Session RPE、心拍数、パワーをもとにしたトレーニング強度分析の違い

はじめに

以前、クロスカントリースキー選手たちを対象として、トレーニング強度の分析方法の違い
を調べた研究を紹介しました。

その研究では、生理学的な負荷(心拍数や血中乳酸濃度)をもとに、Time in Zone法、Session Goal法、両者の組み合わせ法によるトレーニング強度の配分を比較していました。
トレーニング強度の分析には生理学的な負荷をベースにしたもの以外にも、主観的な負荷(Session RPE)、物理的な負荷(自転車の場合はワット、ランニングの場合はスピード)をベースにした方法があります。

今回紹介する論文では、サイクリストを対象として、Session RPE、心拍数、パワーをもとに分析されたトレーニング強度の分析方法を比較しています。

論文概要

出典

Sanders, D., Myers, T., & Akubat, I. (2017). Training-Intensity Distribution in Road Cyclists: Objective Versus Subjective Measures. International journal of sports physiology and performance, 12(9), 1232–1237. https://doi.org/10.1123/ijspp.2016-0523

方法
全国もしくは国際レベルのロードサイクリスト15名を対象
10周間のトレーニングデータを収集

心拍数、パワーのトレーニング強度は、実験室での漸増負荷試験(100Wから4分ごとに40W漸増)の第一の乳酸性閾値(ベースラインから0.4mmol/L増加)、第二の乳酸性閾値(Dmax法)をもとに決定
ゾーン1(低強度):第一の乳酸性閾値以下
ゾーン2(中強度):第一の乳酸性閾値より高く、第二の乳酸性閾値未満
ゾーン3(高強度):第二の乳酸性閾値以上

セッションRPEはトレーニングセッションの終了30分後に「How hard was your workout」という問いに対して10段階で回答
ゾーン1は1-4、ゾーン2は5-6、ゾーン3は7-10

結果
■ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3の時間の割合
心拍数:86.8%、8.8%、4.4%
パワー:79.5%、9.0%、11.5%
Session RPE:44.9%、29.9%、25.2%

ゾーン1の時間は、Session RPEが他の2つに比べて非常に少ない
ゾーン2、3の時間は、Session RPEが他の2つに比べて非常に多い

心拍数とパワーで比べると、ゾーン1は心拍数が多く、ゾーン3はパワーが多い

解説

この論文は、Session RPEによって分析されたトレーニング強度の配分は、心拍数やパワーに基づいて分析されたものと比べると、大きく違うことを明らかにしています。

論文の著者らは、他の研究に比べると、その差が著しかったことを指摘した上で、その理由の一因として、ロードサイクリストという競技種目特性を挙げていました。
具体的には、ロードサイクリストは1回のセッションのトレーニング時間が長く、全体として低強度であっても、長時間ゆえに主観的には高強度と評価しやすいことや、セッション中に部分的に組み込まれる中・高強度のトレーニングによって主観的強度が高く評価されやすいといったことです。
もちろん他の競技種目であっても、そのようなことは起こり得ますが、セッションの時間が長ければ長いほど、トレーニング強度の配分の分析結果に与える影響は大きくなります。

また、心拍数とパワーの分析結果の差異については、生理学的なラグ(Physiological lag)が主な理由です。
パワーが高強度になるのは一瞬ですが、心拍数は少なからずの遅延が生じます。
また、パワーが短時間で高強度と低強度を繰り返すようなトレーニングの場合には、心拍数は常にゾーン1であり続ける可能性もあります。

いずれにしても、トレーニング強度の分析を比較する際には、どういった分析方法で行われているのかを確認することがマストです。
その確認作業なしで他者とのデータを比較したり、語り合ったりすることは無意味に近いでしょう。

 

まとめ

トレーニング強度の分析結果は方法によってやっぱり異なる