強度なのか?量なのか?頻度なのか?全身持久力を高めるトレーニング効果の個人差

2021年1月9日

はじめに

全身持久力の代表的な指標である最大酸素摂取量。
最大酸素摂取量が高い人と低い人を比べると、低い人で死亡率が高くなることが分かっています。
また、全身持久力が高い人は日々の身体活動も活発的であることが多いです。
十分な身体活動量の確保は糖尿病や動脈硬化を予防するため、最大酸素摂取量が高い人は生活習慣病にもなりづらい可能性があります。

全身持久力を高めるためには、通常ランニングやサイクリングといった有酸素性トレーニングを行います。
このとき、トレーニングの強度(スピード)、量(時間)、頻度(週当たりの実施回数)といった変数(刺激)によっても得られる効果が異なります
では、どの刺激を高めたときにトレーニング効果が増すのでしょうか?

今回は、レクリエーショナルランナーを対象として、異なる3つのトレーニング戦略の効果を比較した研究をみていきます

論文概要

出典
Düking, P., Holmberg, H. C., Kunz, P., Leppich, R., & Sperlich, B. (2020). Intra-individual physiological response of recreational runners to different training mesocycles: a randomized cross-over study. European journal of applied physiology, 120(12), 2705–2713. https://doi.org/10.1007/s00421-020-04477-4

方法
13名のレクリエーショナルランナーを対象とした
(実験開始当初は32名であったが、最終的には13名となった)

被験者はランダムに下記の3つのトレーニング戦略を実施した
・高強度インターバルトレーニング(High intensity interval training: HIIT群):強度を高めたトレーニング
・高量低強度トレーニング(High-volume low-intensity training: HVLIT群):低強度で1回当たりの量を増やしたトレーニング
・高頻度トレーニング(High-frequency training: HFT群):低強度で週当たりのトレーニング回数を増やしたトレーニング

各トレーニングの期間は3週間
トレーニング期間の前後にトレッドミルで体力テストを実施した
前のトレーニングの影響を排除するため、各トレーニングの間には2週間のウォッシュアウト期間を設けた

結果
・最高酸素摂取量(最大酸素摂取量と同義)はHVLIT群・HIFT群で増加したが、HIIT群では変わらなかった
・トレーニング期間後に総合的に体力が下がった人の割合はHVLIT群(7.6%)に比べHIIT群(15.4%)・HFT群(15.4%)で多かった
・トレーニング期間後に総合的に体力が著しく上がった人の割合はHFT群(23%)・HIIT群(7.7%)に比べて、HVLIT群(38.5%)で多かった
・23%のランナーは、どのトレーニング戦略でも効果がなかった

解説

この論文は、強度・量・頻度のいずれかを高めたトレーニング戦略を比較した結果、全身持久力への効果には大きな個人差があり、どのアプローチが最も優れるとは一概に断定できないことを示しています。

これまでの研究によると、一般的に全身持久力を高める最も重要な刺激は強度だと考えられていました。
しかし、この論文では、低強度で高量のトレーニングを実施した場合に最もポジティブな効果が得られていました。
むしろ、高強度のトレーニング戦略は、最高酸素摂取量が向上しなかったことや、総合的な体力が下がった人が多かったことから、どちらかというとイマイチな結果でした。

少なくともレクリエーショナルレベル(対象者の最高酸素摂取量は約45ml/kg/min。全身持久力に優れる人が60ml/kg/min以上を超えることを踏まえると低い)な人の場合、無理に息の上がるトレーニングをしなくても、ゆっくりでも運動時間を徐々に伸ばすことで良い効果が期待できるのかもしれません。

まとめ

全身持久力を高めるトレーニングの効果には大きな個人差があり、全ての人に共通する望ましいアプローチは存在しない