全身法と2分割法の筋トレ効果の違い

はじめに

当サイトはこれまでにレジスタンストレーニング(筋トレ)の効果を左右する様々な変数に着目した論文を紹介しました。

今回は頻度に着目します。
一般にトレーニング頻度は、週当たりのトレーニング回数と定義されます。
ただし、筋トレの場合、特定の筋群における週当たりのトレーニング回数を頻度とすることがあります。

筋トレのプログラムは全身法と分割法に大別できます。
全身法は毎回のセッションで全身を万遍なく鍛えるため、週当たりの特定の筋群のトレーニング頻度は高まります。
一方、分割法では各セッションで特定の部位に焦点を当てて鍛えるため、週当たりの特定の筋群のトレーニング頻度は落ちます。

以前、筋トレ経験が1年以上の男性トレーニーを対象として、全身法(上半身:下半身:週4回)と分割法(上半身:週2回、下半身:週2回)のトレーニング効果を比較した論文を紹介しました。


その論文では、筋肥大に関する指標を評価していないものの、最大筋力(スクワット、ベンチプレスの最大挙上重量)の増加は群間差がありませんでした。

また別の研究では筋トレ経験が3年以上の男性トレーニーを対象とした場合、最大筋力の増加は全身法、筋肥大は4分割法で優れる傾向がありました。

今回は、実験開始時点で筋トレ習慣がなかった若年男性を対象として、全身法と2分割法の効果を比較検証した論文を紹介します。

論文概要

出典

Evangelista, A. L., Braz, T. V., La Scala Teixeira, C. V., Rica, R. L., Alonso, A. C., Barbosa, W. A., Reis, V. M., Baker, J. S., Schoenfeld, B. J., Bocalini, D. S., & Greve, J. (2021). Split or full-body workout routine: which is best to increase muscle strength and hypertrophy?. Einstein (Sao Paulo, Brazil), 19, eAO5781. https://doi.org/10.31744/einstein_journal/2021AO5781

方法
過去6か月以上にわたり筋トレを実施していない若年男性86名を対象
対象者はランダムに下記の2群に割り当て
全身法グループ
分割法グループ
データ分析対象者数は全身法グループが32名、分割法グループが35名

トレーニング内容の詳細は下記のとおり
トレーニング期間:10週間

種目:
全身法グループは月・火・木・金に同種目(ベンチプレス、ケーブルトライセップスプッシュダウン、ショルダープレス、シーテッドロー、バイセップスカール、スクワット、レッグカール)を実施

分割法グループは月・木にプログラムA、火・金にプログラムBを実施
プログラムAはベンチプレス、インクラインベンチプレス、ケーブルトライセップスプッシュダウン、トライセラトップスキックバック、ショルダープレス、フロントダンベルレイズ
プログラムBはシーテッドロー、ラットプルダウン、バイセップスカール、ハンマーカール、スクワット、レッグカール

強度(%1RM)・反復回数:8-12RMの強度、主観的運動強度が9.5-10/10で実施

セット数:
各セッションでの筋群当たりのセット数は全身法グループが4セット、分割法グループが8セット(週当たり16セット)

トレーニング期間の前後に下記項目を測定
最大筋力:
スミスマシンを用いたスクワットの最大挙上重量(1RM)、ベンチプレスの1RM

筋厚:
超音波検査(Bモード)を用いて、上腕二頭筋、上腕三頭筋、外側広筋、大腿直筋を氷菓

結果
最大筋力
→スクワットの1RM(全身法グループ:89.8kg→115.4kg、分割法グループ:85.5kg→109.5kg)・ベンチプレスの1RM(全身法グループ:63.8kg→74.9kg、分割法グループ:56.4kg→67.4kg)は両群ともに増加、いずれも交互作用なし

筋厚
→上腕二頭筋(全身法グループ:31.6mm→35.1mm、分割法グループ:31mm→33.9mm)、上腕三頭筋(全身法グループ:23.9mm→27.4mm、分割法グループ:22.1mm→26.3mm)、大腿直筋(全身法グループ:17.9mm→20.1mm、分割法グループ:17.7mm→19.8mm)、外側広筋(全身法グループ:20.4mm→22.5mm、分割法グループ:19.1mm→21.5mm)は両群ともに増加、いずれも交互作用なし

解説

この論文は全身法と2分割法のトレーニング効果の違いを検証しています。
この論文の2分割法は、上半身と下半身という一般的な分け方ではなく、胸・肩・上腕三頭筋の日(プログラムA)と大腿前・大腿後・背中・上腕二頭筋の日(プログラムB)で分けています

その結果、最大筋力(1RM)の向上と筋肥大(筋厚)は両群で認められましたが、群×時間の交互作用はありませんでした。
つまり、両群の向上の度合いに差がありませんでした

前述した先行研究を振り返ると、全身法と4分割法を比較した研究とは多少異なる結果でした。
今回と結果が異なる理由としては、分割の程度(前述した先行研究は4分割)、対象者の特徴(前述した先行研究は、筋トレ経験が3年以上の男性トレーニー)が考えられます。
いずれにせよ、初心者は細かいことを気にしなくても総負荷量さえ意識しておけば、筋力も高められるし、筋肥大も引き起こせるに違いないでしょう。

まとめ

初心者トレーニーは総負荷量が均等であれば、全身法でも分割法でも同様のトレーニング効果が得られる