不活動で太りがちな男性の運動は筋トレと有酸素どちらが効果的なのか?

2021年6月30日

はじめに

太りがち(BMIが25以上)な成人が肥満解消や身体組成、血液プロフィールの改善を目的とした場合の運動トレーニングの手段としては、ランニングやサイクリングといった有酸素運動、あるいはレジスタンストレーニング(筋トレ)が代表的です。

一般的に有酸素運動は体脂肪量の減少や心血管フィットネス(全身持久力)・心血管疾患と関係が深い血液プロフィールの改善に効果的な一方、筋トレは最大筋力や除脂肪量(≒筋肉量)の向上に効果的であると考えられています。
ただし、習慣的な筋トレによって糖尿病の発症リスクが軽減できる可能性が示されているなど、近年では有酸素で得られる効果が筋トレでも獲得できることが少しずつ明らかになっています。

また体脂肪・体重の変化はエネルギー出納(摂取カロリーと消費カロリー)によって大部分が決まるため、食事の影響を考慮しない限り、どちらの運動が効果的と断定することはできません。

今回は日本で行われた実験をもとに、太りがちな成人男性が有酸素運動あるいは筋トレを実施した際の効果を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

Kim, B., & Kim, S. (2020). Influences of Resistance versus Aerobic Exercise on Physiological and Physical Fitness Changes in Previously Inactive Men with Obesity: A Prospective, Single-Blinded Randomized Controlled Trial. Diabetes, metabolic syndrome and obesity : targets and therapy, 13, 267–276. https://doi.org/10.2147/DMSO.S231981

方法
49名の男性を年齢と最大酸素摂取量をもとに下記の2群ランダムに分類
※参加基準(年齢:30-64歳、BMI:25kg/m2以上、医師からの運動制限を受けていない、習慣的な運動習慣なし)を満たしていない、実験期間中の途中離脱などによって最終的な分析対象者は27名
レジスタンスエクササイズ群(RE)14名
有酸素エクササイズ(AE)13名

トレーニング期間は12週間(3回/週)
REの詳細:
計20-30分のウォームアップとクールダウン、60分のメインエクササイズ
メインエクササイズの7種目(クランチ、ハイラットプルダウン、シーテッドロー、チェストプレス、レッグプレス、レッグエクステンション、レッグカール)
反復回数:クランチのみ約15回、その他のマシン6種目は10-12回
休息時間:1-2分/セット間
負荷の調整:重量は1RMテストの結果に基づき個々に調整され、トレーニング期間中は指定の回数を楽に実施できた場合、徐々に増加

AEの詳細:
10-15分のウォームアップ、最大60分のメインエクササイズ、10-15分のクーリングダウン
メインエクササイズは屋外でのジョギングやランニング(雨天時は室内でのステーショナリーサイクリング)
強度は65-85%最大心拍数

トレーニング期間前後での測定項目は下記のとおり
食事調査:エネルギー摂取量、タンパク質・脂質・糖質の摂取量
形態・身体組成:身長、体重、BMI、除脂肪量・脂肪量(二重X線吸収法)
膝関節伸展筋力:バイオデックスを用いた等速性最大筋力
全身持久力:自転車エルゴメーターを用いた漸増負荷試験による最大酸素摂取量
血液プロフィール:空腹時早朝に測定、総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロール・トリグリセリド・血糖値・HOMA-IR・AST・ALT・γ-GTP

結果
【食事調査】
トレーニング期間前、トレーニング期間後ともに群内・群間・交互作用なし

【形態・身体組成】
・体重(-1.87kg)、BMI(-0.65kg/m2)はAEのみ低下、交互作用なし
・除脂肪量(+1.29kg)はREのみ増加、交互作用あり
・脂肪量はAE(-1.18kg)、RE(-0.90kg)ともに低下、交互作用なし

【全身持久力】
・最大酸素摂取量はAE(+5.28ml/kg/min)、RE(+3.34ml/kg/min)ともに増加、交互作用なし

【膝関節伸展筋力】
・等尺性ピークトルクはREのみ増加(+14.14Nm)、交互作用あり

【血液プロフィール】
・ALT(-5.07U/L)・γ-GTP(-17.21U/L)はREのみ低下、交互作用なし
・その他の指標は両群ともにトレーニング前後の有意差なし

解説

この論文の主な結果は下記のとおりです。
筋トレを実施したグループで体脂肪減少効果や全身持久力の向上が認められ、その程度は有酸素を実施したグループと同等であった
除脂肪量(≒筋肉量)や筋力の増加は、筋トレを実施したグループでしか起こらなかった
血液プロフィールは両グループあまり変化がなかった

筋トレを実施したグループではトレーニング期間前後で体重の変化がありませんでしたが、脂肪量は減少し除脂肪量は増加しました。
つまり身体組成的にはポジティブな変化が起きました。

また、膝関節伸展最大筋力は筋トレを実施したグループのみ向上しました。
成人以降、加齢に伴い膝関節伸展筋力は低下すること、膝関節伸展筋力が低くなると、メタボリックシンドローム、身体活動レベルにかかわらず、全死亡率が高いことが報告されていることから、膝関節伸展筋力を高めることは非常に意義があります。

一方、有酸素を実施したグループで有意な変化があり、かつ交互作用があった指標はありませんでした。
したがって、今回の結果はどちらかというと筋トレを実施した方が効果的であったことを意味しています。

ただし、今回の結果はあくまでも上記のトレーニング内容をした場合に当てはまり、トレーニングの内容によっては当然異なった結果になります。
たとえば筋トレの量が今回よりも少ない場合、体脂肪減少効果は減るかもしれません。

まとめ

太りがちな成人男性の運動は筋トレであっても、内容が適切であれば体脂肪減少が期待できる

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