スクワット、ルーマニアンデットリフト、ヒップスラストの下肢筋活動

はじめに

バーベルを用いたスクワット(SQ)、ルーマニアンデットリフト(RDL)、ヒップスラスト(HT)は、下半身の筋力強化、筋肥大にオススメです。
また、これらの種目は多くのスポーツ動作で必要不可欠な股関節を伸展する動きで含まれるため、スポーツパフォーマンスへのトレーニング効果の転移も起きやすいと言われています。
加えてSQは膝関節を伸展する動きも含まれます。

今回は最大挙上重量(1RM)と60kgの重量を用いて三種目を実施した場合の外側広筋、大腿二頭筋、大殿筋の筋活動を比較した論文を紹介します。

論文概要

出典

Delgado, J., Drinkwater, E. J., Banyard, H. G., Haff, G. G., & Nosaka, K. (2019). Comparison Between Back Squat, Romanian Deadlift, and Barbell Hip Thrust for Leg and Hip Muscle Activities During Hip Extension. Journal of strength and conditioning research, 33(10), 2595–2601. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003290

方法
パラレルスクワットよりも深いスクワットの1RMが体重の150%以上である筋トレ経験を有する男性8名を対象

事前に計測された各種目の1RMと60kgの重量で実施
各エクササイズの実施方法は下記のとおり
SQ:ハイバーポジションでバーベルを担いだスクワット、しゃがむ深さは股関節が膝よりも低くなるまで実施

RDL:脊柱のニュートラル姿勢を維持した状態で股関節の屈曲角度はバーベルが膝蓋骨の下部にまで実施

HT:上背部を40cmのベンチに載せた状態で股関節が最大に伸展するまで実施

利き脚の外側広筋、大腿二頭筋、大殿筋の筋活動を表面筋電図によって評価
筋活動は最大随意時等尺性収縮時(MVIC)とも比較

結果
・各種目の1RMはSQが144kg、RDLが167kg、HTが164kg(SQ<RDL=HT)

・大殿筋の筋活動
→60kg:SQ<RDL<HT、SQとRDLはMVICより低値
→1RM:SQ<HT(RDLとBHTは有意差なし)、SQ、RDL、HTはMVICと有意差なし

・大腿二頭筋の筋活動
→60kg:SQ=RDL=HT=MVIC
→1RM:SQ=RDL=HT、HTはMVICより高値

・外側広筋の筋活動
→60kg:SQ>RDL=HT、RDLとHTはMVICより低値
→1RM:SQ>RDL=HT、SQはMVICより高値、RDLとHTはMVICより低値

解説

この論文は下肢筋群を鍛える代表的な種目であるSQ、RDL、HTについて、各試行を60kgと1RMの重量で実施した場合の筋活動を比較しています。
SQの1RMは他の2種目に比べてやや低かったため、SQの60kg条件は他の2種目に比べるとやや高い相対的強度で実施していることになります。

この論文の結果から下記の3点が言えます。
1) 膝関節と股関節の伸展筋力を同時に鍛えるにはSQ
2) 股関節伸展筋力に特化して鍛えるのにはRDL、HT
3) HTは比較的軽量(60kg)でも股関節伸展筋群が最大レベル(MVIC)まで活性

大殿筋の筋活動は各種目を1RMで実施した場合にMVICと同等であり、どの種目も十分に活性していました。
ただし、SQで大殿筋が十分に活性するためには、この論文のように深くしゃがむ必要があり、ハーフ・クォーターSQの深さでは不十分と言われています。
しかし、脊柱の適切な姿勢を維持しながら高重量のパラレルスクワットをする為には体幹筋群の筋力や協調性、柔軟性、動的バランスなどが求められ、誰もが初めから実施できるわけではありません。
したがって、高重量を用いて十分な可動域でSQを実施することが難しい場合、RDL、HTは大殿筋を鍛える代替手段になります。

HTを高重量で実施した場合、たとえパッドなどを利用してもバーベルの重りのため骨盤周りの不快感が強くなることがあります。
HTの股関節伸展筋群の筋活動をみてみると、大腿二頭筋は1RMで実施した場合にMVICよりも高値でしたが、60kgで実施した場合でもMVICと同等でした。
また60kgで実施した場合の大殿筋の筋活動もMVICと同等でした。
したがって、HTは比較的軽量(40%1RM未満)でも十分に股関節伸展筋群に刺激を与えられるため、高重量では行わず、丁寧に行うことにフォーカスしても良いのかもしれません。

このようにSQ、RDL、HTは異なった特徴を持ちます。
それぞれの特徴を理解しつつ、効果的にトレーニングプログラムに取り入れることが出来れば、より一層スポーツパフォーマンスの向上への転移が期待できます。

まとめ

バーベルスクワット、ルーマニアンデットリフト、ヒップスラストは目的によって使い分けるべき