5000m競走のパフォーマンスとピッチ・ストライド

はじめに

ランニングの走行速度は、ステップ頻度(いわゆるピッチ)とステップ長(いわゆるストライド)を掛け合わすことで表せます。
そのため、全ての走競技に共通して、ピッチが多く、ストライドが大きい選手ほど優れた記録となります。
また、どの種目でも、レース中のピッチ・ストライドは常に一定ではなく、内的・外的要因によって変化しています。

今回紹介する論文では、日本体育大学長距離競技会の5000m競走に出場した男性ランナーを対象として、ステップ変数とタイムとの関係を検証しています。

論文概要

出典

Ueno, H., Nakazawa, S., Takeuchi, Y., & Sugita, M. (2021). Relationship between Step Characteristics and Race Performance during 5000-m Race. Sports (Basel, Switzerland), 9(9), 131. https://doi.org/10.3390/sports9090131

方法
男性長距離ランナー21名を対象
(平均年齢:19.9歳、平均身長:171.2cm、平均体重:57.3cm)

2019年に開催された日本体育大学長距離競技会の2大会が分析対象
ホームストレートに高速ビデオカメラを設置し撮影
2週目から13週目(最終ラップ)を対象として、各2周期(4つの連続した接地)のデータをもとに接地時間(CT)、滞空時間(FT)、ステップ頻度(SF)、ステップ長(SL)、走行速度を算出
データは2-12週目(全体)、前半(2-7周目)、後半(8-12周目)、ラスト(13周目)に加え、前後半の変化率を分析

結果
※数値は平均値
■5000m競走のパフォーマンス
14分52秒(範囲:13分54秒-15分49秒)
走行速度は2周目に比べ10、11、12周目で低く、13周目で高い

■ステップ変数
SF:全体で3.16Hz(189.6ステップ/分)
SL:全体で1.79m
SFは2周目に比べ7、8、9、10、11、12周目で少なく、13周目で多い
SLは2周目に比べ13周目で長い

■ステップ変数とパフォーマンスとの関係
全体のSF(r = -0.611)・身長で規格化したSL(r = -0.575)と5000m競走タイムとの間に有意な相関
CT(r = 0.514)とSL(r = -0.486)の変化率と5000m競走タイムとの間に有意な相関

解説

この論文は、長距離ランナーを対象として、5000m競走のステップ変数とパフォーマンスとの関係を検証しています。
こういった実際のレースデータは、アスリートにポジティブな行動変容を起こしやすい貴重な資料です。

得られた結果は、前半から後半にかけてステップ長(いわゆるストライド)の減少が小さいと優れたパフォーマンスに繋がる可能性を示唆しています。
また、前半から後半にかけての接地時間の増加を抑えることも優れたパフォーマンスに貢献する可能性も示唆しています。

有酸素エネルギー的にほぼ最大強度で約15分間走り続ける5000m競走では、疲労に伴い下肢筋群の力発揮が徐々に低下することは想像にたやすく、その状況下でも接地時間を保てることが、ストライドの維持や優れたパフォーマンスに貢献すると考えられます。
ただし、レース中にストライドの維持を意識しても、上手くいくことはあまりなく(あるいはストライドを維持できたとしても、ピッチが落ちる)、これらは普段のトレーニングでの取り組みで改善を図る必要があると思います。

まとめ

5000m競走のタイムに優れるランナーは、レース後半でもストライドを維持している