ランニングは程々にした方が死亡リスクは減らせる

はじめに

以前、アメリカで行われた歩数と全死亡率との関係を検証したコホート研究を紹介しました。

その研究によると、共変量を考慮した上で、7,000歩/日未満のグループに比べると、7,000歩/日以上のグループでは、全死亡率が低いことが明らかになっています。
一方で、たとえ10,000歩/日を超えたとしても、10,000歩/日に比べても、全死亡率がさらに軽減する傾向はありませんでした。
つまり、全死亡率からみた場合、歩数は10,000歩/日で十分ということです。
とは言っても、より多くの歩数を歩いたからといっても、歩数が7,000歩/日未満に比べて全死亡率が高くなるといった傾向は観察されませんでした。

今回紹介する論文では、歩数ではなくジョギングに着目し、ジョギングの程度(量、頻度、強度)と全死亡率との関連を検証した結果、ジョギングの効果は程度によって大きく異なることを報告しています。

論文概要

出典

Schnohr, P., O’Keefe, J. H., Marott, J. L., Lange, P., & Jensen, G. B. (2015). Dose of jogging and long-term mortality: the Copenhagen City Heart Study. Journal of the American College of Cardiology, 65(5), 411–419. https://doi.org/10.1016/j.jacc.2014.11.023

方法
1976年に始まったコペンハーゲン市心臓研究の一環
2001-2003年の4次試験のデータを利用
冠動脈疾患、脳卒中、癌の既往歴がある者を除外した5,048人(ジョガー1,098人、非ジョガー3,950人)を分析
エンドポイントは2013年で追跡期間は12年

ジョギングの量、頻度、強度ごとに分析
また、量、頻度、強度を踏まえて下記のとおりLight層、Moderate層、Strenuous層にグループ分けを実施

ジョギングペース
Slow Average Fast
<2.5h/週 2.5-4h/週 >4h/週 <2.5h/週 2.5-4h/週 >4h/週 <2.5h/週 2.5-4h/週 >4h/週
頻度
≦3回/週 Light Moderate Moderate Light Moderate Moderate Moderate Moderate Strenuous
>3回/週 Moderate Moderate Moderate Moderate Moderate Moderate Moderate Strenuous Strenuous

※ジョギングのペースは各自の主観に基づき評価

身体活動に関するアンケート結果で座りがちなグループ(ウォーキングやサイクリングなどの軽運動を週に2時間未満しか実施しておらず、余暇時間の多くを読者やテレビ・映画鑑賞などに費やしている人たち)との全死亡率を年齢、性別、喫煙状況、飲酒状況、教育歴、糖尿病を考慮した上で比較

結果
ジョガー計1098人(Light層:576人、Moderate層:262人、Strenuous層:40人)
座りがちなグループ413人

ジョガーの平均ジョギング年数10.1年

■量からみた場合
1-2.4時間/週で死亡率が低い(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.29、0.11-0.80)
2.5-4時間/週は有意差なし

■頻度からみた場合
2-3回/週(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.32、0.15-0.69)と1回/週以下(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.29、0.12-0.72)で死亡率が低い
3回/週以上は有意差なし

■強度からみた場合
Slow(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.51、0.24-1.10)、Average(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.38、0.22-0.66)で死亡率が低い
※ただし、スローは統計学的に有意でない
Fastは有意差なし

■量、頻度、強度を考慮したグループでみた場合
Light層(多変量ハザード比と95%信頼区間:0.22、0.10-0.47)で死亡率が低い
Moderate層とStrenuous層は有意差なし

また、Light層と比較すると、Moderate層(多変量ハザード比と95%信頼区間:3.06、1.11-8.45)、Strenuous層(多変量ハザード比と95%信頼区間:9.08、1.87-44.01)で死亡率が高い

解説

この論文は、1098人のジョガーと413人の座りがちな人を12年間追跡することで、ジョギングの程度が全死亡率に及ぼす影響を検証しました。
その結果、ジョギングの効果はジョギングの量、頻度、強度によって大きく異なりLight層・Moderate層では死亡リスクが軽減した一方、高負荷なジョギングを行っているStrenuous層では死亡リスクは軽減していませんでした。
また、Light層と比較すると、Moderate層、Strenuous層の全死亡率が高まっていました。

論文の著者らによると、スローな強度だとしても、身体活動レベル的には激しい運動(6メッツ)に相当するため、心血管系の健康度を高めるには十分な刺激になると述べています。
また、得られた結果に基づき、ジョギングと全死亡率との関係は、U字型の関係があり、LightやModerateなジョギングは座りがちな生活に比べると、全死亡率を下げるが、Strenuousなジョギングでは座りがちな生活と変わらないとも述べています。

この論文は、コホート研究の中ではサンプルサイズが比較的小さいため、結果の解釈には注意を要しますが、「何事もほどほどに」が真実であることを裏付けるデータです。

まとめ

ジョギングが全死亡率に及ぼす影響は程度による