2分割法の頻度が筋肥大と筋力向上に与える影響

はじめに

当サイトでは、これまでにもレジスタンストレーニング(筋トレ)の効果(筋肥大、筋力向上)に影響する様々な変数の振る舞いについて解説してきました。

今回は、分割法(スプリットルーティン)に関する論文を扱います。

紹介する論文では、2分割法の筋トレプログラムの頻度の違い(各週2回・計週4回vs各週3回・計週6回)が筋肥大や最大筋力に与える影響を検証しています。

論文概要

出典

Brigatto, F. A., de Camargo, J. B. B., Machado, Y. B., Germano, M. D., Aoki, M. S., Braz, T. V., & Lopes, C. R. (2022). Does Split-Body Resistance Training Routine Performed Two Versus Three Days Per Week Induce Distinct Strength and Morphological Adaptations in Resistance-Trained Men? A Randomized Longitudinal Study. International Journal of Strength and Conditioning, 2(1).

方法
最大挙上重量(1RM)がパラレルバックスクワットで体重(kg)の1.25倍、ベンチプレスで体重の1倍以上の男性トレーニー20名を対象
対象者はベースラインの筋力をもとにランダムに下記2群に分類
・筋群当たり週2回群(G2x群、総トレーニング回数は週4回)
・筋群当たり週3回群(G3x群、総トレーニング回数は週6回)

トレーニング実験の詳細は下記のとおり
期間:11週間
ただしトレーニング期間は8週間、残りは慣れ期間・測定期間

種目・セット数:
■ルーティンA(胸、上腕三頭筋、大腿前)
ベンチプレス(G2x群:5セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、ダンベルフライ(G2x群:4セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、ケーブルトライセップス(G2x群:4セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、パラレルバックスクワット(G2x群:5セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、レッグエクステンション(G2x群:4セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)

■ルーティンB(背中、上腕二頭筋、大腿後)
ラットプルダウン(G2x群:5セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、ストレートアームプルダウン(G2x群:4セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、バイセプスカール(G2x群:4セット/セッション、G3x群:3セット/セッション)、シーテッドレッグカール(G2x群:9セット/セッション、G3x群:6セット/セッション)

強度:8-12RM

休息時間:60秒(セット内)、120秒(セット間)

測定項目は下記のとおり
最大筋力
→ベンチプレスとバックスクワットの1RM

筋厚
→上腕二頭筋、上腕三頭筋、外側広筋、大腿前部(超音波Aモード法)

食事
1・4・8週目で評価されたエネルギー摂取量、三大栄養素の摂取量は時間の主効果、時間×群の交互作用なし

結果
■最大筋力
時間による主効果あり、時間×群の交互作用なし
ベンチプレス、スクワットは両群増加

■筋厚
時間による主効果あり、時間×群の交互作用なし
上腕二頭筋、上腕三頭筋、外側広筋、大腿前部は両群増加

■総負荷量
群間差なし

解説

この論文は、頻度以外の変数(実施種目、種目の実施順序、休息時間)をコントロールした上で実験をしていることに研究の強みがあります。
得られた結果は、筋トレ経験を有する男性トレーニーを対象とした場合、スプリットルーティン(分割法)で構成された筋トレプログラムの頻度の違いは、8週間後の最大筋力や筋肥大の向上度合いに影響しないことを示しています。

ただし、効果量をもとに結果を比較すると、下図にあるとおり、G3x群で向上の度合いが優れる傾向にはありました。
(Brigatto, F. A., de Camargo, J. B. B., Machado, Y. B., Germano, M. D., Aoki, M. S., Braz, T. V., & Lopes, C. R. (2022). Does Split-Body Resistance Training Routine Performed Two Versus Three Days Per Week Induce Distinct Strength and Morphological Adaptations in Resistance-Trained Men? A Randomized Longitudinal Study. International Journal of Strength and Conditioning, 2(1).)

この理由は、8週間を通した総負荷量がG3x群で多い傾向(ただし有意差なし)にあったことが影響している可能性があります(下図の上段参照)。

(Brigatto, F. A., de Camargo, J. B. B., Machado, Y. B., Germano, M. D., Aoki, M. S., Braz, T. V., & Lopes, C. R. (2022). Does Split-Body Resistance Training Routine Performed Two Versus Three Days Per Week Induce Distinct Strength and Morphological Adaptations in Resistance-Trained Men? A Randomized Longitudinal Study. International Journal of Strength and Conditioning, 2(1).)

そもそも有意な交互作用がなかったため、効果量の比較にはさほど意味がありませんが、トレーニング期間がより長期の場合ではG3x群で優れた結果になる可能性はありそうです。

いずれにしても、「総負荷量が同等であれば、得られる効果は変わらない」という最近広まっている見解を支持する結果には違いなく、週の頻度というよりも、まずは総負荷量を確保するためのトレーニング計画を立案した方が効果を期待できると考えられます。

まとめ

総負荷量に差がなければ、スプリットルーティンの頻度は筋肥大や最大筋力の向上に影響しない