女性アスリートは高タンパク質食に頼らずに短期間食事制限中の筋肉量が維持できる

はじめに

多くの場合、減量期間中の目標は、除脂肪体重(≒筋肉量)を出来る限り維持しつつ、体脂肪を削ぎ落とすことです

減量期間中の一般的な食事戦略は、タンパク質の摂量あるいは摂取比率を高めるアプローチです。
男性を対象とした研究において、高タンパク質食によって減量期間中の除脂肪体重の減少が防げたことも報告されています。

今回紹介する論文は、エネルギー代謝には性差の影響があることを踏まえ、女性アスリートを対象として、減量期間中に高タンパク質食を摂取することで、身体組成の変化に影響を及ぼすのかを検証しています。

論文概要

出典
Pearson, A. G., Alexander, L., Witard, O. C., Coughlin, T. E., Tipton, K. D., & Walshe, I. H. (2020). A hypoenergetic diet with decreased protein intake does not reduce lean body mass in trained females. European journal of applied physiology, 10.1007/s00421-020-04555-7. Advance online publication. https://doi.org/10.1007/s00421-020-04555-7

方法
対象者は週3回以上のトレーニングを実施しており、体脂肪率が15-30%の範囲にある18-35歳の女性アスリート24名
(実施競技:フットボール、ネットボール、陸上競技など)を対象
最終的な分析対象者は18名

実験のスケジュールは下記のとおり
ベースライン(1週間):普段のエネルギー摂取量を測定
通常食事期間(1週間):ベースライン期間の食事量をもとに、エネルギーバランスの摂れた食事を摂取(PFC比:19%:33%:48%)
食事制限期間(2週間):エネルギー必要量の60%分、すなわち40%の負のエネルギーバランスを摂取

食事制限期間中、対象者をランダムに下記の2群に分類
・高タンパク質食群(High protein: HP):PFC比が35%:15%:50%
・低タンパク質食群(Control: CON):PFC比が15%:35%:50%

ベースラインと食事制限期間前後に身体組成(二重エネルギーX線吸収測定法)、運動パフォーマンス(無酸素性パワー、脚筋力、スプリントタイム、間欠的持久力)を評価

※PFC比は左からタンパク質、脂質、糖質のエネルギー摂取比率を表す

結果
・エネルギー摂取量は両群で通常食事期間に比べて食事制限期間で低下(HP:2173→1302kcal、CON:2114→1347kcal)
・タンパク質の摂取量はHPでは食事制限期間中もほぼ変わらなかったが(1.65g/kg→1.71g/kg)、CONでは45%減少した(1.56g/kg→0.86g/kg)
・両群ともに食事制限期間で体重が約1kg低下したが、除脂肪体重は維持されていた
・運動パフォーマンスについて、時間と群の交互作用はなかった

解説

この論文は、2週間の食事制限期間中のタンパク質の摂取量(率)は、女性アスリートの除脂肪体重と運動パフォーマンスの変化に影響を与えなかったことを示しています。

一般に減量期では普段のタンパク質摂取量を維持あるいは高めることが筋肉量の維持に役立つと言われています。
(推奨されているタンパク質摂取量の具体的な数値は様々ですが、体重1kg当たり2g程度のものが多い)
しかし、この論文の低タンパク質食群は、体重1kg当たり1g未満のタンパク質しか摂取していなかったにも関わらず、除脂肪体重は維持されていました。
この結果をもとに考えると、少なくとも若年・女性・短期間という条件では一般的に言われているタンパク質摂取量を摂らなくても筋肉量は維持できる可能性が高いと言えます。

一方で、この論文では食事制限期間が2週間と短期であった上、体重の減少量も約1kgと少なかったです。
したがって、減量期間が長期に及んだ場合や体重の減少量が著しい場合、タンパク質の摂取量によって身体組成や運動パフォーマンスに差が出る可能性はあります。

まとめ

女性アスリートの短期間の減量ではタンパク質摂取量が少なくても筋肉量は維持できる