週2回vs週4回、筋トレの頻度がトレーニング効果に与える影響

2021年11月23日

はじめに

当サイトではこれまでに、レジスタンストレーニング(筋トレ)の効果を左右する各種変数の振る舞いについて解説してきました。
このテーマは、多くの変数が存在する上、対象者の特徴によっても結果が変わるため、未だに一つひとつの変数や対象者の特徴が異なる論文が世に出続けています。

以前、今回と似たテーマを取り上げています。


その論文では、筋トレ経験を有する男性トレーニーを対象として、週2回と週4回の筋トレが最大筋力に及ぼす影響を検証した結果、最大筋力は同じぐらい発達したことが示されました。
ただし、トレーニングの実施頻度は両群とも週4回であり、一方は分割法(スプリットルーティン)、もう一方は全身法(フルボディルーティン)で実施していました。
つまり、両群ともにトレーニング自体は週4回実施していましたが、各筋群のトレーニング頻度が異なる実験デザインでした。

今回はフルボディルーティンを採用した場合のトレーニング頻度の違いが最大筋力、筋肥大、筋持久力、筋パワーに及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Arazi, H., Asadi, A., Gentil, P., Ramírez-Campillo, R., Jahangiri, P., Ghorbani, A., Hackney, A. C., & Zouhal, H. (2021). Effects of different resistance training frequencies on body composition and muscular performance adaptations in men. PeerJ, 9, e10537. https://doi.org/10.7717/peerj.10537

方法
2年以上の筋トレ経験を有する若年男性トレーニー35名を下記の3群にランダムに分類
・週2回群(12名)
・週4回群(13名)
・コントロール群(10名)

トレーニング実験の詳細は下記のとおり
期間:
12週間
ただしトレーニング期間は8週間、残りは慣れ期間、プレ・ミッド・ポスト測定期間

種目:
ルーティン1→レッグプレス、ライイングレッグカール、ラットプルダウン、ベンチプレス、ラテラルレイズ、マシンバイセップスカール、マシントライセラトップスエクステンション

ルーティン2→レッグエクステンション、デッドリフト、ラットプルダウン、インクラインベンチプレス、ミリタリープレス、アームカール、ライイングトライセラトップスエクステンション

セット数:
週2回群は各ルーティンを4セット(10回、10回、8回、8回)週1回実施
週4回群は各ルーティンを2セット(10回、8回)週2回実施

強度:
70-80%1RM(最大挙上重量)

休息時間:
60-90秒(セット内)、2-3分(セット間)

プレ・ミッド・ポスト測定の項目は下記のとおり
・形態
→身長、体重、周径囲(胸、大腿、上腕)

・最大筋力
→レッグプレス・ベンチプレス・バーベルアームカールの1RM

・筋持久力
→ベンチプレス・レッグプレスの60%1RMの反復回数

・筋パワー
→垂直跳び・メディスンボール投げの距離

食事:
三大栄養素の割合(タンパク質:25%、脂質:25%、糖質:50%)を維持するように指示した上、栄養の専門家がトレーニング期間中毎週サポート
プレ、ミッドで評価されたエネルギー摂取量、三大栄養素の摂取量は群間で大きな差なし

結果

主に週2回群と週4回群のプレ・ポスト測定の結果を記載
群間差は週2回群と週4回群の比較

・総トレーニング量(セット数×反復回数×重量)はミッド・ポストで群間差なし

周径囲
・胸、大腿は週2回群と週4回群で増加、群間差なし
・上腕は変化なし

最大筋力
・ベンチプレス・バーベルアームカールは週2回群と週4回群で増加、週4回群の増加が顕著
・レッグプレスは週2回群と週4回群で増加、群間差なし

筋持久力
・レッグプレスは週2回群と週4回群で増加、群間差なし
・ベンチプレスは週4回群で増加、群間差なし

筋パワー
・垂直跳び、メディスンボール投げは週2回群と週4回群で増加、群間差なし

解説

この論文は全身法のトレーニング頻度の影響を検証しています。
その結果、トレーニング頻度の影響が著しい指標は、ベンチプレスとアームカールの最大筋力であり、高頻度(週4回)で顕著な増加が認められました

高頻度のトレーニングによって最大筋力が顕著に増加する理由は、運動学習が促進され、神経筋系の適応がより進んだことが考えられます。
以前紹介した論文でも、分割法(各筋群のトレーニングは週1回)よりも全身法(各筋群のトレーニングは週4回)の方が等速性(25cm/s)ベンチプレスの最大筋力の増加が顕著でした。

一方、筋肥大(周径囲)、筋持久力、筋パワーは、頻度の違いを認めませんでした。
このうち筋肥大については、「総負荷量が同等であれば、得られる効果は変わらない」という最近広まっている説を支持するものです。

まとめ

全身法を採用する場合、最大筋力を効果的に向上させるには1日のセット数を減らしトレーニング頻度を高めた方が良い