【温故知新シリーズ9】体重階級制のアスリートは引退後に太りやすい

はじめに

競技スポーツの中には、体重階級制が採用されている種目があります。
そして体重階級制のスポーツをしているアスリートの中には、現役期間中に減量と増量を繰り返している者も多いです。

こういった体重の増減を英語では「Weight Cycling」と呼びます。

今回紹介する論文では、現役時代に体重階級制の競技に取り組んでいたエリートアスリートはその後に体重が増えやすいのか調べています。

論文概要

出典

Saarni, S. E., Rissanen, A., Sarna, S., Koskenvuo, M., & Kaprio, J. (2006). Weight cycling of athletes and subsequent weight gain in middleage. International journal of obesity (2005), 30(11), 1639–1644. https://doi.org/10.1038/sj.ijo.0803325

方法
1920年から1965年の間に、陸上競技、クロスカントリースキー、サッカー、アイスホッケー、バスケットボール、射撃、ボクシング、レスリング、ウエイトリフティングで、フィンランド代表として五輪や主要な国際大会に出場した経験を持つ男性を対象
対照群として、アスリートと同年代、同居住地域の男性をフィンランド国防軍の名簿から選出
競技前に減量が一般的に行われる体重階級制のアスリート(ボクシング、ウエイトリフティング、レスリング)をこの研究における「Weight Cyclers」と定義
すなわち、全対象者は、Weight Cyclers、Other Athletes、Controlsの3群に割り当て

1985年、1995年、2001年に身長、現在の体重、兵役時(20歳)の体重、人口統計学的情報、心理的特徴、喫煙とアルコール習慣の有無、身体活動、アスリートとしてのキャリアの中止、食習慣、病気などに関するアンケートを実施

結果
20歳のときのBMIに群間差なし

1985年と1995年の調査では、Weight Cyclersは他の2群よりも20歳からの体重が顕著に増加
1985年のデータ(平均値、95%信頼区間)
Weight Cyclers:15.1kg(13.3-17.0)
Other Athletes:9.6kg(8.5-10.6)
Controls:11.8kg(10.5-13.1)

肥満のオッズ比
Weight Cyclersはどの時点でもOther Athletesに比べて有意に高い
Weight Cyclersは1985年、1995年の時点でControlsに比べて有意に高い

生活習慣で調整しても、Weight Cyclersのオッズ比が高いことは不変

Weight Cyclers は、20歳からピーク時の体重(58.7歳)までの間にBMIが平均5.2増加
Other Athletesは、20歳からピーク時の体重(62.5歳)までの間にBMIが平均3.3増加
Controlsは、20歳からピーク時の体重(58.5歳)までの間にBMIが平均4.2増加

解説

この論文は、現役時代に体重の増減が大きいと考えられる競技を行っていたアスリートは、その後の体重増加が著しい傾向があったことを報告しています。

一般に、Weight Cyclingをすると、痩せにくくなる、太りやすくなると言われますが、それを支持する結果です。

この研究は、メカニズムを明らかにするものではありませんが、若い頃の選択が後の人生にどのような影響を与えるかを考える重要性を再確認させてくれます。
ときに競技スポーツの取り組みは、健康とは逆方向なものなりますが、長い人生をなるべく健康で送るためには、その影響を長期的な視点で考えることが大切と言えます。

まとめ

体重階級制のアスリートは引退後に太りやすい