強度なのか?量なのか?頻度なのか?全身持久力を高めるトレーニング効果の個人差

2022年1月19日

はじめに

全身持久力の代表的な指標である最大酸素摂取量。
最大酸素摂取量が高い人と低い人を比べると、低い人で死亡率が高くなることが分かっています。
また、全身持久力が高い人は日々の身体活動も活発的であることが多いです。
十分な身体活動量の確保は糖尿病や動脈硬化を予防するため、最大酸素摂取量が高い人は生活習慣病にもなりづらい可能性があります。
全身持久力を高めるためには、ランニングやサイクリングといった有酸素トレーニングの実施が合理的なアプローチです。
このとき、トレーニングの強度(スピード)、量(時間)、頻度(週当たりの実施回数)といった変数によってトレーニング効果が異なります
では、どの刺激を高めたときにトレーニング効果が増すのでしょうか?
今回は、レクリエーショナルランナーを対象として、3つのトレーニング戦略の効果を比較した研究を紹介します。

論文概要

出典

Düking, P., Holmberg, H. C., Kunz, P., Leppich, R., & Sperlich, B. (2020). Intra-individual physiological response of recreational runners to different training mesocycles: a randomized cross-over study. European journal of applied physiology, 120(12), 2705–2713. https://doi.org/10.1007/s00421-020-04477-4

方法
13名のレクリエーショナルランナーを対象
(実験開始当初は32名、最終的には13名)
被験者はランダムに下記の3つのトレーニング戦略を実施した
・高強度インターバルトレーニング(High intensity interval training: HIIT群):強度を高めたトレーニング
・高量低強度トレーニング(High-volume low-intensity training: HVLIT群):低強度で1回当たりの量を増やしたトレーニング
・高頻度トレーニング(High-frequency training: HFT群):低強度で週当たりのトレーニング回数を増やしたトレーニング
トレーニング期間は各3週間
トレーニング期間の前後にトレッドミルで体力テストを実施
前のトレーニングの影響を排除するため、各トレーニング間には2週間のウォッシュアウト期間を設定
結果
・最高酸素摂取量(最大酸素摂取量と同義)はHVLIT群・HIFT群で増加したが、HIIT群では変わらなかった
・トレーニング期間後に総合的に体力が下がった人の割合はHVLIT群(7.6%)に比べHIIT群(15.4%)・HFT群(15.4%)で多かった
・トレーニング期間後に総合的に体力が著しく上がった人の割合はHFT群(23%)・HIIT群(7.7%)に比べて、HVLIT群(38.5%)で多かった
・23%のランナーは、どのトレーニング戦略でも効果がなかった

解説

この論文は、強度・量・頻度のいずれかを高めたトレーニングを比較検証した結果、全身持久力への効果には個人差があり、どのアプローチが最も優れるとは一概に断定できないことを示しています。
一般に、全身持久力を高める最重要刺激は強度だと考えられています。
しかし、この論文では、低強度高量のトレーニングを実施した場合に最もポジティブな効果が得られていました。
むしろ、高強度トレーニングは、最高酸素摂取量が向上しなかったことや、総合的な体力が下がった人が多かったことから、イマイチな結果でした。
少なくともレクリエーショナルレベルな人の場合、無理に息の上がるトレーニングをしなくても、ゆっくりでも運動時間を徐々に伸ばすことで良い効果が期待できるのかもしれません。

まとめ

全身持久力を高めるトレーニング効果には大きな個人差があり、万人に共通するアプローチは存在しない