サイクリストは筋トレを頑張っても、乗車時間を維持すれば体重増加の心配はない

はじめに

持久系アスリートが高強度の筋トレを避ける理由の一つとして、体重増加が挙げられます。
特にランニングを代表とする自分の体重を自ら運ぶ競技特性を持つアスリートでは、体重増加がパフォーマンスにマイナスの要因になり得るため、ストレングストレーニングにマイナスのイメージを持ちやすいです。

今回は、サイクリストを対象として、高強度の筋トレをしても、体重が増えなかったことを報告した論文を紹介します。
この研究では、対照群として、ストレングストレーニングのみを行ったグループがいるため、持久系トレーニングの影響を正確に捉えています。

論文概要

出典

Rønnestad, B. R., Hansen, E. A., & Raastad, T. (2012). High volume of endurance training impairs adaptations to 12 weeks of strength training in well-trained endurance athletes. European journal of applied physiology, 112(4), 1457–1466. https://doi.org/10.1007/s00421-011-2112-z

方法
下記の2群を対象
12名の持久系サイクリスト(実験群)
9名のレクリエーショナルにアクティブな人(対照群)
最終的なデータ分析対象者はそれぞれ11名と7名

実験期間は12週
実験群は平均9.9時間/週の持久系トレーニングを実施
対照群は最大でも週1回の持久系トレーニングのみ

■ストレングストレーニング
両群ともに下記のストレングストレーニングを実施
頻度:2回/週
種目:ハーフスクワット、ワンレッグレッグプレス、ワンレッグヒップフレクション、アンクルプランターフレクション
強度:4-10RM
セット数:3

■測定・評価
介入期間の前後に実施
・大腿の筋横断面積(CSA)
・スクワットジャンプの跳躍高
・等尺性ハーフスクワットのピークRFD
・スミスマシンを用いたハーフスクワットの1RM
・レッグプレスの1RM

その他、6週目に4日間の栄養調査を実施

結果
体重
対照群のみ増加

筋横断面積
両群ともに増加したものの、対照群の方が顕著

1RM
両群ともに増加したものの、対照群の方が顕著

スクワットジャンプの跳躍高
両群ともに増加したものの、対照群の方が顕著

ピークRFD
対照群のみ増加

エネルギー摂取量、三大栄養素の摂取量
群間差なし

解説

この論文は、週およそ10時間の持久系トレーニングを行っているアスリートが高強度のストレングストレーニングを実施した場合、ストレングストレーニングのみを実施している人たちに比べると、神経筋パフォーマンスの改善の程度が軽減することを明らかにしています。

その一方で、体重の増加は持久系トレーニングを並行して実施した群では認められませんでした。
論文の著者らは、両群のエネルギー消費量に差がなかったことから、ポジティブエネルギーバランス(摂取エネルギー>消費エネルギー)の欠如が筋肥大応答を減弱させたと考察しています。

実験群では、確かに神経筋パフォーマンスのトレーニング効果は減弱しているものの、ピークRFDを除いたいずれの指標も増加しています。
唯一、改善が認められなかったピークRFDについては、多量の持久系トレーニングによって神経系と筋系の両方の適応が妨げられたと考察しています。

まとめ

持久系アスリートが筋トレをしても摂取エネルギーが過度に増えなければ体重は増えない