-9時間台を基準に設定

・睡眠の質
Pittsburgh Sleep Quality Questionnaire(PSQI)を使用
先行研究をもとに合計スコア5ポイントを閾値に設定
(5以下:良好な睡眠の質、5を超えた場合:低い睡眠の質)

共変量(健康状態、社会経済的地位、喫煙状況、飲酒習慣、慢性疾患、心理的苦痛、身体活動量)を考慮した上で睡眠時間、睡眠の質とBMIとの関連を検証

結果
BMI正常者:17.6%が7時間未満で3.2%が10時間以上
過体重・肥満者:20.3%以上が7時間未満で9.9%が10時間以上

・共変量を考慮した上で睡眠時間が7時間未満(オッズ比:2.71、95%信頼区間:1.27-5.84)、10時間以上(オッズ比:3.38、95%信頼区間:2.12-5.40)は過体重・肥満者が高いことに関係

・共変量を考慮した上で睡眠の質が悪いと過体重・肥満が高いことに関連(オッズ比:1.45、95%信頼区間:1.14-1.83)

・共変量を考慮した上で睡眠時間と睡眠の質を同時にモデルに入力しても、睡眠時間7時間未満、睡眠時間10時間以上および睡眠の質が悪いことは、過体重・肥満者が高いことに関連

解説

この論文は、2000人以上の大学生を対象として、睡眠状態とBMIとの関連を検証した結果、1) 睡眠時間が短すぎること(短眠)、2) 睡眠時間が長すぎること(長眠)、3) 睡眠の質が悪いことは、BMI25以上、すなわち過体重・肥満のリスクになり得ることを明らかにしています。

論文の著者らは先行研究のエビデンスをもとに、短眠はレプチン(食欲抑制ホルモン)の低下やグレリン(食欲増進ホルモン)の増加に関連することや、実験的に睡眠不足を誘発するとエネルギー摂取量が増加することを短眠が過体重・未満に繋がる理由として挙げています。

また、長眠については、身体活動不足によってエネルギー消費量が減ることが関係している可能性を指摘しています。
ただし、この論文では身体活動についてもアンケートで定量しており、共変量として扱っていました。

いずれにしても、この論文はアンケート調査に基づく横断研究であることから、因果関係を断定することはできません。
また、睡眠状態が悪いから太ったのか?太ったから睡眠状態が悪いのか?という疑問に答えることができません。

まとめ

睡眠時間は短すぎても長すぎても肥満のリスクになり得そう