プランク・サイドプランクの耐久時間とオーバーユース症候群との関連

はじめに

プランク、サイドプランク、ブリッジといった俗に言う体幹トレーニング(コアトレーニング)をアスリートのトレーニングメニューに組み込む際の動機付けとして、オーバーユース症候群(使いすぎ障害)の予防に貢献することを挙げる指導者やスタッフがいます。
しかし、オーバーユース症候群の発生機序は複雑で、動きのない状態で発揮された筋力・筋持久力が直接関係するのかは疑問があります。
実際、体幹トレーニング種目の耐久時間と傷害の既往歴との関連を検証した過去の研究を眺めてみても、結果は一致していません。

今回紹介する論文では、大学生アスリート(陸上競技・クロスカントリー)を対象として、プランク・サイドプランクの耐久時間と下肢のスポーツ傷害の発生状況との関連を検証しています。

論文概要

出典

Luedke, L. E., & Rauh, M. J. (2022). Plank Times and Lower Extremity Overuse Injury in Collegiate Track-and-Field and Cross Country Athletes. Sports (Basel, Switzerland), 10(3), 45. https://doi.org/10.3390/sports10030045

方法
全米大学体育協会(NCAA)3部に所属する大学生クロスカントリー・陸上競技選手75名(男性36名、女性39名)を対象

競技シーズンの開始時に年齢、体重、身長、過去の既往歴を調査
加えて体幹筋持久力テストを実施

■体幹筋持久力テストの実施内容
項目:Prone Plank(PP)、Right Side Plank(RSP)、Left Side Plank(LSP)
方法:
厚さ4mmのヨガマットで実施
種目間は1-2分の休息時間
PPは前腕とつま先で全身を支えながら、肩、腰、足首を一直線に保つように指示
RSP・LSPは下側の前腕と足で全身を支えながら、側屈することなく、脊柱がまっすぐになるように、また上側の足は下側の足の前に置くように維持
姿勢を保持できなくなったとき、あるいは骨盤が5cm以上上下に動いた時にテスト終了
各種目の最大継続時間は120秒(120秒出来た時点でテスト終了とし、120秒と評価)

スポーツ傷害の発生状況の調査方法は下記のとおり
競技シーズンを通して、学校のアスレティックトレーニングスタッフによって観察
1回以上連続して練習中止あるいは試合欠場した場合の腰・下肢の傷害を記録
急性外傷と慢性障害(オーバーユース症候群)に分類

結果
■対象者の特性
・29人が1年生、19人が2年生、9人が3年生、18人が4年生
・33人がランナー、27人がスプリンター、8人がスローワー、7人がジャンパー
・25人がシーズン中にオーバーユースを記録
(足・足首が8名、股関節・大腿が7名、下腿が6名、膝が4名)

■プランクのスコア
PP:90.7秒
RSP:75.4秒
LSP:74.7秒
※全体の平均値

3種目合計の秒数はランナーとそれ以外のグループとの間で有意差あり
ランナー:215.3秒、それ以外: 260.9秒
※平均値

■プランクのスコアとオーバーユースとの関連
各種目のスコア、3種目合計のスコアともにオーバーユースが起きた25名とそれ以外の48名との間に有意差なし

解説

この論文は、大学生アスリートを対象として、プランク、サイドプランクの耐久時間と下肢のオーバーユース症候群の発生状況との関連を検証しました。
その結果、これらの種目の耐久時間はオーバーユースの発生状況と有意な関連がありませんでした。

プランクを正しく実施するには主に体幹屈曲・回旋筋群の活動が必要となります。
サイドプランクを正しく実施するには、体幹屈曲・回旋筋群に加え、股関節外転・外旋筋群の活動が必要となります。

そして、これらの筋力不足は、スポーツ動作中のマルアライメント(理想的な骨・関節の配列から崩れた状態)を引き起こし、オーバーユース症候群(例:腸脛靱帯炎、膝蓋大腿関節痛、鵞足炎、腰痛)に繋がると言われています。

しかし、プランク・サイドプランクのような動きのない状態で発揮された筋持久力は、スポーツ動作中のマルアライメントと直接関係しない可能性があります。
また、そもそもオーバーユース症候群の発生機序は複雑で、ある一要因から説明を試みるアプローチ自体に問題がある気もします。

俗に言う体幹トレーニングは特別な道具を必要としないことから、比較的場所を問わずに実施できます。
しかし、競技練習もあるアスリートにとって効率的なトレーニングなのかと言うと、疑問が残ります。

まとめ

プランク・サイドプランクの耐久時間が長くても怪我をしないわけではない