ナチュラルボディービルダーがケトジェニックダイエットをした場合の身体組成、筋力、血液マーカーへの影響

はじめに

ケトジェニックダイエットとは、炭水化物の摂取を極度に制限し(1日20~30g未満または総摂取エネルギーの5%未満)、その代わりに脂肪を多く摂取する食事方法のことです。
また、タンパク質については通常通りの摂取量をキープします。

細かいメカニズムはさておき、ケトジェニックダイエットを続けると体内に蓄積される糖質量が少なくなり、糖質ではなく、脂肪から多くのエネルギーを生み出すようになります。
元々、ケトジェニックダイエットは、てんかんの治療を目的として米国の医師が開発した食事方法ですが、近年では肥満者への減量やアスリートのパフォーマンス向上の有効性に関する検証や実践がされています。

今回は、男性ボディービルダーを対象として、ケトジェニックダイエットが身体組成、筋力、脂質代謝、アナボリックホルモン、炎症性マーカーに及ぼす影響を検証した論文を紹介します。

論文概要

出典
Paoli A, Cenci L, Pompei P, Sahin N, Bianco A, Neri M, Caprio M, Moro T. Effects of Two Months of Very Low Carbohydrate Ketogenic Diet on Body Composition, Muscle Strength, Muscle Area, and Blood Parameters in Competitive Natural Body Builders. Nutrients. 2021 Jan 26;13(2):374. doi: 10.3390/nu13020374. PMID: 33530512.

方法
19名の男性ボディービルダー(年齢:27歳、BMI26.8、除脂肪率:88.6%)をランダムに下記の2群に分類
ケトジェニックダイエット(KD)
→PFC比が25:5:68(216g、264g、44g)
通常の西洋風の食事(WD)
→PFC比が25:20:55(223g、79g、488g)
すなわち、タンパク質の摂取量は両群ともに体重1kg当たり2.5gを維持し、KDはそれ以外のエネルギー多くの脂質から摂取

実験期間は2ヶ月として、その前後に下記の検査・測定を実施
・血液検査
・身体組成(バイオインピーダンス法)
・安静時代謝・安静時呼吸商
・ベンチプレス・スクワットの1RM挙上重量(最大筋力)

実験期間中、対象者には自身のトレーニングルーティンを維持するように指示
実験期間中はコンテスト期には該当せず、主なトレーニング目的は最大筋力と筋肉量の増加

結果
・身体組成
体重:両群ともに変化なし
体脂肪量:KDで低下
除脂肪体重:WDで増加(時間×群の交互作用あり)

・最大筋力
両群ともに増加

・安静時代謝、安静時呼吸商
安静時代謝:WDのみ増加
安静時呼吸商:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)

・血液検査
総コレステロール:KDのみ低下
HDL:KDのみ増加(時間×群の交互作用あり)
LDL:変化なし
トリグリセリド:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)

血糖値:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)
インスリン:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)

AST:変化なし
ALT:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)

総テストステロン:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)
IGF-1:KDのみ低下(時間×群の交互作用あり)

IL-1:変化なし
IL-6:KDで低下傾向、WDで増加傾向(時間×群の交互作用あり)
TNF-α:KDで低下(時間×群の交互作用あり)
BDNF:KDのみ増加(時間×群の交互作用あり)

解説

これまでのアスリートを対象としたケトジェニックダイエットの有効性を検証した論文の多くは、持久性スポーツに取り組む人を対象としていました。
この論文では、ボディービルダーを対象としてケトジェニックダイエットの効果を検証した結果、体脂肪の減少に有効なことが示されました。
また、ケトジェニックダイエットを実施した人たちの血液中のアナボリックホルモン(総テストステロン、IGF-1)の濃度は減少していましたが、除脂肪量(≒筋肉量)は維持されていました。
さらに、脂質代謝(総コレステロール、HDL、トリグリセリド)、糖代謝(血糖値、インスリン)、炎症性マーカー、BDNF(脳由来神経栄養因子、うつ病と関係する)といった血液指標の変化は、西洋風の食事をとったグループと比べてケトジェニックダイエットを実施した人たちで好ましい変化が起きました
一方、除脂肪体重は通常の糖質量が含まれる西洋風の食事を摂ったグループで向上したため、筋肉量増加(バルクアップ)には有効とは言えない結果でした。

西洋風の食事を摂ったグループと比べて摂取カロリーには大きな差がないのにも関わらず、ケトジェニックダイエットを実施した人たちで体脂肪が減少した理由については、普段の脂質代謝が高まったことが貢献した可能性が考えられます。
実際、糖質と脂質の利用割合を示す安静時呼吸商をみると、ケトジェニックダイエットを実施した人たちでは2ヶ月後に脂質代謝が亢進していました。

まだまだ絶対的な研究数が少ないために、レジスタンストレーニング実施期間中のケトジェニックダイエットの有効性については断定的なことは言えないのが実際のところですが、この論文からみる限り、筋肉量アップよりも体脂肪の減少を狙いたい場合、試してみる価値はあると思います。

しかし、日本食には糖質が多いため、日本人がこの論文のように厳格なケトジェニックダイエットを実施するには相当食事に気を配る必要がある上、人によっては慣れるまでにイライラやきつさを感じやすく、トレーニングや日常生活に支障をきたす可能性もあります。
したがって、そのようなデメリットがあることを理解した上で、厳格なケトジェニックダイエットを実施できる環境や強い意志を持つ人が取り組めるアプローチに違いありません。

 

まとめ

ボディービルダーはケトジェニックダイエットを取り入れることで体脂肪が効果的に減少する可能性がある