1日2回のHIITを週3回1週間実施すると最大酸素摂取量は増加する

はじめに

持続的な持久系トレーニングに比べると、高強度のインターバルトレーニング(HIIT)は、時間を節約できる上、健康指標にも同等以上の効果が期待できます。

HIITの有効性を示した研究をみてみると、そのプロトコルやトレーニング期間は様々ですが、短いものでは週3回のトレーニングを2週間行うだけで、顕著な効果が得られています。

また、別の観点から行われた研究によると、総トレーニング回数が同じでも、実施タイミングによって効果が変わることも示されています。
例えば、1日2回のトレーニングは1日1回のそれに比べると、筋グリコーゲンが少ない状態でのトレーニングを強いられ、脂質代謝を高める可能性があります。

今回紹介する論文では、合計のHIITの回数は同じものの、1日2回を1週間で実施するグループ(Double HIIT)と1日1回を2週間かけて実施するグループ(Single HIIT)での効果を比較検証しています。

論文概要

出典

Atakan, M. M., Güzel, Y., Bulut, S., Koşar, Ş. N., McConell, G. K., & Turnagöl, H. H. (2021). Six high-intensity interval training sessions over 5 days increases maximal oxygen uptake, endurance capacity, and sub-maximal exercise fat oxidation as much as 6 high-intensity interval training sessions over 2 weeks. Journal of sport and health science, 10(4), 478–487. https://doi.org/10.1016/j.jshs.2020.06.008

方法
20-30歳で健康的だが持久系・スプリント系・レジスタンス系のトレーニングを行っていない28名の男性を対象
対象者はランダムにDouble HIITとSingle HIITに割り当て

実験は、慣れ施行(familiarization procedure)、プレテスト、6回のHIITセッション、ポストテストで構成
運動様式は自転車エルゴメーター

慣れ施行はプレテストの2週間前までに実施し、最大酸素摂取量(VO2max)テスト、Time to exhaustion (TTE)テスト、HIITセッションへの慣れが含まれた

テストは、VO2maxテスト、最大下運動テスト(1時間@プレテストの約67%VO2max)、TTEテスト(プレテストの約80%VO2max)で構成
各テストは最低48時間の間隔をあけて実施

HIITは事前に下記3つのプロトコルを12名に行わせ、3時間以内に2回実施できるプロトコルを判断
・オールアウト形式のウインゲートテスト
・10×4分@85-90%VO2max
・10×60秒@100%VO2max-75秒@60W
検討した結果、「10×60秒@100%VO2max-75秒@60W」が最も相応しいと判断され、そのプロトコルでトレーニングを実施

Double HIITは、月・水・金にそれぞれ2回実施
1回目と2回目の間は3時間とし、最初の1時間で10kcal/kgの食事を摂取(糖質:58%、脂質:27%、タンパク質:15%)

Single HIIITは月・水・金にそれぞれ1回、2週間実施

結果
※数値は平均値

両群のプレテストのVO2max、ピークパワーに群間差なし

VO2maxは両群で増加
Single HIIT:6.1%
Double HIIT:7.7%

ピークパワーは両群で増加
Single HIIT:13.4%
Double HIIT:10.4%

最大下運動テストの生理学的適応(%VO2maxの低下、呼吸交換比の低下、換気量の低下)は両群で観察、ただし総脂質酸化量はDouble HIITのみ増加

TTEは両群で増加
Single HIIT:79.2%
Double HIIT:80.1%

解説

この論文は、1日1回のHIITを週3回、2週間実施するトレーニング(Single HIIT)と1日2回のHIITを週3回、1週間実施するトレーニング(Double HIIT)の有酸素性の生理学的適応はほぼ同じことを示しています。
なお、論文の結論では、最大下強度の脂質代謝亢進がDouble HIITで優れていたことを強調していましたが、15分ごとの糖質・脂質酸化の経時変化は両群で統計学的有意差が認められていたため、最大下強度の適応はSingle HIITでも得られています。

VO2maxの増加を報告したトレーニング実験は沢山あるものの、トレーニング期間が1週間のものはあまりないように記憶しています。
論文の著者らは、先行研究の結果を踏まえた上で、短期間のHIITによるVO2max向上は最大心拍出量の増加ではなく、骨格筋ミトコンドリアの適応や赤血球量の増加などのメカニズムが関与している可能性を指摘していました。

健康目的の場合、1日2回も辛い想いをしてまで、1週間で体力を高めないといけない場面はあまりないような気がしますが、面白い論文ではあります。

まとめ

3時間の休息で1日2回HIITをすると1週間でトレーニング効果が得られる