限界まで実施する筋トレは睡眠には影響しないが、次の日の最大筋力を低下させる

2021年4月28日

はじめに

オールアウト(一定のリズムで動作を完遂できなくなる)まで行うトレーニングのことを英語でTraining to failure と表します。
ボディビルやフィジーカーの世界では、Training to failure法はオールアウトに至る前にやめるTraining not to failure法と比べて筋肥大効果に優れると長年にわたり信じられていました。
しかし、最近の研究では、両者を比較した場合、最大筋力や筋肥大に対するトレーニング効果に差がないという見解が主流になってきました。

この原因としてTraining to failure法では、限界まで追い込むために過度な疲労を誘発し、次回以降のトレーニングで扱える重量や反復回数が低下する可能性があることや、長期的にみた場合にオーバーリーチング・オーバーリーチングに繋がりやすいことが影響していると言われています。

今回は、筋トレ経験豊富な男性アスリートを対象としてレジスタンストレーニング後における睡眠の質と翌日の最大筋力について、Training to failure法とTraining to not failure法を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典
Ramos-Campo, D. J., Martínez-Aranda, L. M., Caravaca, L. A., Ávila-Gandí, V., & Rubio-Arias, J. Á. (2021). Effects of resistance training intensity on sleep quality and strength recovery in trained men: a randomized cross-over study. Biology of Sport, 38(1): 81-88.

方法
15名の男性アスリート(週当たりのトレーニング時間:8.5-12時間、ストレングストレーニングの経験年数:平均4.3年)を対象
対象者はランダムに下記の2つのトレーニングセッションを実施
・Leading to failure(LF):オールアウトまで実施
・Not leading to failure(NFL):オールアウトまで実施しない

トレーニング内容は下記のとおり
トレーニング種目:ベンチプレスとスミスマシンハーフスクワット
トレーニングの負荷:
LFは各種目4セット×10回@75%1RM(各セットオールアウトまで実施)
NFLは各種目5セット×8回@75%1RM(各セット2回の余力を残して実施)
休息時間:90秒(セット間)

測定項目
推定1RM(ベンチプレス・スミスマシンハーフスクワット):各トレーニングの前と24時間後に最大下の挙上重量と速度との関係から推定1RMを算出
睡眠:アンケートおよびアクチグラフによってトレーニング当日の睡眠時間や睡眠の質を評価
心拍変動:睡眠中の自律神経機能を評価

結果
推定1RM:LFのみ低下(ベンチプレス:平均-7kg、スミスマシンハーフスクワット:平均-20kg)、群間での有意差あり
睡眠:主観およびアクチグラフによって評価された両指標ともに群間差なし
心拍変動:群間差なし

解説

この論文は、日頃からレジスタンストレーニングに取り組んでいる男性アスリートを対象として1回のトレーニングセッション後の睡眠、最大筋力を評価しています。
その結果、オールアウトまで実施したトレーニングでは翌日の最大筋力を著しく低下させた一方、各セット2回の余力を持って終えたトレーニングでは翌日の最大筋力は維持されていました。
一方、睡眠に関するパラメーターや自律神経機能を表す心拍変動といった回復に関する指標には差が認められませんでした(ただし、各トレーニング前の測定をしていないため、トレーニング前と比べて変化したのかは不明)。
したがって、限界まで実施するレジスタンストレーニングは、少なくとも24時間後まで神経筋疲労を引き起こすが、それは睡眠の質や自律神経機能からみた回復以外の要因が関係している、といえます。

LFで翌日の最大筋力が低下していた原因については、一般的にTraining to failure法では筋損傷に関する血液マーカーの変化が著しいため、翌日の筋損傷の回復度合いが結果に影響した可能性が考えられます。

なお、この論文では動員される筋群や筋肉数が多くなるベンチプレスとスミスマシンハーフスクワットを対象としています。
したがって、同じTraining to failure法でもアームカールのような比較的小さな筋群が動員される種目の場合、Not training to failure法との間で差が生まれるかはわかりません。

まとめ

コンパウンド種目(複合種目)をオールアウトまで実施すると翌日の最大筋力が低下する