ウェアラブルデバイスを装着するだけで睡眠の質が改善するかもしれない

2021年3月1日

はじめに

ウェアラブルデバイスとは、衣服や身体(腕、足、手首など)に装着可能なIoT機器やコンピューターのことです。

近年ではFitbit、Apple、Garminなどの大手企業がスマートウォッチと呼ばれる手首に装着するタイプの比較的安価なウェアラブルデバイスを発売しています。
そのためかつては知ることが難しかった睡眠や身体活動量、歩数、心拍数といった客観的なデータが誰でも取得できるようになってきました。

今回は、海外では利用者の多いWHOOP社のウェアラブルデバイスを装着することで、主観的な睡眠の質が改善するのかを検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Berryhill, S., Morton, C. J., Dean, A., Berryhill, A., Provencio-Dean, N., Patel, S. I., Estep, L., Combs, D., Mashaqi, S., Gerald, L. B., Krishnan, J. A., & Parthasarathy, S. (2020). Effect of wearables on sleep in healthy individuals: a randomized crossover trial and validation study. Journal of clinical sleep medicine : JCSM : official publication of the American Academy of Sleep Medicine, 16(5), 775–783. https://doi.org/10.5664/jcsm.8356

方法
病気や睡眠障害のない18-45歳の健康的な成人35名を対象(最終的なデータ分析対象者は32名)
ランダム化クロスオーバー試験
対象者はランダムに下記の2つのトライアルを各1週間実施
(1) WHOOPウェアラブルデバイスの利用+睡眠・覚醒と行動の記録(介入)
(2) 睡眠・覚醒と行動の記録のみ(コントロール)

WHOOPは、上腕に装着するタイプのウェアラブルデバイス
対象者は介入期間中にスマートフォンやタブレットからWHOOPによって測定された睡眠や身体活動量に関する自身の情報を閲覧することが出来た

対象者は1日目、7日目、14日目にPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)Sleep disturbance short form questionnaireによって主観的な睡眠の質を回答した
また、14日間を通して睡眠・覚醒と行動を記録した

さらにWHOOPウェアラブルデバイスの妥当性検証を目的として、WHOOPウェアラブルデバイスとPolysomnography(PSG,睡眠ポリグラフ検査)を装着する日が一晩設けられた

結果
・主観的な睡眠の質は、WHOOP装着によって改善した
・年齢・性別・ベースライン・順序効果を調整した上で、夜間の睡眠時間がWHOOP装着期間中で少ない傾向にあった(介入:421分、コントロール:433分、P値=0.07)
・WHOOP装着期間中の身体活動量は対象者全体でみると増加した。ただし男女差が認められ、男性では増加傾向、女性では減少傾向
・PSGとWHOOPの睡眠時間(睡眠の量)、睡眠断片化(睡眠の質)の偏り(bias)と精度誤差(precision errors)は低かった
・WHOOPの心拍数、呼吸数、心拍変動はPSGと比べて高い一致度であった

解説

この論文の主な知見は、上腕に装着するタイプのウェアラブルデバイスを着けることで、健康成人の主観的な睡眠の質が改善したことです。

この原因について論文の著者は二つの可能性を指摘しています。
・WHOOPのアプリケーションによって対象者は睡眠時間を増やすあるいは減らすようにアドバイスされたため(夜間の睡眠制限は不眠症の認知行動療法としても用いられており、介入によって夜間の睡眠時間が減少していた)
・WHOOPウェアラブルデバイスの装着によって身体活動量が増加し睡眠の質が改善した可能性

この論文の対象者数や実験期間等を踏まえると、データの信頼性や考察の整合性については素直に納得できないところがあります。

いずれにせよ、スマートウォッチと呼ばれる手首に装着するタイプのウェアラブルデバイスは人によっては睡眠の質に悪影響を与える可能性があることを踏まえると(普段、就寝前には時計を外す人が多いため)、上腕に着けるタイプの方がそういったネガティブな影響は少ないのかもしれません。

また、この論文では睡眠時間や睡眠ステージ、心拍数、呼吸数、心拍変動といった生理学的指標について、PSG(研究で信頼性が高いと認められている方法)と比較した結果、WHOOPウェアラブルの妥当性がある程度担保されることが明らかとなりました。
特に睡眠ステージについては、一般的なスマートウォッチの多くは精度に欠けることが複数の論文によって指摘されていることを踏まえると、睡眠を正確に評価したい人にとっては一つの良い選択肢となるでしょう。

まとめ

睡眠トラッカー・活動量計の機能があるウェアラブルデバイスを装着すると、主観的な睡眠の質が改善するかもしれない

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