筋トレ経験を持つトレーニーの場合、筋肥大と筋力向上に効果的なのはマシンとフリーウエイトのどちらなのか?

2021年4月24日

はじめに

前回、男性初心者が筋トレを始める際、マシンとフリーウエイトのどちらを用いても、ボディーメークや筋力に対しては同程度の効果が得られることを報告した論文を紹介しました。

では既に筋トレの経験を持つ人の場合はどうなのでしょうか?

今回は筋トレ経験を有するトレーニーを対象として、フリーウエイトとマシントレーニングの効果を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

Schwanbeck, S. R., Cornish, S. M., Barss, T., & Chilibeck, P. D. (2020). Effects of Training With Free Weights Versus Machines on Muscle Mass, Strength, Free Testosterone, and Free Cortisol Levels. Journal of strength and conditioning research, 34(7), 1851–1859. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003349

方法
46名の健常成人(男性20名、女性26名、年齢18~30歳)を性別、トレーニング経験が均等になるようにフリーウエイト群とマシントレーニング群に分類

実験期間中の途中離脱などによって分析対象者は下記のとおり
・フリーウエイト群19名(男性7名、女性11名)
・マシン群18名(男性8名、女性10名)

トレーニング内容は下記のとおり
期間:8週間
頻度:「2日実施-1日休息」サイクルの繰り返し
種目:
フリーウエイト群1日目(胸、背中、上腕後面)→バーベルベンチプレス、インクラインバーベルベンチプレス、ベントオーバーロー、チンアップ、スパインエルボーエクステンション、ダンベルキックバック
マシン群1日目(胸、背中、上腕後面)→スミスマシンベンチプレス、スミスマシンインクラインベンチプレス、シーテッドロー(ハンマーストレングス)、ラットプルダウン(テクノジム)、トライセップスプッシュダウン(テクノジム)、ローププレスダウン(ライフフィットネスのプーリーシステム)

フリーウエイト群2日目(脚、肩、上腕前面)→スクワット、ストレートレッグデットリフト、ランジ、シングルレッグカーフレイズ、ダンベルショルダープレス、ダンベルラテラルレイズ、キャンバーカール、プリーチャーカール
マシン群2日目(脚、肩、上腕前面)→スミスマシンンスクワット、クアドリセップスエクステンション(テクノジム)、ハムストリングスカール(テクノジム)、カーフレイズ(APEXマシン)、ショルダープレス(テクノジム)、ラテラルレイズ(テクノジム)、バイセップスカール(テクノジム)、プリーチャーカールハンマーストレングス)

負荷・反復回数・セット数・休息時間:
1-3週:4セット×8-10回(1分休息)
4-6週:4セット×6-8回(1.5分休息)
7-8週:3セット×4-5回(2分休息)
※規定の反復回数よりも多く実施できた場合、重量を漸増

トレーニング期間前後に下記項目を測定
身体組成:除脂肪体重(BOD PODを用いた空気置換法)

筋厚(筋肥大の指標):大腿四頭筋、上腕二頭筋(超音波法)

最大筋力:フリーウエイトスクワット(6-10RM)、スミスマシンンスクワット(6-10RM)、フリーウエイトベンチプレス(1RM)、スミスマシンンベンチプレス(1RM)

唾液中のホルモン濃度:テストステロン、コルチゾール

※唾液中のホルモン濃度のみ4週間経過時点でも測定。また、各回の測定はワークアウト前後で実施

結果
トレーニング実施率:フリーウエイト群で83%、マシン群で81%

除脂肪体重:両群ともに変化なし

筋厚:大腿四頭筋・上腕二頭筋ともに両群で増加(群×時間の交互作用なし)

筋力:スミスマシンンベンチプレスは群×時間の交互作用あり、マシン群で著しい増加が認められた(マシン群:+13.9%、フリーウエイト群:+8.6%)
フリーウエイトスクワット、スミスマシンンスクワット、フリーウエイトベンチプレスは両群ともに増加(+11-+19%、群×時間の交互作用なし)

ホルモン濃度:フリーウエイト群の男子はワークアウト後にテストステロン濃度が増加
安静時(トレーニング前)濃度は男女ともに変化なし
コルチゾールはトレーニング期間前後の安静時濃度、ワークアウト前後、群間差に有意差なし

解説

この論文は、平均して2年以上の筋トレ経験を有するトレーニーを対象とした場合、8週間のレジスタンストレーニングをフリーウエイトあるいはマシンで実施しても、筋厚と筋力は同じぐらい増加したことを示しています。

この結果は、初心者を対象とした結果と似ています。
したがって、トレーニング経験の有無に関わらず、目的がボディーメークや筋力向上の場合、フリーウエイトとマシンの選択はトレーニング効果に大きな差を生まないと考えられ、個人の好みや利用する施設の環境に応じて取り組みやすい方を実施すれば良いと言えます。

筋厚には有意な増加が認められましたが、身体全体の筋肉量と密接に関係する除脂肪体重はトレーニング前後で有意な変化がありませんでした。
この原因としては、対象者が既に2年間以上の筋トレ経験を有する集団であったことや、実験期間が8週間であったことが影響していると考えられます。

また、フリーウエイト群ではワークアウト後にテストステロン濃度の増加が認められました。
急性(一過性)のテストステロン濃度の増加は、多くの筋肉が動員された場合に起こるため、フリーウエイト種目では関節や姿勢の安定のために動員される筋が多くなったことを反映した結果だと考えられます。
ただし、だからと言ってフリーウエイト群で筋肥大や筋力向上が顕著であったわけではないため、一過性のテストステロン濃度の増加とトレーニングによる除脂肪体重、筋厚、筋力の増加との間には因果関係はないと言えます。

まとめ

筋トレ経験を有するトレーニーのボディーメークや筋力に対する効果は、フリーウエイトでもマシンでも大差ない