同一部位を1日2回鍛えるダブルスプリットの可能性

はじめに

ダブルスプリットとは、レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を1日に2回実施するトレーニング方法のことです。

ダブルスプリットについては、肯定的、否定的なものを含めて様々な意見があります。
否定的な意見の根拠としては、繰り返しのトレーニングによる異化(カタボリック)作用によって筋肉の分解が亢進する可能性や、セッション間の回復時間が少ないことによる2回目のトレーニングセッションの強度が落ちやすいことが挙げられます。
ただし、異化作用の根拠としてよく言われるコルチゾールなどのホルモン分泌亢進については、筋肥大との相関が必ずしもあるわけではありません。

今回は筋トレ経験を有する男性を対象として、週当たりのセット数とトレーニング負荷(RM)を統一した上で、ダブルスプリットを実施した際の筋肥大と最大筋力に影響を検証した最新の論文を紹介します。
なお、通常ダブルスプリットを実施する場合、午前中に胸、午後に脚といったように鍛える部位を変えることが多いですが、この論文では、ダブルスプリットを実施したグループは、午前中と午後に同じトレーニングを実施しています。

論文概要

出典

CorrÊa, D. A., Brigatto, F. A., Braz, T. V., de Camargo, J., Aoki, M. S., Marchetti, P. H., & Lopes, C. R. (2021). Twice-daily sessions result in a greater muscle strength and a similar muscle hypertrophy compared to once-daily session in resistance-trained men. The Journal of sports medicine and physical fitness, 10.23736/S0022-4707.21.12118-8. Advance online publication. https://doi.org/10.23736/S0022-4707.21.12118-8

方法
少なくとも1年以上のレジスタンストレーニング経験を有する健常男性23名を対象(平均年齢27歳)
ただし途中離脱によって最終的な分析対象者は18名

介入前の筋厚と筋力が均等になるように下記の2群にランダムに分類
・1日1回トレーニング群(S1)9名
・1日2回トレーニング群(S2)9名

トレーニング内容は下記のとおり
期間:8週間
頻度:4日/週
負荷:8-10RM(全てのセットで適切なフォームで短縮性収縮ができなくなるまで実施)
休息時間:90秒(セット間)、180秒(種目間)
収縮時間:約3秒(短縮性収縮1.5秒/伸張性収縮1.5秒)/回
部位ごとのセット数:16セット/日・32セット/週(同一部位は週2回実施)
すなわちS1は1日1回のセッションで同一部位を16セット実施し、S2は1日2回のセッションで同一部位を各8セット実施

月・木曜日のトレーニング
1S:
ベンチプレス8セット×8-10RM
ダンベルフライ8セット×8-10RM
ケーブルトライセップス8セット×8-10RM
パラレルバックスクワット8セット×8-10RM
レッグエクステンション8セット×8-10RM

2S:
ベンチプレス4セット×8-10RM
ダンベルフライ4セット×8-10RM
ケーブルトライセップス4セット×8-10RM
パラレルバックスクワット4セット×8-10RM
レッグエクステンション4セット×8-10RM
※午前と午後に同一内容を実施

火・金曜日のトレーニング
1S:
ラットプルダウン8セット×8-10RM
ストレートアームプルダウン8セット×8-10RM
バイセップスカール8セット×8-10RM
ライイングレッグカール16セット×8-10RM

2S:
ラットプルダウン4セット×8-10RM
ストレートアームプルダウン4セット×8-10RM
バイセップスカール4セット×8-10RM
ライイングレッグカール8セット×8-10RM
※午前と午後に同一内容を実施

1Sは実験開始前のトレーニング時間と同じ時間帯にトレーニングを実施
2Sは1回目のセッションを午前6-8時に実施、2回目のセッションは午後5-7時に実施(最低でもセッション間に8時間以上空けた)

介入期間の前後に下記項目を測定
最大筋力:ベンチプレスとパラレルバックスクワットの最大挙上重量(1RM)

筋持久力:ベンチプレスとパラレルバックスクワットの60%1RMの最大反復回数

筋厚:右側の上腕二頭筋、上腕三頭筋、外側広筋、大腿前面(大腿直筋・中間広筋)、大胸筋(超音波法)

