近所に歩道が多いと認知症のリスクを下げられるかもしれない

はじめに

以前、近所に歩道が多い高齢者は座りがちな行動(Sedentary Behavior)が少ない傾向にあるというエビデンスを紹介しました。


Sedentary Behaviorは身体活動量の低下とも関係している場合があり、過体重・肥満者では座りがちな時間が多いことも言われています。
また超高齢化社会を迎える今日の大きな社会問題にもなっている認知症についても、身体活動量の低下が関係することも指摘されています。

例えば71-93歳の男性高齢者を対象とした研究によると、毎日よく歩く人の認知症の発症率は、あまり歩かない人に比べておおよそ半分でした。
(引用:Abbott, R. D., White, L. R., Ross, G. W., Masaki, K. H., Curb, J. D., & Petrovitch, H. (2004). Walking and dementia in physically capable elderly men. JAMA, 292(12), 1447–1453. https://doi.org/10.1001/jama.292.12.1447

今回は日本人高齢者を対象とした最新のコホート研究をもとに、近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Tani, Y., Hanazato, M., Fujiwara, T., Suzuki, N., & Kondo, K. (2021). Neighborhood sidewalk environment and incidence of dementia in older Japanese adults: the Japan Gerontological Evaluation Study cohort. American journal of epidemiology, kwab043. Advance online publication. https://doi.org/10.1093/aje/kwab043

方法
2010年に実施された日本老年学的評価研究調査の参加者(65歳以上の高齢者)を対象
対象者のうち、約3年間にわたり追跡でき近隣の歩道面積データやアンケートの欠損などがなかった76,053人を分析対象

認知症の定義は、「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上(日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる)

近隣の歩道面積は、各対象者の居住地の小学校区域内の全道路面積に占める歩道面積割合を算出
対象者は歩道面積をもとに4群に分類

近隣の歩道面積と認知症の発症リスクとの関係を交絡因子(年齢、性別、教育歴、経済状況、婚姻状況、就労状態、健康度、居住期間、身体活動レベル、外出時の車利用の有無、その他の近隣環境)の影響を調整した上で分析
また各対象者の居住地を都会・田舎に分類した上でも分析

結果
・歩道面積をもとに4群に分けた結果、多い順に9554人(21.2%)、11847人(15.4%)、22661人(11.9%)、31991人(6.6%)に分類
※()の数値は歩道面積割合のパーセンテージ

・交絡因子調整後のハザード比(95%信頼区間)は下記のとおり
・歩道面積が最も少ない群:1.0
・歩道面積が2番目に少ない群:0.81(0.68-0.96)
・歩道面積が2番目に多い群:0.78(0.62.0.98)
・歩道面積が最も多い群:0.73(0.58-0.92)

・「都会」「田舎」別の分析結果では、歩道面積と認知症発症リスクとの有意な関係は「都会」でのみ観察された

解説

先進国の中でも、日本は歩道環境が整っていない(歩道の数や面積が少ない)国として知られています。
特に車や自転車の交通量が多い都会では、歩道の欠如が道幅が短い場合、安全面への懸念から歩くことへの敷居が高くなると考えられています。

この論文は、交絡因子の影響を考慮しても、歩道面積は認知症発症リスクと密接に関係があることを示しています。
※ハザード比の解釈については下記の関連記事を参照

また都市度別にみた分析した結果をみると、歩道面積と認知症発症リスクとの有意な関係は都会でのみ観察されました。
この原因について論文の著者らは、田舎では交通量が少ないため、歩道がなくても安全面への懸念が少ない可能性や、車の保有率が高く、車を使わずに外出する機会が少ないことが影響した可能性を指摘しています。

住環境は数年・数十年単位でみれば都道府県や市区町村の政策によって変化する可能性がありますが、短期的には大きな変化は期待できません。
したがって引っ越しを考えている場合、将来の健康への投資として、居住地を選ぶ際の参考材料として歩道を考慮することは大切だと言えます。

まとめ

歩道面積は認知症発症リスクと関係する