主観的ウェルビーイング:各トレーニング前に疲労度、睡眠の質、筋肉痛、ストレス、ムードについて5段階で評価

結果
トレーニング実施状況:
両群ともに実施率は100%
8週間の合計トレーニング負荷量(セット数×反復回数×重量)は2Sの方が多かった(両群の差:116kg)
1週目と8週目のトレーニング負荷量の増加量は同程度

最大筋力
ベンチプレスの1RMは同程度増加(1S:+4kg、2S:+7kg)

パラレルバックスクワットの1RMは両群ともに増加。増加の程度は2Sの方が著しく、交互作用も認められた(1s:+11kg、2S:+20kg)

筋持久力
ベンチプレスの60%1RMの反復回数は同程度増加(1S:+3回、2S:+4回)

パラレルバックスクワットの60%1RMの反復回数は同程度増加(1S:+3回、2S:+4回)

筋厚:
5つの部位全てで同程度増加

主観的ウェルビーイング:群間差はなかった

解説

この論文は、同一種目のレジスタンストレーニングを1日2回に分けて実施した場合、1回で実施するよりも下半身の最大筋力が効果的に向上したことを示しています。
一方、上半身の最大筋力、上半身・下半身の筋持久力、筋肥大は1日1回と1日2回のどちらも同程度の向上効果が認められました。

前半に記したとおり、この論文のスプリットルーティンは一般的に行われている方法とは異なり、午前と午後に同一のトレーニングをしています。
また、週当たりの各筋群のセット数は32セット(1日16セット)であった上、各セットをTraining to failure法(できなくなるまで挙上)で実施していたため、非常に高負荷のトレーニング実験と言えます。
特にハムストリングスの種目はライイングレッグカールのみのため、1日16セット実施しています。
研究のためとはいえ、クレイジーです。

スクワットの最大筋力が2Sで著しかった理由としては、1Sに比べると1セッション当たりのセット数が少なかったため、後半すなわち午後のセッションで高い重量で実施できていたことが影響しているかもしれません。
一方、1Sでは1回のセッションでTraining to failure法で8セット実施していたため、後半の数セットでは規定の反復回数をこなすために重量を落としていたと推測できます。
実際、8週間をとおしての総負荷量には群間差もありました。

以上を踏まえると、今回の結果はあくまでも同一部位を対象に1日のセット数とトレーニング負荷(RM)を統一した場合にのみ当てはまると考えられます。
つまり、1Sのスクワットの1日当たりのセット数を減らし、頻度を高めた場合は、高重量で実施できたと予想されるため、異なる結果になった可能性があります。

筋肥大の指標である筋厚は両群ともに同程度増加しました。
筋肥大を最大化させるための最適なセット数については諸説あるものの、週当たり32セットよりも少ないセット数で十分な効果が得られることがこれまでに明らかになっています。
したがって、両群ともに筋肥大を最大化させるのに十分な刺激が得られていた可能性があります。

レジスタンストレーニングの効果を左右する変数には様々なものがあります。
そして一つの変数の影響を検証するためには、他の変数を制御する必要がありますが、実験デザイン上、どうしても他の変数に差が出てしまうこともあります。
例えば今回の論文では1日当たりのトレーニング回数の影響を検証するために、週当たりのセット数などをコントロールした結果、総負荷量には差が生じています。
そのため、1つの実験データから決めつけられることは必ずしも多くなく、読み手には慎重な理解力が求められます。

いずれにせよ、このような厳しいトレーニング実験の論文は、研究者、対象者の長く厳しい努力の結果であるため、貴重なデータには違いありません。

今回の結果をみる限り、スプリットルーティンは一般的に思われているよりもネガティブな影響が少ないのかもしれません。
ただし、そもそも1日に複数回レジスタンストレーニングを実施する時間を確保できる人は、仕事や家事、プライベートといったトレーニング以外の日常生活との時間の兼ね合いで余裕がある人に限られます。

まとめ

同一部位を1日2回トレーニングするダブルスプリットは、下半身の最大筋力の向上に効果的かもしれない